今日は、前回からの続きである。
引越しの際、うっかり誤ってこの世から消し去ってしまったボリビア盤LPレコードたちへの、ささやかな罪滅ぼしにとして、死んだ子の歳を数える心境で、それぞれについて感想を書き留め、もって手向けとさせて頂きたい。
併せて、現在、今から買い直しができないかと探索を続けているのだが、その途中経過も綴りたい。
1) Quinteto Rhupay "Music of Bolivia"(1969年)
(音盤情報:Quinteto Rhupay – Folk Music Of Bolivia (1969, Translucent green vinyl, Vinyl) - Discogs)
【アルバム概要&レビュー】
最も痛恨の一枚。
いやーーーー、よりによって何でこのアルバムを失くしちゃうのかなあ、自分…。
最愛のグループ「ルパイ/Ruphay, Rupay, Rhupay」のファーストアルバムだよ。フォルクローレ少年だった10代のころに、ある愛好家の方から(当時非常にお世話になりながらご迷惑をお掛けしてしまったことがあり仕方ないのだが)「ルパキチ(ルパイキ●ガイ)」って蔭で揶揄されてたらしい、生粋のルパイ信者・信仰歴40年のルパイ教徒のワイだよ。何で「聖典」を処分しちゃうのさ。うっかりにも程がある。破門だよ。自分に腹が立つというか、己の軽率さが心底嫌になる。
ケチュア・アイマラ族固有の音楽の公での演奏がまだ憚られていたというこの時代、グループ名に「キンテート(5重唱)」と付く通り、表向きはコーラス主体のグループ、という体裁を取り、歌物アルバムのように見せているが、随所にケチュア・アイマラの伝統音楽(アウトクトナ)の要素がちりばめられている。
エリー・コルテス Hery Cortez Gutierrez を始めとするコーラスも良いが、60年代の音盤としては、異常なくらいにサンポーニャの野太く力強い音が自己主張している(A面5曲目、初期の名曲 スマックプニ Zumapuniなど)。
冒頭A1「Acuarela Altiplanica(アルチプラノ水彩画)」では、歌のつなぎにシクリアーダ、タルケアーダ、ピンキジャーダのメドレーが挿入されているが、むしろこれらカンペシーノ(農村部の先住民)たちの祭礼音楽の方がメインにさえ聞こえる。
また、その後他グループのアルバムでも散見されるようになる「Estampa(組曲)」という形式の最も初期の例である点も見逃せない。
以上の意味でも、歴史的な名盤と言える。
【探索途中結果】
まず音自体は、本稿執筆時点で、YOUTUBEにアップロードされており(※)、今では所蔵していなくても、アルバム全体を聴くことはできる(できてしまう)。
次にブツは、上記音盤情報リンク先(欧米諸国の中古レコード業者一括検索サイトDiscologs)のジャケット画像からも察せられるように、本譜は国外発売も意識したようで(盤元はLyraだが、ジャケット裏のライナーノーツは、珍しく英語である)、当時おそらく英語圏でも売られたのではないかと推察される。
そのせいか、希少盤でプレミアが付きはするものの、欧米の中古レコード業者複数社が在庫を持っていた。
よって、比較の上、本体価格+送料が最も安い業者から、即ポチった。
本稿執筆現在、到着待ち。実際に受け取るまで油断禁物だが(業者側から受注後に「在庫ありませんでした~」と連絡が来ることも、ままある)、
――やった~!買い直しの見通しが立った~!!
