電車に乗っていると、隣に座っているおばあちゃんが話かけて来た。

『お兄ちゃん学生さんかい?』

いえ、32歳で心の成長は中学校で止まりました。

そう心の中で思っていたが、おばあちゃんの予想とのギャップが大きすぎ、話が盛り上がってしまいそうなのであえて僕は

『あ、はい。』

そう話を合わせた。

するとおばあちゃんが

『やっぱりそうだ、うちにも大学生の孫がいるんだよっ!』

そう声を弾ませて来た。

逆に盛り上がってもうてるやん…

僕はそう思いながら、おばあちゃんの話をずっと聞いていた。

『あの子学校にもろくに行かず、毎日遊び回ってるのよ、どう思う?』

別にどうも思わなかったが、

『みんなそんなんですよ。』

と笑顔で答えた。

『そうかねぇ、お兄ちゃん何か部活入ってるの?』

そう聞かれた僕は、話を聞いてる感じどうせ孫は部活などはやっていないだろうと考え、

『はい。』

と答えた。

『何やってるの?』

遊び回ってる孫は大学生になって以来スポーツなんか一切していないだろう、そう思い

『サッカー部です。』

爽やかに答えてみた。

『えっ!?うちの孫もサッカー部なんだよ。』

してるんかい、また盛り上がってまうやろ、そう思った時にはもう身を乗り出すように、おばあちゃんは体ごと僕の方を向いていた。

『この前何かの代表に選ばれたって言ってたわ!』

ほんで上手いんかい。

『ねぇ、どこの大学!?』

16歳の生娘のような目の輝きで、更におばあちゃんは質問を浴びせてくる。

これ以上話が噛み合ってしまうと、じゃあ今から孫も呼んで3人でロイヤルホストにご飯食べに行こう。

と誘われそうなので、

『すいません、僕この駅なんで!』

と、一度も降りた事のない駅で電車を降りた…。

おばあちゃんは寂しそうな表情を浮かべ、ホームに佇む僕にケータイのカメラを向けていた…。