みやのすけの映画倉庫/『ゴジラVSコング』への道 -2ページ目


1962年8月12日公開

東宝
監督:本多猪四郎
特技監督:円谷英二
出演:高島忠夫、藤木悠

提供番組「世界驚異シリーズ」の低視聴率に悩むパシフィック製薬宣伝部長多湖(有島一郎)は、南洋ファロ島の伝説の魔神の噂を耳にする。
部長の命を受けて島に赴いた桜井(高島忠夫)と古田(藤木悠)の眼前に現れたのはキングコングだった!
その頃、北極海で光る氷山の中からゴジラが現れる。
キングコングとゴジラは互いの闘争本能に引かれあうように日本に上陸する…。
脚本は関沢新一。

前作から7年、ついにゴジラが復活します。
しかも初のカラー、ワイド画面。
そして東宝がRKOに大金をはたいて用意した対戦相手はアメリカの古豪キングコング。

このイベント的図式が物語とシンクロしているのが本作の大きな特徴で、怪獣から市民を守るはずの自衛隊が企業に仕切られているのは非常に象徴的です。

1954年の「ゴジラ」から8年、焼け跡から復興した日本人は戦争の悲惨な経験を忘れつつあり、作品にはそうした時代の背景が如実に現れています。
ここから怪獣映画は開き直ったように明るく、陽気に変貌しました。

というわけで、本作はコメディ仕立て。
中でもとりわけ人間側の主役ともいうべき多湖部長を演じた有島一郎のコメディ演技は絶品です。
有島一郎は舞台を中心に活躍した喜劇役者ですが、映画では幾つかの例外を除いて抑え目の演技。
しかし、本作では彼の本領ともいうべきアチャラカ演技が全面に展開されているのが一つの見所です。
これを見ると、喜劇の演技はテクニックなのだということがよくわかりますね。
本多演出も軽快なテンポで、バーバルなギャグの多い関沢新一の脚本をうまく活かしています。

こうした作風に呼応して特撮はリアルさよりもパノラミックで見世物的な画作りに徹しており、人々は二大怪獣の足下で右往左往するものの、死者や負傷者が出るという描写はありません。
また、二大怪獣の描写もコミカルで戯画的。
特にコングはオリジナル版とデザインや性質が大きく異なり、愛嬌があって親しみやすいキャラクターとなっています。
いきおい、二頭の戦いはプロレスっぽく、ゴジラが当時の人気レスラー豊登のモノマネをしたりするのもオールドファンには嬉しいのではないでしょうか。

結局二大怪獣スターの戦いは仲良く海へドボンで両者リングアウト。

おおらかで明朗な作風の大型娯楽作品。

楽しいです!