四季

その日、渓太郎の付き添いを交代してもらった私は、病院近くにあるスーパーに行くことにした。

 

「渓ちゃん、すぐに帰ってくるからね!」と言って、お財布だけ持って駆け足で駐車場に向かう。

 

久しぶりの運転に、少し緊張しながらハンドルを握ると、まもなくしてスーパーに到着。

 

ゆっくり商品を見る時間もない私は、自動ドアが開くのと同時に「お惣菜コーナー」に向かった・・・その時・・・。

 

 

買い物中のお客さんの視線が、一気に私に集まった。

 

 

(え・・・?どうしたの・・・?)

 

 

あまりに急いでいることで、不審に思われたのかな?と思った私は、今度はゆっくりとお惣菜コーナーを目指してみた。

 

しかし、それでも行く先々でお客さんの視線が自分に集まる。

 

 

 

あまりにも気まずくなり、もう帰ろう・・・と思ったとき、ハッとした!

 

 

 

 

一定の温度を保たれている病室では衣替えの必要もなく、私は年がら年中、Tシャツ姿で過ごしていた。

 

あまりに急いでいた私は、そのまま病院を飛び出した。

 

 

 

しかし、スーパーをあとにしようとした私に目に映ったのは・・・

 

分厚いコートを着た買い物客と、自動ドアの脇に積まれた大量の雪。

 

 

 

(もう、冬になったんだ・・・。)

 

 

 

視線の理由がわかった私はもう一度お惣菜コーナーに向かい、急いで買い物を済ませると、渓太郎の待つ病室に戻った。

 

 

 

 

快適な病室は、暑さも寒さもない代わりに、季節もない。

 

ゆっくりと休むための病室は、忙しさもない代わりに、曜日もない。

 

 

 

 

 

時間の流れと四季の移り変わりを感じるられることが、どれほど豊かなことなのだろう・・・。

 

 

暖かな季節を迎えて、しみじみと思う。

厳しい冬や、うだるような真夏も、欠かすことができない豊かさの一部なのだと・・・。