演劇/大人計画「ふくすけ」(2012) | みやのすけの映画倉庫/『ゴジラVSコング』への道
8/23Bunkamuraシアターコクーンにて
作・演出:松尾スズキ
出演:阿部サダヲ、大竹しのぶ、古田新太、多部未華子、皆川猿時、松尾スズキ

「フクスケ!生まれてこない方がよかったのに!助からないほうがよかったのに!フクスケ!」

薬害で生まれた頭部肥大少年フクスケ(阿部サダヲ)が世界に復讐する!

というわけで、観てまいりました松尾スズキ1991年の傑作。
待望の再演ビックリマーク
しかも今回はこの豪華キャスト。

フクスケの数奇な運命を柱にして、彼をとりまく数多くの登場人物の繰り広げる狂騒的な物語が描かれる。

複雑に行き来する時間と場所が、同じステージで進行する演出だが、複雑な物語は意外にもわかりやすい。

まずはこれが当たり役の阿部サダヲ。
いまやお茶の間の顔となったが、今回は気の毒な被害者に見えて実は狡猾、世の中を陰で操るカリスマ、フクスケをキレキレの演技で熱演ビックリマーク
特に中盤、観客(つまり「普通の人々」)に向かって語る長いセリフ(手元にある戯曲本で2ページ分)は毒々しく叩きつけるようであり、挑発的であり、圧倒される。

一方で、北九州の片田舎でメッキ工場を営んでいたエスダヒデイチ(古田新太)は 、結婚13年目にして失踪した妻マス(大竹しのぶ)を探して歌舞伎町に流れてくる。
古田新太は珍しく抑えた演技だが、好演。
登場人物の中で一見一番まともな善人に見えるが、長年虐げられ蓄積された怒りが静かな狂気となって噴出するラストは素晴らしい。
グロテスクな「最後の晩餐」
そのバックに鳴り響く「歓喜の歌」は劇の序盤から、周到に準備された時限爆弾ともいえ、最後に爆発し、観る者にカタルシスを与える。

ヒデイチの妻探しに協力するホテトル壌に多部未華子。
野田秀樹の「農業少女」でもそうだったが、この人には奇妙な色気がある。
永遠のロリータとでもいいうか。

そしてヒデイチの妻にして実はフクスケの母マスに大竹しのぶビックリマーク
黒い哄笑を巻き起こす狂気の芝居がスゴい。
歌舞伎町の支配者コヅマ三姉妹のブレーンとなり、都知事選に立候補し、「歓喜の歌」をバックに実の子フクスケに犯される。

クライマックスは歌舞伎町を舞台にフクスケを神と崇めるカルト教団福助陰陽研究所とコヅマ姉妹の「戦争」が描かれる。

ちなみにこの戯曲はオウム事件より先に描かれていることを追記しておく。

自分を含めた全ての世界と人間に対して毒を吐き続ける松尾スズキ初期の傑作ですビックリマーク