近藤理論を突き崩す(胃がん編)②真反対の結論をねつ造 | がん治療の虚実
2014-04-23 18:32:22

近藤理論を突き崩す(胃がん編)②真反対の結論をねつ造

テーマ:近藤誠氏への反論

近藤誠著「抗がん剤は効かない」p170 より引用
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次に胃がんを検討しようと思いますが、じつは、是非紹介すべきデータがない。臨床試験自体は、いくつか実施されているのですが、いずれも被験者の数が少なく、データを解析しても、その信頼性に(人数の点から)問題が残るのです。
とはいえ胃がんは日本人に多いので、読者の関心も高いはずです。そこで、被験者総数が六十一人と、胃がんに関しては最大規模である臨床試験のデータを紹介します。
進行期の胃がんを対象とし、手術はせず、抗がん剤投与群と非投与群に分けて、生存率を比べている。
抗がん剤非投与群の生存曲線と比べると、投与群のそれは一見して奇妙な形です。途中から屈曲し、上方に向かって凸になっているのは、これまで見てきたグラフの中にも見られたパターンです。人為的操作の介在が推認できます。
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古典成績①



氏の著作を調べる限り、手術不能の胃がんに対する抗がん剤否定の根拠は、上記の限られた古い論文に示された、上に凸のグラフがデータ操作のインチキを示していると言うことのみ。

胃がん化学療法の有効性を示した臨床試験は近年にかけて非常に多数あるが、それまで使われてきた抗がん剤治療vs 新規抗がん剤治療の比較試験がほとんどだ。
切除不能・再発胃がんにおいて新規抗がん剤治療で下図のように生存期間中央値だけで比較しても随分と改善しているが、それを全く無視している。

胃がん抗がん剤成績


どんな新規抗がん剤の有効性を証明しても、おおもとの「抗がん剤治療」vs 「無治療」の無作為化比較試験で延命効果を証明していないとその後の臨床試験は無意味だと言う意味なのだろう。


それでは元の論文を実際に読んでみよう。
実はネット上で誰でも読めるのだ。その一部を抜粋してざっと訳してみる。

読むのが面倒な方は以下の青色の文章はとばしてもかまわない


Randomized comparison between chemotherapy plus best supportive care with best supportive care in advanced gastric cancer
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9093725
より抄訳

欧米において1970年代から抗がん剤の効果は20%は認められ、抗がん剤併用療法での第二相試験でより高い奏功率や長期に渡る生存期間延長が認められるようになった。
広く胃がんの化学療法がおこなわれるようになったが、腫瘍関連症状を緩和力の評価のための臨床試験は無い。
1990年代にイリノテカンの比較試験が組まれたが、臨床試験の倫理委員会は抗がん剤非使用群の希望者にも投与するよう要求したため、抗がん剤がQOL改善と生存期間延長にどれほど貢献するか不明だった。
それまで行われた臨床試験では、

・Muradらは臨床試験が進めるにつれて、胃がんに対する化学療法の効果が知られるようになり、その奏功率と生存期間から疑いようもないほどの優越性のため、ランダム化(無作為化: サイコロで患者群を分けること)が中止された。しかし化学療法治療群はその後も登録され合計40人、無治療群10人、化学療法群30人となった。生存期間中央値は無治療群3ヶ月vs 化学療法群9ヶ月。

・Pyrhonenらがおこなったランダム化試験では抗がん剤治療群の明白な良好な効果のため、試験登録が遅れたが(つまり患者が抗がん剤治療を受けたがったため)、生存期間中央値は3ヶ月から12ヶ月まで延長した。

・またScheithauerらの試験では37人登録されたが、生存期間中央値は無治療群4ヶ月 vs 化学療法群7.5ヶ月だった。
他にもいくつかランダム化比較試験がおこなわれたが、いずれも化学療法群で明らかな優位性が判明して試験登録が遅れた。

