私が昨年まで勤めていた市内のK農園で一緒に仕事をしていたTさんが、独立して市内北部で農業を始めました。Tさんは私より何十歳も若い女性です。日本農業は担い手不足と言われて久しいですが、彼女の様に若い人が新規就農するのは頼もしいことです。

Tさんの農園では稲作のほか、根菜類やマコモダケを栽培しています。

私はマコモダケの圃場を見たことが無かったので、彼女に案内してもらいました。マコモダケは水を張った水田のようなところで栽培しています。今年植えた株は水田の水不足で生育が悪かったので、昨年の株を収穫しました。

 

 

マコモダケはイネ科のマコモに糸状菌(黒穂病菌)が感染して茎が肥大したものです。私は河川に生えている野生のマコモに黒穂病菌が感染したものと思っていたのですが、ネットで調べると海外で食用のマコモとして品種改良されたものが導入されているそうです。Tさんによるとマコモは多年草なので何年も栽培していると、肥大しないマコモになってしまうそうです。それでマコモダケになるマコモを雌株、マコモダケを作れなくなったマコモを雄株と呼んでいます。私は「雌」株から「雄」株になるメカニズムに興味があります。

例えば、飼料用トウモロコシでは、黒穂病に感染すると、茎に不気味な形の大きなコブが発生して、その中に真っ黒な胞子が充満し、コブが破れると周囲に飛散します。厄介な病害です。しかし、これに対し抵抗性品種の開発がすすめられています。ということは元々植物には本病に対する抵抗性が少なからず存在し、それを育種技術で強化していると考えられます。マコモでも何年も栽培すると、マコモの方が黒穂病菌に打ち勝ったのかもしれません。

 

 

マコモダケの圃場では水稲の様に除草剤を使わないので雑草が茂っていますが、鎌で切り取ります。

 

収穫したマコモダケです。マコモダケの食感についてはいろんな表現があります。タケノコに似ているという人もいますが、私は太いアスパラガスの皮を取って白い部分だけにしたものに似ているように思います。家ではもっぱら天ぷらにして食べます。斜め切りや拍子木切りにして衣をつけて揚げますが、周囲の皮が固いので、先に剥いだ方が良いと思います。溶かした天ぷら粉に軽く塩を振って味付けするだけです。もっとも私ではなくて妻が調理するのですが。