コラーゲンで肌が潤う? | 美容外科開業医の独り言

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この題名で4年半ほど前にブログを書いたことがあります。しかし新しい研究が進んでおり、当時とは理論が異なってきましたので、また改めて書こうと思います。
最近仕事上、ちょっとコラーゲンや老化のメカニズムを勉強している途中なために書いているだけで、決して健康食品の宣伝ではないので、ご了承ください。

やっぱりコラーゲンは飲んでもそのまま肌に移行することはありません。ここが最も重要です。騙されてはいけません。

いまだにコラーゲンを飲むと肌に取り込まれてコラーゲンが増えると思っている人が多くいます。
食べたコラーゲンがそのまま肌に入っているのではありません。
コラーゲンは巨大な分子のタンパク質です。吸収の際にはコラ-ゲンより分子の小さいペプチドやその基本構成物質のアミノ酸に分解されてしまいます。コラーゲンとして取り込まれることはないと言われています。
この1~2年で分かってきたこととしては、このコラーゲンに特徴的に含まれるある種のペプチド(プロリルハイドロキシプロリン)が細胞を活性化しコラーゲン合成を促すということが挙げられます。
つまり分解吸収されたコラーゲンが再度肌でコラーゲンに合成されるのではなく、ましてやコラーゲンが直接肌に届くのでもなく、コラーゲンを作る細胞に刺激を与えるのです。
これは、このペプチドが増えるとある種のシグナルを細胞に与え、コラーゲン合成を促すのではないかとされています。
以前のブログではアミノ酸が再合成されてコラーゲンを作るのではないかと推論していましたが、今は再合成ではなく刺激でコラーゲンを作るという学説が有力です。

コラーゲンは代謝の遅い物質(10数年も代謝されない!)ですので、分解再合成が促進すれば最近流行りの肌の糖化で生じた老化コラーゲンを若いコラーゲンに変えることも可能かもしれません。

そして、肌のことばかりが取り上げられますが、血管・軟骨や様々な臓器にも良い影響があり得るため、これらの研究は非常に盛んになっているようです。
当然製造メーカーも理論的裏付けに一生懸命でしょうし、従来医学的に否定意見が多かったので、これを証明する必要があったでしょう。しかし、このあたりは商業的な裏がないのか、どれくらいの合成刺激が実際には生じているのか(現実に分かるほどコラーゲンが増えるのか)など、疑問は残りますが、この手の研究はこれからも進んでいくことでしょう。

さて、じゃあコラーゲンを食べると翌日すぐに肌が潤い、数日で効果がなくなるのはなぜでしょう?
ペプチドの作用で翌日からすぐに肌のコラーゲンが増えたとしても、一度増えたものはそうそうすぐには消えません。
コラーゲンペプチドの生理活性は多様なので、何かが効果を出しているのかもしれません。
また吸収されたアミノ酸が肌の天然保湿因子として作用しているのかもしれません(アミノ酸の種類が違うような気もしますが)。
個人的印象では、食品系ではコラーゲン以外の物質も潤い成分として摂取され肌に移行しやすいのですぐに変化が出て、サプリ系では純粋なコラーゲン成分ゆえに数日かけて効果が出始めるのかなと思います。