こんにちは。満川眼科医院です。
今回のテーマは近視進行抑制研究です。
言いたい事は簡単です。
近視の進行をどれだけ抑えられるかを検討する研究は様々ありますが、その中の点眼を毎日続けることで近視の進行抑制を試みた研究がありますのでその紹介をします。
調節麻痺剤という点眼薬があります。
トロピカミド、サイプレジン、アトロピンといったものが代表的なのですが、主に弱視治療に欠かせない点眼薬です。
このうちのアトロピンを使った近視進行抑制は、現在のところ最も有効と言われています。
このような書き方をすると調節麻痺剤に近視抑制作用があるように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。
近視は眼軸(目の長さ)によって起こることがほとんどなのですが、成長や生活環境、また遺伝子により伸びていく程度が異なるものです。成人の正視(近視も遠視もない状態)の人の眼軸はおおよそ24mmと言われていますが、これより短ければ遠視、長ければ近視になります(他の要素も若干あるので大まかな話です)。
そしてアトロピンの効果の中でも調節麻痺の他の作用に、神経伝達物質アセチルコリンのムスカリン受容体拮抗作用が眼軸長の伸長を抑制する作用がある、という考えらしいのですがまだはっきりしていないようです。
、、、難しい話はさておき、
要するに、このアトロピンを使えば近視の進行が抑えられた海外の研究でいくつもあり、近年では日本でもそれに関する研究が進んでいて話題になっています。
アトロピンの近視進行抑制の研究は1989年の台湾の研究が初めてで、最初は1%濃度のアトロピン点眼にて効果があると発表されました。それから濃度を薄めるといった研究も進みました。
2012年からシンガポールにて大規模な低濃度アトロピンによる研究が発表されました。0.5%、0.1%、0.01%濃度のアトロピンによる近視抑制効果を調べた結果、低濃度でも効果は十分にあると報告されました。
現在はどの程度の副作用が起こるかなどの研究も進んでいるようです。
ここで、アトロピンの副作用をしっかりと説明する必要があります。
以下、☞くすりのしおり より副作用を引用しました。
・ アレルギー性結膜炎
・眼瞼結膜炎
・緑内障、眼圧上昇(眼痛、見えにくい)
・血圧上昇
・動悸
・幻覚
・けいれん
・興奮
・吐き気、嘔吐
・口渇
・便秘
・顔面潮紅(顔が赤くなる)
・頭痛、発熱
眼科でアトロピンを使う時は、小児への処方が主なので赤字の部分を強く説明します。
さて、初期の研究では1%濃度のアトロピンの報告がいくつかありますが、台湾の研究には247人が症例となったのですが、強い副作用のせいでそのうち151人がドロップアウトしました。
、、、やばいですね。
それもそのはずです。弱視治療のための調節麻痺効果を狙って、2~4歳くらいの児童に必要な眼鏡を作るための処方薬として出すアトロピン濃度は0.5%から出すのが多く、それでも効果が足りないと判断した時に1%を使います。対象となった学童は10歳前後ですから、とっくに見え方も安定していて生活もあって、まあ、嫌ですよね。。。
ただし、アトロピンによる初めての研究として、有意な結果を出したことは事実です。寝る前の点眼1つで近視の抑制効果が得られたのです。偉大な功績と言えるのではないでしょうか。
この研究を踏まえて、低濃度のアトロピンの研究もちらほらと見られるようになったわけです。
もちろん上記の副作用は低濃度になればなるほど起こりづらくなります。
また、低濃度でも十分に近視進行抑制の効果があったと分かればやらない手はないわけですが、薬剤を使うのでその効果の個人差があるようで、たとえ低濃度でも少ない副作用の確認もされているようです。
また、近視進行抑制効果はあるわけですが、必ず進行しないわけではなく進みが弱くなる、というものです。生活環境も関係しているでしょうし、同時に眼鏡を装用したりしなかったりもあるので、程度も様々のようです。
この手の研究は、悪化をゼロにすることはできないのが現状ですが、重篤な近視の病気になりにくくするというのはとても大きな意味を持っていると思います。
現在のところは自費診療になり、オルソケラトロジーも同じですが、しっかりと眼科でコントロールできるようであれば十分に試してみる価値はありそうな予防の1つになりそうです。今後の動向に注目していきたいです。
目の検診は、平塚市満川眼科医院へ。
Web予約はホームページよりどうぞ
tel : 0463-21-0460
診療時間
午前 午後
月:9:00〜12:00 15:00〜18:00
火:9:00〜12:00 15:00〜18:00
水:休診
木:9:00〜12:00 15:00〜18:00
金:休診
土:9:00〜12:00 予約診療
日:休診