令和3年(2021年)5月24日 第419回

今年度中の75才を対象にコロナワクチンの案内が来た、通院しているU内科に電話すると何回も話し中で呆れたが、三日目の夕刻、やっと通じた、7月中旬の順位だという。 それで了承した。 家内はフィリキラーショックの経験が有るから、不安なのでワクチンは打たないという。 納得!

 

全米プロ選手権、日本から星野陸也、金谷拓実、松山英樹が参戦したが、若い二人は予選落ちした。 特に金谷はショートで+9を叩き、today+14という悲惨さであった。 金谷はアマチュアで競技してから、恐らく初めてのワーストスコアだろう、と解説の丸山茂樹が言っていたが、兎に角恐ろしいコースである。 約7,900ヤードのメジャー随一の長さ、池も砂も兎に角多いモンスターコースである。 真夜中の3時・4時からテレビ観戦しているが、松山にはメジャー連勝の期待があるから連日の夜中、気合を入れて観戦するのみである。

 

 

宮部みゆき「昨日がなければ明日もない」(文庫本、単は2018年)

杉村三郎シリーズ第5作目である。 ①誰かsomebody(2003年刊)、②名もなき毒(2006年刊)、③ペテロの葬列(2014年刊)、④希望荘(2016年刊)の4冊の内、①を除く3冊は単行本を購入後、中古店に売却した。 ①は図書館にあるだろうか? でも古過ぎるなァ。 これは、①絶対零度、②華燭、③昨日がなければ明日もない、の三話から成る物語である。

 

(絶対零度)

杉村探偵事務所は杉村三郎が一人で切り盛りしている。 事務所は竹中邸宅の一室に間借りしている。 11月3日(祝)10時過ぎ、記念すべき10人目の依頼人・筥崎(はこざき)静子さんは、50代後半の品のイイご婦人だった。 さいたま市浦和区の一戸建てにご主人と二人住まい、娘は結婚して相模原市に、息子は転勤で4月から北九州市に勤務している、娘・佐々優美(ゆうび)27才の事で相談したい、婿さんは佐々知貴26才、広告代理店勤務、子供はいない。 10月2日(日)の深夜、娘が自宅の風呂場で手首を切って自殺未遂、精神状態が不安定で一ヶ月を過ぎてもメンタルクリニックに入院中、その間、婿さんが会わせてくれません。 電話もメールも駄目で、私には全く判らない状態です。 婿さんが言うには、自殺未遂の原因はお母さんにある、優美があんな事したのはその関係性に問題があるからなので、こちらとしては実家との絶縁も考えている、今はそっとしておいて下さい、優美が泣いてそう訴えている、ママにはもう会いたくない、近寄らせないで欲しいと。 何を尋ねても婿さんはその一点張りです、私には思い当たる事がありません、普通の仲の良い母娘でしたから。 メンタルクリニックにもお伺いしても、ご主人の許可が無ければ面会出来ませんと、門前払いです。 婿さんの会社に行っても社員の誰もが取り次いでくれません、休日に相模原市の自宅も行きましたが、居留守だったのかは知りませんが出て来ません。 婦人は長い告白を終えて目に涙を浮かべている。 杉村は確認した、→クリニックは、アワーハピネス(医療法人清田会グループの最新施設)で恵比寿駅近く、面会させてくれないから、それが医師の判断で面会謝絶なのか、診断の裏付けも判らない、と全てが婿さんからの一方的な言い伝えだけだった。 ネットを確認すると、クリニックは押しなべて好評の書き込みが多い、三つ下の弟・毅さんからのメールも受け付けない、婦人は娘のフェイスブックを日常的に見ていたが、あれ以来、更新が止まっている、毅が知貴君に電話したが、君には関係ない事だから口出ししないでくれ、と随分な言われようだったらしい、夫は東京電力のグループ会社の役員をしていて、単身で原発事故の現地に入っていて休日もなく働いている為、まだ、知らせていない、と言う。 過去に娘と大きな諍いをした事もない、毅は、イキナリ自殺未遂をするほど病的な関係が二人にあったとはとても思えないと断言してくれている、娘からは夫婦仲の悩みも聞いた事がないし、むしろ、ラブラブ過ぎる位だったし、知貴くんの実家は新潟の大きな農家さんで長男さんがアトを継いでいてトラブルの話も一切聞いた事がない、経済的な事は時々娘にお小遣いを援助した程度、と弁解していたが。 杉村は提案した、→私立探偵ではなく、弁護士を依頼して面会出来るように正面から知貴さんに交渉する事、メンタルクリニックも守秘義務があるから私立探偵ではこの壁を破れない、しかし、弁護士なら交渉のテーブルに引っ張り出せます。 佐々知貴さんが言ってることが全て事実とは限りません、優美さんはお母さんに会いたがっているのに知貴さんが邪魔をしている可能性もあります、もっと言えば、自殺未遂の原因は彼の振舞いにあって、それを隠したくて嘘をついている事もあり得ます。 筥崎婦人は目を瞠って、そういう事も考えられますね、と始めて気が付いたように大きく頷いた。 そして、北九州市の息子・毅の名前で杉村探偵に委任状を出して貰い、弁護士と、別な方面からの突破口を決めたのだった。 

