水道民営化が失敗する本当の理由 | 宮崎タケシのブログ

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水道民営化法案が今国会で成立する見通しとなりました。この法律については、海外において失敗事例が目立ち、再公営化されるケースも出ていることから、野党のみならず多くの専門家からも疑問が呈されてきました。しかし、国会でも感情的なやり取りが目立ち、しっかりとした学術的裏付けのある議論が乏しかったように感じます。(過去記事は宮崎タケシのブログ https://ameblo.jp/miyazaki-takeshi-gunma/ で)

 

私は先日、群馬県で開かれた「第50回食とみどり、水を守る全国集会」で、拓殖大学の関良基教授(八ッ場ダム問題で個人的にもとってもお世話になりました!)の講演を聴き、「なぜ失敗するのか」について経済学の観点からご説明をいただきました。「そういうことか!」と目からうろこが落ちる思いでした。そこで、関教授の受け売りになりますが、なるべく分かりやすく「水道民営化が失敗する理由」について解説してみたいと思います。

 

ちなみに、関教授は、日本を代表する経済学者でノーベル経済学賞候補ともいわれた故・宇沢弘文元東大教授と水に関する共著があります。そのため、関教授のお話しのうち経済学に関する部分は基本的に宇沢先生の考え方に基づくものです。

 

まず、主流派の経済学においては、世の中には「民営化すると良くなる業種と、悪くなる業種がある」と考えられています。民営化に適さない業種の条件は幾つかあり、そのうちのひとつが「自然独占」です。これは「初期投資が大きくて、規模が大きくなるとコストが下がる」業種のことで、規制をしなくても自然に独占状態になってしまいます。水道事業はこれに当てはまります。

 

このような業種では、新規参入に多額の初期投資が必要である上、しかもコスト面で不利な競争を強いられるため、新規参入が困難です。そのため、独占になり、競争原理が働きません。独占企業は最大利潤を目指して料金をつり上げていくことになります。そのため「公営による非効率より、民営化で独占利潤の発生によるデメリットの方が大きい」といわれています。

 

また、「生活必需性が高く、価格弾力性が低い」という問題点もあります。平たく言うと、「生活必需品だから買い控えできないため、値上がりしても売り上げが減りにくい。そのため、とめどなく値上げが続く」ということです。

 

タバコのような嗜好品や、娯楽のための物品・サービスなら「高いからやめよう」「減らそう」となりますが、水はそうはいきません。多少は減らせても、水を飲まない、手を洗わない、風呂に入らない、洗濯しない…というわけにはいかないからです。高い水を買い続けるしかありません。公的な規制を行わなければ、どんどん値上がりしてしまうのです。

 

整理しましょう。一般的な物品やサービスでは競争原理が働くため、民営化による効率化やコスト削減、サービス向上が期待できます。しかし、独占の場合、競争原理は働かず、仮に効率化やコスト削減があっても値下げやサービス向上による利用者への還元がされず、価格は上昇していきます。

 

次に、自然独占であっても、嗜好品などは価格が上がると買い控えが発生して販売量が減っていくので、値上げにも一定の抑制がかかります。しかし、水は生活必需性が高いので、値段が上がっても販売量はなかなか減りません。つまり、とめどない値上げの連続になりかねない、というわけです。

 

実際、ロンドンでは民営化の結果、一般物価が1・3倍になった時点で水道料金は2倍に跳ね上がっています。その後、ブレア政権の介入で一旦値下げされたものの再び上昇が始まり、一般物価が2倍になったとき水道料金は3倍になってしまいました。さまざまなチェック制度が設けられていたのですが、それでも値上げは止まらなかったのです。

 

水道民営化を解禁するのは「水道利用者が減って水道事業の経営が苦しくなる中で、老朽管など設備の更新を行うには、効率化が必要だ」という考え方によるそうです。これに対し、関教授は「国交省は将来も水需要はどんどん伸びると主張してダム建設を続けているのに、厚労省は水需要が減るから民営化が必要だと言う。一体、どちらが本当なのか」と苦言を呈していました。

 

水道民営化法は成立しましたが、民営化するかどうかは各自治体の判断です。民営による効率化がはかられたとしても、水道事業は固定費が大半を占める装置産業ですから、その効果は限定的です。一方で、民営化によって私企業が事業を独占することになれば、相当のデメリットも危惧されるのも事実です。

 

それぞれの自治体の皆さんには、あわてて「流行り物」に飛びつくことなく、慎重にメリット・デメリットを見極められることを期待したいと思います。

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