この作品は数々の賞の候補になりました。読むたびに「書くことが上手いなぁ」と思い、今回のテーマが私には1番分かりやすく、460頁を越える長さも少しも気になりませんでした。


少しも我が子を愛さない母親達…


第一章 羽のところ

小瀧結珠、小学校2年生…彼女の1週間は習い事でいっぱい。父親は医者で歳の離れた兄がいる。母親には何も逆らえない。言われたとおり、決められたとおりにする。母親の決めた枠からは1mmもはみ出さない。そんな彼女は毎週水曜日になると母親に連れられてある団地に行く。男の人の所にボランティアに行くという。終わるまで30分、決められた場所で待つ…

校倉果遠、結珠と同い歳…団地で知り合った。長い髪の毛はもつれてしまっている。結珠が三つ編みを教える。二人は毎週水曜日の30分だけの友達。彼女の母親が自然派食品に傾倒しているからか団地には親しい人もいないし、学校でも誰も近寄らない。だから結珠は初めての友達。時計の読み方も教えてもらった。

果遠の隣の部屋のチサさんが飼っているインコが死んでしまったので二人で一緒に公園に埋めようと決めた。そのとき緑の羽をもらったけど、いつもより早く出て来た母親に捨てられてしまい、それっきり団地に行くこともなくなった。あの時、隣の部屋のベランダに行くという彼女に防犯ブザーを渡した(羽はそのお礼)。そして、下で待つ結珠に「光のとこにいてね」と果遠…


第二章 雨のところ

二人の再会は高校の入学式。結珠が通うのはエスカレーター式の女子校。そこに幼い時の記憶を頼りに果遠が外部入学の特待生として入って来ました(教えてくれたのはチサさん。果遠は母親よりもチサさんを頼ってました)。長い髪の毛は短くなっていたけど、容姿の美しさは誰が見てもハッとするものでした。二人はなるべく近寄らないように遠巻きにしながら学校生活を送っていました。それが結珠の予備校の帰りと果遠のバイト帰りの時間が重なって二人は一駅分歩きながら話すのでした。初めて聞く果遠の暮らしぶりや結珠の家庭教師の話し。でも、それも突然に断ち切られました。最後に会ったのは雨の夜、この時も「光のとこにいてね」と果遠…(果遠の母親が原因で殆ど夜逃げ同然でした。最後の一日をチサさんがプレゼントしてくれました)


第三章 光のとこにいてね

あれから14年。二人は29歳に。結珠は小学校の先生に。果遠に時計の読み方を教えたのがキッカケでした。応援してくれたのは夫。高一のときに無理矢理につけられた家庭教師。彼も同じような環境下にいるから結珠が母親を恐れているのがわかってました。夫も医者にはなったものの今はやめて医療用のアプリの開発を仕事に。でも、この事が原因で夫の実家とは疎遠に。結珠は教師として疲れ休職することになり、場所を変えたら?という夫の友人のアドバイスもあって東京を離れ和歌山へ。毎日、海を見ての生活になりました。

この地を勧めてくれた友人に連れて行かれたスナックに果遠が。祖母の代からしているというお店のママとして。そこには昼間偶然あった少女、瀬々が。果遠の娘でした。


あの後、母親の故郷で果遠は暮らし、母親は男とどこかに行ってしまい祖母と二人りに。でも、娘を憎む祖母との暮らしは過酷で果遠は高校を中退。お店をしてるときの祖母は変わらないけど普段は(認知症の症状)…だから、祖母の様子がおかしくなったとき、消防士だった夫に助けを求めたけど…あれから夫はおかしくなってしまった。結婚して瀬々が生まれて、二人を繋ぐのは…


結珠はフリースクール(瀬々が通う)を手伝うようになって、暫くして弟の直が。一年前から不登校になったという彼は何も話さない。瀬々と同じフリースクールに通うように…

果遠の夫も直も心が疲れてるからか、妻と姉の微妙な変化に気づく。二人は知り合い?…


直の苦しみの原因が母親とわかると、果遠と会いに行く。ガンの手術後は東京から離れて暮らしている母親の口から出る言葉は…

その頃、フリースクールでは直と瀬々がいなくなり大騒ぎになっていた。



結珠は母親と決別し、果遠は夫と別れた。

果遠がまた離れようとするから、結珠は追いかける。光のとこにいてね、と言われても追いかける。彼女は強くなった…



第三章は過程をだいぶ省略してしまいました。特に結珠と母親の場面。果遠が住んでいた団地は母親も住んでいて、会っていた男は幼馴染み。そんな事を平然と話す。結珠は世話をしただけで愛情はないと言い、弟には愛情をそそいだと言う。その理由も自分勝手な言い分ばかり。言われっぱなしの結珠を救ったのは果遠…彼女がいたから母親から解放された。直にも決して放り出さない、と強く言えた。 


果遠の夫が壊れたのは果遠のせいではない。あの時、果遠に何を言われても自分の仕事を全うすればよかった。それができなかっただけ。そこから家族と別れ、孤立してしまった。そんな彼を救ったのが娘の瀬々と防犯ブザー。彼は家族の元へ瀬々を連れて帰って行った。



家族と暮らしているのに孤独だった結珠と果遠…大人になって、子どもの頃に感じたお互いが安心できる場所にようやくなれるのかも知れない。





世界が平和でありますように…