 

昭栄大学ホッケー愛好会OBクラブの代表幹事の名前の次に佐々知貴の名前があった。 筥崎婦人の携帯待ち受け画面にあった、夫、娘、息子、婿・知貴の写真もコピーして貰った。 その夜、毅からも話を聞いた、→母から電話がありました、杉村さんはしっかり話を聞いてくれたと、信頼感満点のようでした、よろしくお願いします、と真面目な声だった。 →10月3日(月)、残業だったので夜11時にスマホを見ると、母親からの着信とメールがわんさかあって吃驚しました、母から話を聞き終えて知貴さんに掛けましたが留守電で通じず、コールバックも無いので、翌朝、勤務先に掛けました、すると、君に心配掛けたくないから口止めしておいたのに、お義母さんも使えない人だ、と心配する母をけなしたので憤然としました。 死ぬほど心配しているから早く会わせてやってくれと申し入れたら、わかった判った、とうるさそうにプツンでした。 彼は同級生だとしたら友達にはならないタイプですとはっきり嫌悪感を表した。 俺様的なところが多くて結構クサされた事があったらしい。 ・・・9月30日金曜日、筥崎婦人が、週末はウチに来ないの?と娘・優美にメールを入れると、今夜はトモ君と出かけるから土・日の事は判らないと言う返事の儘、イキナリ、10月3日(月)の自殺未遂騒ぎになって、それ以来一切の連絡がない状態が続いていた。 やはり誰が見たって常識が通じない、アンフェアーな婿さんのやり口である。

 

翌4日(金)7時、杉村が佐々知貴氏の携帯に入れるも応答なし、留守電に吹き込むもコールバックがない、二度続けたが同じなので新宿駅南口のビルの広告代理店に向った。 南口で先回りしていると、筥崎婦人から預かった写真の男が出て来た、180cm程度、引き締まったスポーツマン体形、端正な顔立ち、モテ男だ、佐々優美がベタ惚れなのも無理はない、しかし、その顔は窶(すた)れていた。 顔色が悪く、姿勢も良くない。 朝から疲れている感、満載であった。 新橋駅に向って「オフイス蛎殻(所長・蛎殻昴氏)」の木田光彦・27才を訪ねた。 魔法使いのスキルを持つ、ネット世界の万能者は365日このオフイスにいる。 佐々知貴の携帯番号を伝えて、居場所確認アプリを杉村のスマホに入れてもらった。 有能な女性社員・小鹿さんもいる。 彼女の助言によって花屋の配達人に成り済ましてお見舞いの花束をクリニックに持って行った。 受付の若くて美しい女性が、当院ではアレルギー患者さんを考慮して生花はお受け取りできません、患者さんにお伝えしておきますから、どなたからどなたでしょうか? 杉村はポケットの伝票を確認するように、筥崎静子様から娘さんの佐々優美様へです。 すると、彼女の目が泳いだ、確かに視線が宙に揺れた。