下図は以前掲載していた参考表
生存期間比較



というような胃がん抗がん剤治療の臨床試験の背景をもとに本論文の著者Glimeliusらは下図のような結果を論文で報告している。


QOLの差


患者は急速に進むがん症状のため、抗がん剤非使用群の患者のうち4人は最初から抗がん剤を使ってくれと要求し、結局抗がん剤非使用群の4割の患者が最終的に抗がん剤を使った。
この試験では化学療法の延命とQOL改善効果は強く示唆されているにもかかわらず、両群の生存期間における有意差は示せてない。(注: これはITT解析と言って、登録段階で化学療法非使用群に割り振られた患者が、後で化学療法を受けても「化学療法非使用群」と見なす取り決めになったいるため。クロスオーバーとも言う)
しかし多変量解析では高い水準を持って有意差が出ている。
・胃がんに対する抗がん剤治療の有効性は実地医療で、すでに患者さん達に知られつつあり、無治療群を設定する無作為化比較試験は登録が難しくなってきた。
また倫理委員会が抗がん剤非使用群にも希望すれば抗がん剤を使うべきと介入するようになった。

古典成績②



ここまで書いたが、理解が難しい方々のために自分なりに簡単に解説する。
近藤誠氏が

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「いずれも被験者の数が少なく、データを解析しても、その信頼性に(人数の点から)問題が残るのです。」
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ともっともらしく言及している臨床試験とは上記のMurad、Pyrhonen、Scheithauerらの論文のことで、実は胃がんの抗がん剤治療は有効で生存期間が延長したと全ての論文が結論づけているのだ。

で、最も登録患者が多いGlimeliusらの論文を紹介しているが、上記の抜粋した訳を読めばいかに氏が歪曲した紹介をしているかがわかるだろう。

つまり元論文で主張しているのは

・胃がんに対する抗がん剤の延命効果は当時すでに広く知られるようになったので、無治療群に割り当てられるかもしれないと恐れた患者の協力を得るのに非常に苦労した。

・抗がん剤を使わなかった患者群ではすぐ症状が悪化して患者が亡くなった。途中で抗がん剤治療を導入した患者は症状緩和と延命が得られたケースがある。

近藤誠氏は延命が得られても抗がん剤の副作用で苦しむとよく言っているが、実際には逆で、登録患者の多くが抗がん剤治療を要求し、受けることでがん症状が緩和して、結果として延命効果が得られたというわけだ。

これらの有名な古典的臨床試験の論文では全部抗がん剤の有効性を強く主張している。それを180度逆の結論に持っていった近藤誠氏の論法にはあきれるばかりだ。

いくら自説に沿わないからと言ってここまで露骨な曲解が許されるだろうか?

たくさん医学論文を読んでいるとは言え、胃がん化学療法の臨床試験は抗がん剤の有効性を示す論文ばかりの状況に困った近藤誠氏は、しょうがないのでひとつの臨床試験だけ採りあげ、「グラフの形が上に凸だから人為的操作が加わっているから信用できない」ということだけで抗がん剤を否定している。(このグラフの形の正当性は後日解説する)

百歩譲って、たしかに否定的な結果となった治療法は発表されにくいという出版バイアス(偏り)があり得る。
しかし近藤誠氏はそういった材料も探し出せず、一般人はどうせ元論文など読まないのだろうと、たかをくくって読者に嘘をつき、論文の原著者の主張とは真反対の結論をねつ造しているわけだ。

一般人にはベストセラー本を出せるのに、がん治療の専門家や学会が全く相手しない理由がおわかりだろう。
ここまで厚顔無恥の主張を臆面もなくやっているのは、これはもう医師としての良心が無いに等しい。
自分の理論を押し通すためには、平気で嘘をつく人物のおかげでどれだけ多くの患者さんが被害を被っただろう。
結局「延命効果は証明されていない」と言う主張は作話だったのだ。

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