演劇/「木の上の軍隊」 | みやのすけの映画倉庫/『ゴジラVSコング』への道

2013/4/25Bunkamuraシアターコクーンにて
原案:井上ひさし
作:蓬莱竜太
演出:栗山民也
出演:藤原竜也、山西惇、片平なぎさ

1945年沖縄。米軍上陸の中、敗走する日本兵二人は巨大なガジュマルの樹の上に逃げのびる。
その日から二人の奇妙な樹上生活が始まるが…。

一人は現地の志願兵(藤原竜也)、そしてもう一人は「内地」から来たその上官(山西惇)。
二人はいつか来るはずの「援軍」をひたすら待ち続ける。
これはベケットの「ゴドーを待ちながら」を思わせる。
そして、「ゴドー~」がヴォードビルを意識しているのと同様、この作品もヴォードビル的。
二人の奇妙な共同生活は時に兵隊コントのようだ。
「ゴドー~」で行われる帽子の交換の代わりに、二人は各々が寵愛(?)しているヌードピンナップを交換する(笑)。

昼間は樹上からアメリカ軍陣地を覗き、夜になると味方の死骸から食糧を漁る二人だったがやがてそれも尽き果て、餓えに苦しむ。
黒い哄笑で描かれる、食糧をめぐる極限状態の二人のやりとりは鬼気迫るものがある。

そしてある夜、米軍陣地から流れてくる「ムーンライト・セレナーデ」
月あかりの下で茫然とそれを聴く二人。
幻想的ともいえるこの場面の素晴らしさビックリマーク

この日から、米軍の残飯が増えてくる。
二人は残飯を漁り、日増しに大きくなる米軍の陣地(それは次第に「基地」としか言いようのない規模に膨れ上がっていく)を眺めている。
すっかりこの怠惰な「日常」に慣れきった上官は戦意を失い、米軍の残飯で肥え太っていく。

藤原竜也と山西惇の息がピタリと合い、仕掛けられた数々のギャグが弾ける。
観客は笑いつつも、次第にグロテスクに変貌していく二人の関係性を眺めることになるが、それは同時に沖縄と本土の関係性を表していることに気づかざるをえない。
それと、アメリカによって肥え太る上官が、戦後日本人の姿そのものであるという事実にも…。

片平なぎさは沖縄の巫女の衣装でナレーター、黒子、そして時には上官の昔語りに登場する「妻」を演じる。
風格があり、堂々とした雰囲気が舞台を引き締めており、これは収穫だった。

観客席を圧する巨大で奇怪な怪獣のようなガジュマルの樹。
松井るみの舞台美術が強く印象に残る。