本の紹介:『風邪の効用』

野口 晴哉 著

ちくま文庫 2003年2月10日第1刷発行(原本は1962年)

…風邪をひかないのは本当に良いことなのか?



風邪の効用_野口晴哉

 

   15年くらい前、初めてこの本を読んだとき、軽いショックを受けたのを覚えています。ウソなんだか本当なんだかわからない気前の良い言い切りは、よくある健康本や新興宗教の教祖の言い草にも聞こえます。にもかかわらず、彼が「からだ」を表現する言葉は、彼自身の五感を使ってつかんできたのではと思わせる厚みがあります。(そうでない類の本は、大抵、どこかで聞いたような言葉で、どこかで聞いた風な文章を書いていて、私を一般論の森へ誘い出します。そして、その見覚えのある情報の渦の中で私を不安にさせるのです。)

 

この本で、著者は、大胆にも、

 

「風邪をひくのは良いことだ」

 

―と主張します。私達小心者からするととんでもない言い草です。野口晴哉は、安全無事を願う私達の期待に全く応えようとしないのです。

 

引用します。

  「最近の病気に対する考え方は、病気の怖いことだけ考えて、病気でありさえすれば何でも治してしまわなければならない、しかも早く治してしまわなければならないと考えられ、人間が生きていく上での体全体の動き、或は体の自然というものを無視している。仕事のために早く治す、何々をするための急いで下痢を止めるというようなことばかりやっているので、体の自然のバランスがだんだん失われ、風邪をスムーズに経過し難い人が多くなってきました。」p40

  「遮二無二力づくで正そうと気張りすぎると、そのことで体を乱す。早く良くしたい気持ちは判るが、人間の体の動きは壊す時は一気にできるが、活かすとか、正すとかということは順々に、徐々に変わっていくのであって、稲の伸びが遅いからとて手で引っ張っても伸びない。ウッカリ力を入れれば根こそぎになってしまう。~中略~生命の時間は、いくら気をもんでも、犬なら二年で成犬になるが、人間は二歳では成人しない。」p146

 

  野口晴哉は自らの整体という技術(思想)は、交通整理の方法であると考えています。痛む場所を切りはなして、痛みがなくなったというようなよく切れる刀を目指しているのではありません。

 

「体の持っている力をスムーズに流れるようにする、流す時機、止める時機を作って進めてゆく」。p149

―という方法だと考えているのです。

 

  この考えに照らしながら考えていくと、

 

【風邪を引いて症状がでることは、

日々の生活で蓄積した体の歪を

解消していく過程または好機】

 

―という彼の考えが導き出されてきます。

だから彼は、症状(発熱、ノド痛み等々)自体を無くすことを目的としません。症状がスムーズ進行して(・・・寒気がして熱が出て食欲がなくなって、ひたすら眠って、汗が出て・・・・)いくのを良しとしました。そして、体の歪・生活の歪が解消されていくことこそが本来の風邪の到達点だと考えたのです。それが、「風邪をひくのは良いことだ」という彼の主張の内実にあたることになります。

 

  こういった考えに触れて、私は生活の中からあらわれる必要や常識というものを再考させれました。

 

目先の必要ばっかり追いかけて

本当の必要が置いてきぼりなのではないか?

 

―と。

 

  それから10ウン年たった現在の私は、野口の与えた答えに素直をうなずくことは出来ません。言っていること自体は今でも鋭いことをついているし現代にもキチンと通用する話なのだとは思うのです。けれども、ここまでラディカルに割り切ることができないのです。

 

「本当の必要」は、とても大切だと思います。

けれども一方で、

 

そんなに「本当」である必要があるのだろうか?

 

-とも現在の私は考えています。こういう風に展開し直してもかまいません。

 

「本当の必要」は、

生活の中から「目先の必要」を通じて

現れてくるのではないか

 

―と言う風に。

つまり、ここで歯切れがわるくなってしまうのです。

 

私達は

 

目先の安楽に弱く

現在の苦痛に耐えられません

 

明日のことより、

今日のことです。

 

とにかく倒れ込んでしまわないように目の前のことをこなしていくのがいっぱいいっぱいのこともとても多くあります。

 

 でも、目先のやりくりばっかりしているといつか破綻がきます。

目先のやりくりに疲れて、いつかくる破綻が予感された時に、

やっと、「本当の必要」がせりだしてくるのではと感じているのです。

 

 この本には、風邪予防対策シリーズは強く影響を受けています。そもそも、風邪予防対策をまとまったものとしてブログで書こうと思ったもこの本の影響だと思います。


 

【風邪をよく感じることが、

「からだ」の声を聴くことにつながる】

 

―と教えられたからです。けれども、「風邪をひくのは良いことだ」とまでは私は断言できてません。風邪のリスクや技術的なことだけが気になるのではありません。私達は弱くて、【風邪を恐れる心】も、ある種の本当だと思うからです。

 

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