「嫁入り道具を入れるチェスト」 | Classic to Modern デコラティブアート的造形と家具作家の日記
2017-04-24 21:50:20

「嫁入り道具を入れるチェスト」

テーマ:ブログ

ロンドンのビクトリア&アルバートミュージアムで

鑑賞した家具を紹介します。

 

これは1720年頃に作られたチェストです。

 

大きさは、幅145センチ、奥行67センチ、高さ79センチ。

かなり大きなチェストです。

オークとパインで作られていて、全体に繊細でボリュームのある

彫刻が施されています。

金箔を貼って仕上げられています。

 

デザインやディテールを見てみると、バロック様式の要素が見られます。

 

ネコ脚(カブリオールレッグ)をチェスト本体の一部にしたチェストの

四隅にはライオンの脚先をモチーフにした太くてゴツい彫刻が

彫られています。

ロココ様式はバロック様式の一部と考えられていますが

この後18世紀の中頃、ロココ様式全盛期になると

カブリオールレッグはもっと細身になっていきます。

 

バロック様式では太くて、ゴツくて、とにかくボリュームがあります。

 

脚の上にはネイティヴアメリカンの顔が彫られています。

優雅というよりは、少しおどろおどろしいですね。

このようなグロテスクな要素も、ロココの時代には

あまり使われなくなりました。

天板の金箔は、摩耗してほとんど残っていません。

経年変化の結果を大切に保存する現在の家具修復・保存では、

こんな状態でも、けっして新しい金箔を貼って綺麗な状態には

戻しません。

 

天板のエッジや、その下のセクションには、「ギャドルーニング」と

呼ばれる涙型にも似た彫刻が見られます。

ロココの時代にもよく使われた18世紀の彫刻パターンです。

 

 

 

他にも帆立貝、アカンサスの葉のレリーフ、ハスク(穀物のもみ殻)など、

18世紀にポピュラーだった彫刻モチーフがチェスト全体を隙間なく

豪華に装飾しています。

 

このチェストは、貴族の家に嫁ぐ花嫁の嫁入り道具を入れるために

特注で作られました。

 

作る時に何を優先して作ったかというと、純粋に装飾性の高さや、

存在感、豪華さでした。

 

広い屋敷内で使われる事が前提なので、大きさの制約は無く、

これだけ大ぶりにつくられています。

 

しかしこれだけの大きさがあるのに、収納力はありません。

本体に曲面部分を大きく取り入れたことによって、箱としての収納部分が

小さくなったからです。

収納力より装飾を優先した結果です。

 

また金箔仕上げは美しい半面非常に繊細なので、扱いが難しく日常の

使用にも適していません。

 

おそらく実際にはほとんど使われることは無かったと思います。

眺めて鑑賞する家具ですね。

 

今の時代の家具作りではなかなか作る機会の無いタイプの

家具なのですが、製作者としてはとても作ってみたい家具でした。

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