演劇/「日の浦姫物語」(2012) | みやのすけの映画倉庫/『ゴジラVSコング』への道
11/28Bunkamuraシアターコクーンにて
作:井上ひさし
演出:蜷川幸雄
出演:大竹しのぶ、藤原竜也、辻萬長、立石涼子、木場勝巳

平安時代、一条帝の時代。
奥州米田庄にを束ねる藤原成親のもとに生まれた美しい双子の兄妹、稲若(藤原竜也)と日の浦(大竹しのぶ)。
仲睦まじく育った二人だが、15歳の時禁忌を犯し、日の浦はたった一度の過ちで身ごもってしまう。
愛し合う二人の兄妹は引き離され、生まれた子供は舟に乗せられ海に流される。
それから15年後、父を継ぎ、女ながら米田庄を束ねる日の浦の前に、魚名と名乗る美少年(藤原竜也、二役)が現れる…。

物語は説教聖(木場勝巳)の説教節に乗って展開するが、木場勝巳はこれ以外本編にも役を替えて登場し、ほぼ出ずっぱり八面六臂の活躍ぶり。
彼の巧みな舵取りによって、この破天荒な舞台は成り立っている。

で、どう破天荒かというと、全14段の殆どがコント形式なのであるビックリマーク
井上ひさしが劇作家になる以前、てんぷくトリオのコントを大量に書いていたのはよく知られるところ。
しかしこれは文学座の杉村春子に当てて書かれた戯曲なのだ。

びっくりしたな、もうビックリマーク

重たいテーマではあるが、あたかも説教聖の語る説教節のように、語り口は猥雑で、卑俗で、滑稽。
コントはコントでも、ストリップ小屋のそれを思わせる。
日の浦に「女の一生」(言わずとしれた杉村春子の代表作)のセリフを引用させるという凄いパロディがあったり、若き日の井上ひさしの才気が際立ち、観客は悲劇と喜劇の間を引っ張り廻される。

そして悲劇から喜劇(あえて「ギャグ」と言いたい)へ、軽やかに飛んで見せる大竹しのぶの素晴らしさビックリマーク
実の息子である魚名に抱かれながら「私は今どっち母女」と自問自答し、魚名の動きに合わせて「母~ビックリマーク」「女~ビックリマーク」と喘ぐ可笑しさ、バカバカしさは、近親相姦という重いテーマすら軽く一蹴する。

対する藤原竜也も大竹に負けずに面白い。
母親と関係してしまった罪の重さから、17年間海上の岩で暮らした魚名が、「(その名の通り)魚の名前しか口にできなくなっている」という11段目「魚岩」の徹底したナンセンスは、言葉遊びの面白さも加わり、素晴らしくくだらないにひひ

蜷川幸雄の演出は、井上ひさしの意図をこれ以上なく的確に汲み取っており、実に活き活きとした舞台に仕上がったと思う。

珍しく、そして楽しい舞台でしたニコニコビックリマーク