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(5) 『I.W.G.P.』における山下智久

 

  初っ端から書いてしまうが、山Pこと山下智久は、『I.W.G.P.』出演時にキングこと安藤崇を演じた窪塚洋介の役作りを、まるごと盗んで自身の主演作で使ってしまった、結構ワルい奴である。

 

 

 

  初の窪塚との共演が『I.W.G.P.』…とはいえ、山Pの水野俊司ことシュンの役柄は、長瀬智也のマコトや佐藤隆太のマサ、加藤あいのヒカルとつるんで行動することが多かったにもかかわらず、決して目立つ役柄とは言えず、「いけふくろう」を池袋駅から盗んできたエピソードと、終盤近くに坂口憲二のドーベルマン山井に殺害される最期以外は、パッとしない専門学校生の役…だった。そしてそこまでが、当時の山Pの俳優としての実力で及ぶ限界でもあった。

 

 いかにもジャニーズから、長瀬のバーターとしてねじ込まれた感が漂う、15歳の少年…少なくとも当時の印象としては、そんなところが関の山だったハズだ。

 

 その山Pが、役者として大きく豹変したのは、2005年の日テレのドラマ『野ブタ。をプロデュース』の草野彰を演じてからだ。『I.W.G.P.』から5年…その間、再び窪塚と共演した『ロング・ラブレター〜漂流教室〜』、妻夫木聡らと出演した『ランチの女王』を経て、山Pは何を考えたのであろう。

 

 

 山Pの出演した2019年現在の最新作である『インハンド』で観られる山P…実は彼のセリフというのは、今も変わらずとても聞き取りづらい。

 

 

  『野ブタ。』の草野彰や『アルジャーノンに花束を」(フジテレビ:2015年)の白鳥咲人の様な、単純な単語で構成されているセリフを回すアクトならば、まだそれは目立たないのだが、『コードブルー』の藍沢耕作に代表される「カッコイイ」役柄になると、途端にそのセリフのボソボソ感が露呈される。

 

 この「ボソボソ感」…俳優としてはほぼ致命的で、本来どんなに表情づくりや動きでカバーしようとも、補い切れるモノではない。

 

 それでも辛うじてドラマとして観られる状態を維持出来るのは、ほぼ常に周囲のキャスティングの協力があるからだ。

 

 『コードブルー』(シーズン1)はベテランの柳葉敏郎らが上手く山Pを立てていたし、浅利陽介や戸田恵梨香や新垣結衣といった面々ですら、当初から主人公として担がれていた山Pを補佐していた…まァこれも、『コードブルー』が基本的に、群像劇としての要素が強いから故に可能であったことだと言える。

 

 

 

 しかしこれが、『インハンド』の様な山Pが独壇場を務め、ピンで全体を引っ張るポジションに収まると、最早周囲のカバーも追いつかない。『インハンド』での山Pの紐倉哲は天才科学者という役柄なのだが、原作のストーリーが秀逸なだけに、彼のセリフ回しの悪さは大きく目立つ傷として、どうしても残念な印象を与えてしまう。

 

 濱田岳はもちろんの事、菜々緒のセリフですらハッキリと聞き取れる以上、山Pのターンが来ると視聴者はイライラさせられるのは無理からぬお話である。

 

 かくして『インハンド』の視聴率は大方の期待を下回り平均9.2%…肩透かしな結果を残して放送終了した。

 

 

 2015年の『アルジャーノンに花束を』(TBS)についても触れておこう。

 

 何といっても『アルジャーノン』では、共演者でかつ山Pの白鳥咲人と多く行動を共にする柳川隆一を演じていたのが窪田正孝であった。言うまでもなく俳優としての力量が山Pより遥かに高い窪田の存在が、皮肉にも山Pが周囲の助力無くしては輝けない俳優であることを浮き彫りにする形となった。

 

 

 周知の通り、その後窪田はかつて『コードブルー』を放送していたフジテレビにて『僕たちがやりました』(窪田が水川あさみと結婚するキッカケとなった作品)、そして『ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜』にて主役に抜擢されている。世代交代といって良い事象かと思う。

 

