TBSドラマ 『関ヶ原』

 

 

 

 

 

 

放送日時:
1981年1月2日(金) 21:05~22:55

1981年1月3日(土) 21:05~22:55
1981年1月4日(日) 21:05~23:55

 

<キャスト>

石田三成/加藤剛
徳川家康/森繁久彌
島左近/三船敏郎
本多正信/三國連太郎
福島正則/丹波哲郎
加藤清正/藤岡弘
大谷吉継/高橋幸治
初芽/松坂慶子
直江兼続/細川俊之
北政所/杉村春子
淀の方/三田佳子

阿茶局/京塚昌子

豊臣秀吉/宇野重吉

 

ナレーター/石坂浩二
オープニング/山本直純

その他

 

 原田眞人版に先立つこと36年前…司馬遼太郎の『関ヶ原』は初めてTVドラマとして映像化された。

  その時間...6時間30分。3夜に分割され、それぞれ「夢のまた夢」、「さらば友よ」、「男たちの祭り」、と名付けられた…。

 

 

 どちらかと言えば原作に忠実なのはTBS版の方であり、6.5時間に及び再現された関ケ原の戦いと石田三成/徳川家康の攻防は、それだけで資料的価値もある。また、原田眞人版ではほぼまるで描かれることのなかった本多正信の数々の暗躍は、三國連太郎がまるで深い森林の様に奥底を垣間見せながら演じてみせる。

 

 

 石田三成には加藤剛。大河ドラマ『風と雲と虹と』で平将門を演じた加藤以外に、恐らくはこの当時(1981年)に三成に相応しい俳優はいなかったと言い切って良い。そして徳川家康には、森繁久彌。原田眞人版のただひたすらに陰謀家で、腹の中がドス黒く、野望の為には手段を選ばず、俗物で、どこか年齢の割に余裕に欠けている家康はここにはいない。森繁の作り上げた家康には、家康の家康たる落ち着きがあり、どこまでも三成の上を行く「戦略家」であり、その懐(ふところ)の深さは三國連太郎の本多正信よりも、京塚昌子の阿茶の局よりも更に上手(うわて)である。

 

 

 役所広司家康との決定的違いは、俗物根性を滲ませているかいないか…最大の差異はこれではないか。また、敢えて役所家康は絶対的悪役に徹して岡田准一の三成を際立たせる役割も成しているが、そのせいで二極の対立構造が薄く、あくまで司馬遼の原作通り「東軍の雄」として家康を描いたTBS版と異なる。言うまでもなく三成が主人公であるとはいえ、三成の視点に偏らせたストーリー作りを防いでいるのだ。ここは重要な点だ。

 

 三成の「正義」は、あくまでも理念に過ぎず絶対ではない。原田眞人版の特徴は岡田准一演ずる石田三成の存在を絶対化することで、この「正義(大一大万大吉)」までも絶対化させていることである。 岡田三成があたかもランボーの如く、ボーガンを放って敵を蹴散らすシーンなど、その象徴だ。いま一つ私が岡田三成に感情移入出来ない理由がここにある。

 

 上記の結果、原田眞人版『関ヶ原』は意外に奥行きが無く、加えてTBS版は初芽はもとより北政所(杉村春子)、淀(三田佳子)や大谷吉嗣(高橋幸治)、直江兼続(細川俊之)、さらに加藤清正(藤岡弘)や福島正則(丹波哲郎)といった面々にもそれ相応の時間を費やし描いている。故に、三成と秀吉ゆかりの諸侯との対立の背景がすぐに理解できる。この部分については、どうしても原田版ではおざなりになってしまっているので正直分が悪い。

 

 

 

 大谷吉嗣と三成が友情を結ぶキッカケとなった茶の湯のエピソード…らい病を患っていた大谷が面隠し頭巾より零した体液を嫌い、同列の諸侯が茶碗の回し飲みを躊躇していたのを、三成ただひとりだけが茶の湯を飲み干したエピソード…これも原田版では描かれていない。 このせいで三成と大谷がなぜ友情の固い絆で結ばれているのかわからず、これもまた今一歩の感情移入を妨げている要因となっている。

 

 TBS版『関ヶ原』においては、合戦描写にエキストラ3500人を動員したというが、当時のスケールとしては最大級であり、そのスケールは同時代性も考えると『影武者』と比すべきであろう。ただ、やはり合戦シーンのリアリティと迫力については、CGの力を最大限に見せつけた原田版の圧勝である。こればかりはどうしようも無い。元々TBS版の方は合戦シーンだけは期待の水準を下回っていたので…。

 

 初芽は原作では、三成の動きを探らんとする徳川のスパイ(黒田如水が用意した)として三成に近づくものの、三成の抱くピュアな理念の前に女心を揺さぶられ、徳川を裏切るという行動を取る。対するに原田版での初芽は元々がくノ一であり、豊臣秀次処刑後に三条河原に集められた秀次正妻、大勢の側室と子や家臣らに紛れ込み、ひと暴れしたところを三成に一命を救われる。そして原作同様「大一大万大吉」の理念を貫く三成に心奪われ、以降愛する三成に献身的に尽くす…という流れで、有村架純がスクリーンを飾る。

 

 しかしながら、忍びである有村架純の初芽はその設定上、あまり感情表現が観る側に伝わって来ない(時代モノ初出演にしては殺陣は見事であったが…)。女性としての心の機敏や艶やかさ、演技としての「可愛らしさ」…どれを取ってもTBS版の初芽である松坂慶子には及ばない。

 

 

 

 最終シーン…過去記事既述の通りで原田眞人版では岡田准一三成のカッコ良い…

 

「これぞ我が正義」

 

で〆られ、また初芽は原作をなぞるものの処刑に向かう石田三成に「大一大万大吉」のことばを送るが、出番がここまでで、原作ひいてはTBS版で最も重要な出家と黒田如水との面会(TBS版では本多正信)シーンは見事に省かれた。

 

 総合すると原田眞人版は約2時間半を費やしてもその世界は司馬遼太郎の世界とはならず、換骨奪胎された原田眞人監督の世界に留まった。しかしTBS版は6.5時間という圧倒的長時間で、忠実な原作へのアプローチに挑戦し、後世にTBSドラマの名作として名を残した。

 

 

 

 

 これらの理由から、『関ヶ原』「TBS版」と「原田眞人版」の天下分け目の戦いは、TBS版に軍配を上げたいと思う。 (終)

 

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