去年、この本が発売になったとき全国の書店で店員さんによるポップと売り場作りが話題になって、たくさんSNSに写真があがったんですが、そのどれもが…なんか…怖い?ホラー?な感じで、今回読んでみて納得しました。確かにホラー(というのか?基本、読まないので)前半は、でも、後半は光が…見えました。


話題になった表紙です。

短編が6作品で、設定はコロナ禍です。


『違う羽の鳥』

コロナ禍で大学に進学したものの退学。理由は第一志望ではなかったから。親から浪人はさせられないと言われて通学したけど…今は居酒屋の客引き。若いから何とかなる、と思って。何より家に帰るよりはましだ。その夜も同じようにチラシを配ってると視線を感じて振り向くと女性が。彼女はチラシを受け取ると、仕事終わり待ってるからと言って店へ入って行った。

その彼女に連れられて行った店でお互いが関西出身だと分かった。だから、声をかけたのよって。名前を訊くと…中学校の同級生だった。でも、彼女は死んでる。彼女の幽霊が出ると聞いて友人と現場に行ったこともある。でも、そこにいたのは彼女の母親だった。自分の家で何が起きていたのかを彼女は話し始めた。凄まじい…

だから、身代わりになってくれる子を探したの。死にたい子と逃げたい子。そんな…でも、彼女からもらったプリクラに写っていた女の子…なら。でも、どっちがどっちかなんて…わからない。この話、広めてねの言葉と共に記憶は途切れて朝になっていた。起こされて店を出ると、自分の裏垢に彼女からのメッセージが入っていた。


『ロマンス☆』

コロナ禍でデリバリーに夢中になってしまった主婦の話しです。


『燐光』

学校で流行っているおまじないで呼び戻された少女。暫くして自分が死んでしまったんだと悟るけど記憶に紗がかかってしまって中々思い出せない(町では少し前に発見された人骨が水害で行方不明になっていた少女のものと確認されていた)。友達と担任を見つけた彼女がついて行った先は自宅。母親がいる。自分の部屋はピンク一色。徐々に紗のかかっていた記憶がはっきりして来る。母親が怒鳴りながら電話をしてる。私がお金をとったと言ってるけど…2人が帰るというから私もついて出た。そこで見たのは友人と担任の本当の姿。私が行方不明になった日、ある人と会う約束をしていた。その前に会った人に私は川に落とされた。だけど、会う約束だった人が私を沈めた。今、その人は息をしていない…


『特別縁故者』

我が家はコロナ禍で自分が無職になって妻が昼夜を問わず働いて何とか生活できる状態。そこに息子が近所の一人暮らしの老人から(聖徳太子の)一万円札をもらってきた(肩たたきのお礼)箪笥の引き出しにたくさん入っていたという。そんなにあるんなら、とよからぬ考えが浮かんだ。息子の話しで味噌汁が不味いと聞いていたから魔法瓶にだし汁を入れて持って行った(元料理屋勤務)。気に入られたかどうかはわからないが週に何回か言われるままに弁当を買ったりして持って行って二千円もらった。お金は確かに箪笥にいっぱいあったが、それよりも老人が料理の批評をしてくれる事が何より嬉しかった。それが大晦日の夜に妻が倒れたと連絡があり、同時に妻の借金も聞かされて…老人に金を貸してもらえないかと頼んだが追い返された。何とかしないとと思っていたら息子がお爺さんの家が変だという。急いで駆けつけると確かに不穏な気配。警察に連絡したがまどろっこしい。大声を張り上げたところで記憶がなくなった。殴られた。

最初は特別縁故者になりたくて近づいた老人だったが…人生を教えてもらっていた。


『祝福の歌』

コロナ禍で高校生の妊娠が増えたというニュースがありました。この一家は今、その問題に直面しています。産むと言ってきかない娘にてをやいている状態。毎月何回か母親の様子を見に行く息子は(認知症を心配して)、母親から隣りの家が気になると言われるが…それが…異様な様子の隣家の主婦を見かけて以来、悪夢を見るようになってしまう。娘が父親と一緒に祖母宅を訪れて事情を訊いても同じで困惑が重なる。そんな時に娘の相手(同級生)の親からDNA鑑定をしてほしいと言われ、激昂したまま娘に「堕ろせ」と言ってしまう。それを聞いた母親(祖母)は息子の頬をはり、出ていけ!という。この後だった、母親が階段から落ちたのは…

母親の荷物をチェックしていてわかった事があった。隣家の主婦がどうしてあんな姿になったのかも理由がちゃんとあった。産みたくても産めない人がいる…


『さざなみドライブ』

読み始めると、これは集団自殺の話し、と。SNSでしか繋がっていない人たち。それが目的地に着くまで何となく身の上話しになり、それぞれ死にたくなった理由を話し始めました。

一人は妻が反ワクで全財産を失ったから。一人は看護師でいろいろ言われるのが嫌になったから。一人は芸能人。友人の店が危ないと聞いたから飲みに出かけたら、有る事無い事書かれのキャンセルカルチャー。仕事がもう来ないから。もう一人は顔が嫌だから。この子がとても幼い事にみんな気がついていたから問いただすと12歳。それはダメだと言ってもきかない。最後は売れない作家。デスノートのように書いたものが現実になって怖くなったから。このパンデミックも自分のせいだという。全員が話し終えると目的地に着いたが、先客がいたよう。12歳の少女の事もあるから今日は止めようと決めたけど…世の中には悪い人は多勢いる。そして、同じくらい助けてくれる人も。


実に見事な一冊でした。怖い部分も確かにあるんですけど。『燐光』では書いていませんが「コロナの補助金の不正受給」が出てきました。指南していた人が海外で逮捕されましたが、学生も多かったし、新聞記者もテレビ局の職員も、公務員もです。大手企業も。治療するはずの病院もです。

そんな世の中で、後半の3作品に明日への希望の光が見えたことはよかった。

まだまだコロナは続きますが。感染症対策は大事です。



被災された皆様が早く落ち着かれますように…

世界が平和でありますように…

コロナの患者さんが⤴️しました。京都では麻疹の患者さんが出てます😷