 山Pの『コードブルー』は2018年7月に劇場版と番宣伝を兼ねた特別編が公開されたのが今のところフジテレビでは最後で、そのフジテレビではTBSの『インハンド』と全く同時期に放送された『ラジエーションハウス』が高評価を得て、平均視聴率も12.1%を記録し続編を望む声も少なくない。

 

 ちなみに2019年現在に到るまで、ドラマの主人公に山Pを使い続けていた局は、TBSただひとつのみである。

 

 日テレでは『野ブタ。』以降、連続ドラマでは山Pを主役級に起用しておらず、テレ朝では2007年の新春スペシャルドラマ以来起用自体が無し、NHKのドラマにおける出演歴は皆無となっている。

 

 しかしながら「最後の拠りどころ」とも言うべきTBSでも、『インハンド』の不調(『ラジエーションハウス』との視聴率競争における惨敗)から、今後も主役級としての起用があるかどうかはよくわからない。

 

 

 

 ここでいま一度、時間を巻き戻してみよう。

 

 2000年に15歳で『I.W.G.P.』に出演した山P…彼は元来、役者志向が強かったのだと思う。そんな彼が2002年に再び窪塚洋介らと共演した『ロング・ラブレター〜漂流教室〜』や、竹内結子や堤真一、同年妻夫木聡山田孝之らと出演した『ランチの女王』といった作品に出演する中で…恐らくだが、己の役者としての力量に、コンプレックスを抱いたのだと推測される。演技力や個性の押し出し方についての未熟さ…これが数年後の『野ブタ。』における、『I.W.G.P.』にて窪塚が演じた唯一無二の個性である「キング」(安藤崇)の役作りを、丸パクリすることで現状打破しようとする行動に至らしめたのだと、私は強く確信している。

 

 

 

 この時の演技自体はモノマネであったとはいえ、これも推測の域を出ないが、窪塚を研究することによって、役者として部分的に開眼したのだろう…2006年には『クロサギ』のドラマおよび劇場版、2008年に『コードブルー』を経て、一時は視聴率の取れる俳優と目された。2011年には伊勢谷友介や香川照之と共演した『あしたのジョー』もヒットし、山Pの俳優としてのステータスは見事に高まったかの様に思われた。

 

 しかしながら、現在山Pも34歳…最早美少年キャラの肩書きも使うことが出来ず、『コードブルー』以降の代表作も作り出すことの出来ない山Pは、俳優としてこれから先、どうしていきたいというのだろう。それが見えない。

 

 ここ最近の山Pは、特に海外進出志向を強めているのだと言う。上に述べた閉塞した状況からの脱却を、海外に求めることで役者としての生き残りを賭ける…しかしながらこれも、言っては何だがかつての事務所の先輩である赤西仁をやはりマネしている気がしてしまうのは、穿った見方というモノなのであろうか…?


 かつての山Pの憧れであった窪塚洋介は、事務所の後ろ盾等無しでアメリカにオーディションに出向き、7年間の紆余曲折を経てマーティン・スコセッシ監督の『沈黙』(2016年)にてキチジロー役を掴み取った。これ一作のみとはいえ、窪塚はいまやハリウッド俳優なのである。

 

 

 山Pが窪塚をとことん真似たいのであれば、いっそのこと山Pも己の実力だけを武器に、ハリウッドに挑んでみてはどうであろう。

 

 『I.W.G.P.』の幼い山Pを観る度に、その後の山Pの19年間を重ねてしまう私は、ついついそんな思いに駆られてしまう訳である。

 

 

『池袋ウエストゲートパーク』 2000年4月14日~6月23日 金曜日21:00~21:5(初回放送) TBS
原作:石田衣良 脚本:宮藤官九郎 監督:堤幸彦 プロデューサー:磯山晶
オープニング:Sads「忘却の空」

 
出演:
長瀬智也、窪塚洋介、
渡辺謙、山下智久、佐藤隆太、阿部サダヲ、加藤あい、妻夫木聡、高橋一生、坂口憲二、古田新太、西島千博、須藤公一、矢沢心、小雪、きたろう、森下愛子、小栗旬 他