所持品の返却と説明。 | 届かない手紙〜自死遺族〜

届かない手紙〜自死遺族〜

最愛の夫を失った妻の記録。
二度と戻らない日々…
失った未来…
行き場の無い気持ち…
もう二度と届くことのない夫への想いを綴る。

 

 

警察署について担当の刑事さんが来るのを待った。

 

刑事さんに案内され、個室に移動した。

机と椅子とホワイトボードがあるだけの白い部屋。

 

「まずはお預かりしていた貴重品をお返しします。」

 

そういってひとつずつ机の上に並べられた。

 

家と車のカギ

 

財布

 

所持金

 

各種カード

 

メガネ

 

スマホ

 

 

一つ一つ並べられる度に涙が溢れた。

 

だって、ぜんぶ、ぜんぶ、見覚えのあるものだったから。

 

 

そして夫が見つかってからの説明を聞いた。

 

どこで

 

どんな場所で

 

どういう状況で

 

どんな方法で

 

どうなっていたのか

 

事件性があるかどうか

 

失踪後の足取り

 

所持品の確認

 

防犯カメラ映像

 

遺体の検査

 

 

聞けば聞くほどつらかった。

 

どんな気持ちで…

 

辛かっただろう

 

苦しかっただろう

 

なぜ、どうして

 

 

一通り現段階までの話を聞いた。

 

 

「では、以上になりますのでご遺体の確認を…。」

 

 

そう言われ再び移動し…

 

扉の前に…

 

怖くて入れない。

 

 

足が震える

 

地に足がついている感覚がしない

 

入口に立ち竦み

 

まるでお化け屋敷にでも入るかのような…

 

心拍数が上がる

 

暑いわけでもないのに汗が流れる

 

 

恐る恐る室内を覗き込んだ