2) Grupo Aymara "Cultura Andina"(1980年)
(音盤情報:Grupo Aymara – Cultura Andina (1980, Vinyl) - Discogs)
【アルバム概要&レビュー】
これも失くしたのが痛すぎる一枚。
主に70年代から90年代にかけて活動(90年代に確か2回来日公演もしている)し、5年前にもひょっこりかつひっそりと新譜”Cielo Astral”を出した(※)、ボリビアの伝説的なグループの4枚目。
グルーポアイマラは、個人的には2~5枚目が最高で、その絶頂期のアルバムの1つに数えられる。
タイトル「アンデス文明」の通り、民族固有の伝統音楽としてアウトクトナ演奏を多数収録。その中に挟まれたコンフント演奏の名曲「Intiu-Khana」は、その後グルーポアイマラのみならず他グループのアルバムにも収録されるが、本盤が初出。
絶頂期を彩る歌手・ナタニエル・ゴンサレスの歌声が、いい。
【探索途中結果】
まず、音自体、アルバムはCD化されておらず、本稿執筆時点で、YOUTUBEへのアップロードも確認されていない。
同じく現状、Apple Music, Spotify, Amazon Musicでも聴けない(Grupo Aymaraの他のいくつかのアルバムは聴けるが本アルバムは無い)。
次にブツも、滅多に市場に出ない(前出Discogsで一点だけ見つけたので即ポチしたが、後で「在庫ありませんでした~、すんまそーん」と連絡が来て、心底落胆した)
もう一つの大手中古レコード業者一括検索サイトであるCDandLPでも、過去取引実績はあるが、現時点で出物はなかった。
昔私が入手したのは渋谷のチチカカ。少なくとも同店で複数回リピートで仕入れていた(但し各回数枚ずつだったが)ので、所蔵されている愛好家は日本国内にもまだ二桁はいらっしゃるのではなかろうか。
ただ、かなり硬派(標高高め。アウトクトナ成分多め)なアルバムなので、グルーポアイマラ初期5作品の中では、そもそも数が出回っていないのかもしれない。
WANTED!!
3)Chuma Q'hantati "Ayma"(1981年)
(音盤情報:Chuma Q'hantati – Ayma (1981, Vinyl) - Discogs)
【アルバム概要&レビュー】
失くして意外とショックが大きかった一枚。
チチカカ湖畔、チュマ出身のグループ。近隣のイタラケ、チャラサニのシクリアーダ及びチュマのピファノスを得意とする。その1981年メジャーデビューアルバム。
厳密に言えば(いや、私のあやふやな知識では到底正確なことは言えないのだが)、イタラケはタイピアイカ共同体(カセットテープ版主体)、チャラサニのカントゥはコンフント・ニニョコリン(LP。CDも出た)が本場中の本場の演奏だ(と思う)が、チュマカンタティのイタラケの演奏も良かった(Lyraのような国内メジャーレーベルで初めて本格的なイタラケの演奏多数のアルバムだったのではないか)。プトトゥ(エルケのような角笛)が終始入り、どこかシャーマニックな雰囲気を醸し出していた。
表題曲A1「Ayma」は、定型に沿った曲が多いイタラケのシクリアーダの中において特異で、典型的な前奏・終奏が無く、リズムも異なる。形式名「Plegaria(祈り)」は珍しい。何らかの宗教儀礼に関連する特別な曲なのかもしれない。いずれにせよ、メロディが美しく、その後多くのグループが取り上げることになった。
B1「Himno A Itaraque イタラケに捧ぐ」、B4「Sara Mayor」なども、イタラケの定型に乗りつつ、メロディアスでひたすら美しい佳曲。
チュマカンタティは、2枚目までがアウトクトナ濃度100%のアルバムだが、3枚目からコンフント演奏も混ざり始め、4枚目では全曲弦楽器が入るようになってしまった。
メジャーレーベルでアルバムを出し続けるためには、致し方なかったのだろうか(というよりも、2枚目までが当時としては異例だったと思う。よく出したなとw)。
しかし、2006年(頃か?)に結成25周年記念の2枚組CD(自主製作?)を出し、アウトクトナ濃度100%のチュマカンタティが戻ってきた(そうでなくっちゃw)。
【探索途中結果】
まず音自体は、本稿執筆時点で、YOUTUBEにアップロードされており(※)、今では所蔵していなくても、アルバム全体を聴くことはできる(できてしまう)。
次にブツは、Discogsで奇跡的に1点在庫が見つかり、即ポチ、そして昨日無事にブツが届いた。
買い直し成功~!!
――とここまで書いて、またも相当の長文になってきたので、失くした音盤の残りは続きとしたい。■
(当シリーズ次回以降の予定、ってなんだそりゃw)
Chuma Q'hantati vol.2 "Sonko Huakay"
Paja Brava ”Herencia Ⅰ”
Sol del Ande vol.1
Paucartambo: La Mamacha Carmen(米カセット)
Julio Godoy ”La Estrellita”(スイスCD)
Raul Garcia Zarate "Peru -Guitarra"(仏CD)
Bolivia Manta ”Sartanani”(仏CD版)