最初の事件が起きてから

1年が過ぎました。過激なテロリスト集団の背望会は公安によって壊滅されましたが、ただ1人麻希達が「リクルーター」と呼ぶ人物だけが逮捕できませんでした。その人物の痕跡が掴めたということで麻希と広田達也は奈良へ。


公安が大阪の裏カジノを摘発した際にリクルーターと思われる人物の指紋が入手できたということでしたが、鑑定の結果は「奈良県警五條南警察署地域課に所属する庄原康介巡査」のものと判明。しかし、彼は3週間前に勤務中に滑落事故死してました。それなのに3日前に大阪?…


奈良に着いた2人は県警に挨拶後、庄原巡査の勤務地に向かいますが、途中、立ち寄ったラーメン屋で人気女優の南条リリスが夫の有栖川光監督とこの辺りで映画を撮影していると教えられ、麻希は興味を持ちますが、その監督と途中で遭遇。その様子や訪ねる先の巡査もいた事から南条リリスが失踪したことがわかりました。

気になりながらも2人は本来の目的のために庄原巡査の自宅を訪ね、捜査の為に遺骨を借りれないかと両親に申し入れ承諾してもらいましたが…この地区は土葬と聞き…2人で棺を開けると巡査の遺体の左手首が切断されていました。遺体損壊事件発生として管轄に連絡をと言っている最中に県警から連絡が入り、麻希に直ぐに本部に戻ってきて欲しいと。理由は背望会による誘拐事件が発生したため、でした。


奈良県はちょうど県知事選の真っ最中で候補者は現職の知事と、庄原巡査と同じ海天村出身で長らく村長を勤めていた櫛田信正の2人。知事は精力的に選挙戦を戦っていましたが櫛田は体調不良で姿を見せていませんでした。それが誘拐のためだったとは…

脅迫文は知事の元に届き、身代金を運ぶのは原麻希巡査部長と名指しされていました。差出人の名前は「スワン」…

急いで県警に戻った麻希に「この誘拐事件、背望会の仕業じゃない」と注告したのは「吾川順次郎(奈良県警組織犯罪対策部4課)」。彼は奈良県警の恥部と言われていますが麻希のよき理解者になっていきます。

誘拐事件は奈良県警だけでは対処できず、大阪府警が応援に入り、指揮をとるのは「大阪府警刑事部捜査一課嵯峨美玲警部補」でした。


この後、身代金の受け渡しとなりましたがリクルーターに翻弄されて失敗。麻希は吾川が貸してくれた拳銃も警察手帳も身代金も何もかもが奈良公園の池へと沈み、リクルーターは逃走。

そこへ吾川が南条リリスの死体が海天村で発見されたと麻希を迎えに来ました。


櫛田信正誘拐事件と南条リリスの殺人事件の共通点は「海天村」。南条リリスの死体は通称「坂出コウ"呪われたスワン"の慰霊碑」の前で発見されました。有栖川監督が撮ろうととしていた映画も坂出コウの物語。麻希が吾川から慰霊碑の理由を聞くと、坂出コウは女性で初めての死刑判決を受けた人物で最後に殺したのは、母親でした。



ここから事件は解決へと向かいますが…

南条リリスがキーパーソンでしょうか。彼女が最後に殺したのは夫でした。



今、このシリーズの何冊か先を読んでいますがこの『スワン』は実は今後の展開にとても重要な1冊です。どうしてあのとき?という疑問の答えが次作にありました。続けて読んでる私は謎が解けましたが読んでる最中は、何でこんな事してるの?でした。楽しみにしてください。


麻希は1年前に背望会によって誘拐された娘の菜月が心配でしょうがありませんが娘との関係は空回り。夫とも空回り。菜月と夫はもっともっと空回りでどうにもならない。一緒に誘拐された健太は彼女ができて以前ほど菜月にかまってくれないので家の中がギスギスしてる。捜査中なのに電話でグチを言う娘と夫…

吾川はバツイチで母親も警察官。リリスの件で吾川宅にお世話になっているときに事件解決へのヒントをくれたのは実は母親でした。

大阪府警の美玲もキッツイですが、麻希にかけた言葉には実感がありました。ちゃんとあなたは妻も母親もしてる。


自宅に戻った麻希は菜月の携帯の待ち受け画面を見て思わず叫び声を…菜月が最近仲良くしているという男性、パパと取り替えたいと言った男性は菜月をスワンちゃんと呼ぶという。画面にはあの身代金の受け渡しに使われた奈良公園の鹿が…

No.58…


世界が平和でありますように…

コロナと熱中症に気をつけて…



表紙もポイントです。



〈余談〉

この作品は2011年が初版です。それから10年以上経って奈良県で何が起きたか、皆さんご存知だと思います。

前半で奈良県警の「ゆるさ」がさんざん指摘してありまして…何ともな気持ちになりました。実はコナン君の映画でも指摘されてます。

奈良県は大阪からも近いので場所がわかるので、あそこだわ〜と思いながら読んでました。今もさほど変わらないと思います。

そして、「村」。奈良県は市町村合併(小泉総理のときですね)の際に「村」を選択した自治体があって、その辺りのこともよく書かれてました。

税収が少ないと維持が大変なので奈良県に行った際には「村」で消費するようにしています。「村」も作品のポイントです。


最後に吾川刑事が麻希に「奈良を、嫌いにならんといてな」と言うのが…何とも、でした。

奈良はどうなるんでしょう?