この本を読んでいると、娘から「珍しいね、芥川賞の作品を読むなんて」と言われました。確かに。あまり読まないので(積極的には)。今回はいつもメモしている手帳の順番なので読んだわけですが、これは少なからず今の私だわ、でした。というのは「空き家の草刈り」がとっても身近に感じて…


舞台は長崎県の島です。作者の方のインタビューを読むとお母様が島の出身で、幼い頃に帰省して聞いたり、見たりしたことが土台になっていると話されていました。作中には、島言葉が使われているので、どう発音するのかしら?と思いながら読んでました。島の生活は知らないことばかりで興味深く読みました。


母親に連れられて祖母の住む島に「草刈り」に駆り出される奈美。どうして?20年以上も誰も使わない倉庫の周りの草刈りをするのか全くわからない!ほっとけばいいのに!それで、母親にしつこく草刈りの理由を尋ねます!


↑とってもよくわかります。私の実家も兄がなるべく月一で草刈りに帰ってます。そうしないと、庭は草だらけになります。両親がいかに庭や家の周りを綺麗にしていたのかわかります。おまけに田圃もあります。竹藪も(我が家の土地ではないのですけどね)。草が目立ってくると、兄の家の電話がなります。ご近所トラブルにならないように気を使い、今では防犯カメラを付けて草の伸び具合をチェックしてます。私はたまにしか帰らないので草刈りはしませんが、倉庫には草刈機等揃ってます!家の周りも畔道も綺麗にする。朝に夕に草刈り、草取り、これは田舎では誰もがすることですが、住んでいないとわからないし、奈美のように思うのは無理ないことです。


島にお店(何でも屋さんみたいな)をする祖母が一人で住んでいます。奈美は従姉妹とお店の整理をしてから草刈りに行く事にし、母親と伯父、伯母の三人が先に向かいました。


そんな一日の日常と過去に島であった出来事が交互に書かれていきます。きっかけは何気ない誰かの一言から…



読み終わって、文章が非常に上手い作家さんだと思いました。誰もが興味を持つ内容ではないのに飽かずに読ませる事ができるのは筆力がないと無理だと思います。若手の作家さんの突拍子のない設定は最初はいいけどだんだんと飽きてくる。反対にとても地味な設定(一人の平凡な男性の一生みたいな)なのに最後まで読み切って余韻に浸れる。この作品はそんな作品でした。これからのご活躍を期待しています。



奈美のお母さんの美穂さん、とっても草の名前に詳しくて、『らんまん』の万太郎君のようでした。背高泡立草は田舎ではよく見ますね。



世界が平和でありますように…