もう笑う力もなくなり、細い呼吸を続ける渓太郎。

 

心拍を映し出すモニターから「ピピッ」という音だけが流れる病室で、

飲むことも食べることもしないまま、渓太郎に寄り添うことしかできない自分・・・。

 

 

 

あとわずか・・・。

 

渓太郎のためにできることは何か・・・。

 

 

 

そう思ったとき、たった一つだけできることがあると気がつき、渓太郎の耳元でつぶやいた。

 

 

「渓ちゃん。

 

渓ちゃんが天国に行く時は、お母さんも一緒についていくからね。

 

安心しなさい。」・・・と。

 

 

 

するとその瞬間。

 

 

 

お腹に痛みが走ったかと思うと、

「お母さん!死んじゃダメ!!」という声が聞こえた気がした。

 

 慌てて上着をまくりあげると、私のお腹の表面には小さな足のカタチがくっきりと…。

 

ハッとした私は、渓太郎の左手を取り

「渓ちゃんの妹だよ。」と言いながら、大きくなったお腹にその手を当てた。

 


 

そして心の中で

 

(渓ちゃん、ごめん・・・。お母さん・・・ついていけない・・・。)・・・と。

 

 

 

 

それから間もなくして、渓太郎は旅立ち

その5ヶ月後、渓太郎の妹が誕生した。

 

 

 

 

 

手探りで生きていた闇の世界に、光を当ててくれた小さな命。

 

 

 

 

 

3月3日に高校の卒業式を終えたムスメは、

来月、渓太郎とは別のカタチで旅立っていく。

 

 

 

 

私の命の恩人。