選択的夫婦別姓を導入したい方、反対したい方、それぞれの心情は理解できるのです。全く理解できないのは「同姓は日本古来の伝統!」「二千六百年を超える日本の家族のかたちが壊れる!」とかいう妄想を垂れ流す人たちで、もはやつける薬がなさそうです。
歴史的事実として申し上げますが、明治31年の明治民法施行まで、日本は基本的に夫婦別姓でした! これは「親の支配権が強い」ということでもあるので、もちろん当時の時代状況としては別姓が進歩的でありリベラルだったとかいうことではありません。
逆に「同姓」は西欧風であって、ゆえに国民的にも流行していくことになり、明治も後半に至って制度化された、というのが実状ではなかったかと捉えています。
だから「明治後半から120年にわたる日本の伝統だ!」というなら理解もしますが、「日本古来の伝統」というのはとことんデタラメです。私の先祖でいうと、明治生まれの曾祖父がぎりぎり同姓世代で、江戸時代生まれの高祖父(祖父の祖父)は「別姓世代」だったことになります。
法務省のウェブサイトにも載っていますが、明治政府は明治9年、太政官指令で「夫婦別姓」を正式に定めます。江戸時代、庶民は姓を名乗らないし、寺が管理していた人別帳は書式が統一されていないので、まあ、適当にやれていたわけです。
しかし、明治になって庶民も姓を名乗ることとされ、明治5年には近代的な戸籍制度(壬申戸籍)も始まり、記述を統一することが求められるようになりました。かつ、当時の伝統としては別姓でした。そこで、太政官が下したのは次のような判断です。
「婦女人ニ嫁スルモ仍ホ所生ノ氏ヲ用ユヘキ事」
「但夫ノ家ヲ相続シタル上ハ夫家ノ氏ヲ称スヘキ事」
つまり、女性は嫁いでも実家の姓を名乗りなさい。ただし、夫の家を相続したら夫の姓を名乗りなさい。というわけです。
ここで夫の家を相続した場合の話が出ているのは、婿養子と基準を統一するためです。婿養子の場合、夫が妻側の姓を名乗るわけですから、妻が夫の家を相続した場合も妻は夫の姓になる、という理屈ですね。
現代の一般的な感覚とは違いますが、とりわけ近代以前には(制度的には現代も)、家族制度というのは財産をどうするかということで、血のつながりや惚れた腫れたは二の次です。そして、明治民法以前は「その人が、どこの家の財産と紐付けされているか」で名乗る姓が決まっていたと言うことになります。
いまの日本においては、分割相続が当たり前で、男女間の相続差別もないので、姓に関する考え方も当然変化していきます。私自身としては「国民的に納得感が得られれば、別姓でもいいんじゃないか」と思っています。
納得感が整うまでは、いましばらく時間が必要かもしれません。が、やるなら判例変更といった司法の判断ではなく、民法改正によって行うのが本筋かと思います。
