もう40年以上も前のこと。

  当時、非常勤講師として、高校に勤めていた。

  非常勤だと自分の授業だけすませれば、帰宅できる。

  小1,小4の息子達が学校から帰ってくる時間に間に合うよう

  授業をいれてもらっていた。

 

  まだ生徒数が多い頃で、ひとクラス45人で、各学年10クラスあり

  全体数が千人を越えていた。

  もちろん教員数も多かったが、その中にひどく変わり者の

  Aと言う教師がいた。

 

  確かお寺のお坊さんで、50歳くらいだったかなぁ。

  丸坊主のその先生が笑った顔をみたことはなかった。(私にだけ??)

 

  バレンタインの日、女生徒がそれぞれの教師にチョコを持ってくる。

 

  A先生の所にも、数人の女生徒がやってきて

  「先生、どうぞ」とチョコを差し出すと

  A先生は、苦虫を嚙み潰したような顔で

  「いらん!いらん!わしゃいらん!」

  それでも生徒は「せっかく作ってきたんですよ。食べてください、」と

  手渡そうとするが、「いらん!持って帰れ!」

 

  その光景に私は口をあんぐり。

  生徒たちはすごすごと職員室から退散。

 

  なんで、生徒の善意(?)に対してあんな冷たい態度が取れるんやと

  心の中で思いつつも、A先生の奥さんってどんな人かなぁという

  疑問が私の頭の中をぐるぐる。

  

  ’’テレ’’とは違うらしい。バレンタインデーなるものが日本に流行っているのが

  気に食わないのか。そうに違いない。

  むすっとしたその先生の顔を横目でみながら

  笑いがこみあげてきたものだ。

 

  教師だった亭主も、その日は両手いっぱいのチョコをもらって

  帰ってきた。その恩恵にあずかるのがもっぱら私だったんです♪

 

 

  亭主がもてたわけではない。全部義理チョコでしたからね。