 

花束は家主の竹中大奥様にプレゼント、嫁一号、二号が大喜びしてくれた。 事務所に戻ると、毅君からメールが来ていた。 今朝から昼休みまでに知貴さんから5回の着信がありました、そのやり取りを纏めました。 代理人とは何だ、何をやってるんだ、どういう積りだふざけるな、これに対して打ち合わせた通りに、杉村さんと会って下さい、それが出来ないなら、今、ここできちんと説明して下さい、主治医とも話をさせて下さい、その一点張りで押し通した。 その後、携帯に出ないでいると、会社に掛けて来たので、もう、電話には出ません、会社にも取り次がないように手配します、姉の肉親として要求に応じる気になったら、先ず、杉村さんと会って下さい、とダメを押した。 

 

佐々が会社にいる間に、相模原市の佐々夫婦のマンション住人に聞き込みを掛けようと出発した。 デザイナーズマンション、スマートだが家賃が高そうな雰囲気アリアリで、これなら浦和区の実家に近いところでもっと便利の良さそうなところがある筈だ。 相模原市と勤務先・新宿と浦和区? ちょっと理解がしずらい。 マンションの向かいの一軒家、一ヶ月前、救急車で運ばれた? ああ、ウチのバアさんが言ってたな、若い娘さんが旦那と一緒に乗って行ったと。 目撃者第一号、確かに緊急的な様子があったのだ。 その夜、佐々は、新宿、代々木、相模原と移動したが恵比寿のクリニックには寄らずに帰宅した。 妻の見舞いをしていない。 翌土曜日、オフイス蛎殻のミニバンを借りて、相模原市のマンションを見張りに行った、相変わらず、こちらからの電話には出ない。 佐々のスマホはマンションに留まっている、筥崎夫人に訊くと、このマンションに決めた理由は、入居者が少なくて不動産屋が困っている、18万円の家賃を半分にするから二年間だけ住んで欲しいと佐々君が大学の先輩に泣き付かれたらしい。 このことで二人は大喧嘩になったが、優美が軟化して、トモ君は優しくて私を大事にしてくれるけど、先輩が絡んで来ると人が変わちゃうの、と愚痴を言ってたらしい。 佐々は近くのコンビ二で缶ビールと弁当らしきモノを買って来た。 今日も見舞いに行かないのか、と思った夕刻7時過ぎ、可愛らしい女性が202のブザーを押そうとしながら止めて出て来たので、佐々の叔父だと嘘をついて彼女から訊き出した、会社の子で佐々が最近凄く窶れているので、心配になった、しかし、奥さんの入院中に手料理の差し入れは拙い、と急に常識に戻った、と真っ赤になりながら去って行った。 翌、日曜日も張り込んだ、長身の男が訪ねて来た、筋骨逞しい洒落者だ、彼と車のナンバープレートも撮影しておいた。 先輩らしき男は佐々と一緒に降りて来た、追跡開始である。 しかし、途中で見失った、佐々のスマホも電源を切ったらしく赤い点が消えていた。 

(ここまで全456ページの内、僅か86ページまで。 9月30日・金の夜に何があったのか、先輩後輩の体育会的な強引な付き合いの中に、恐ろしい事が行われていった、彼らの被害にあった奥さんが自殺、被害に手引きしたのが佐々夫婦、その責任感から美優が自殺未遂、自殺した奥さんの旦那が主犯と従犯を殺害し、佐々夫婦は生きながらにして地獄を味わざるを得ない残りの人生となった。 恐ろしい身震いする事件である)

 

 

女子プロ第12戦、狭間世代の稲見萌寧が今年驚異の12戦5勝目、today-11と言うコースレコードを出して、6打差を付けての圧倒的な勝利である。 チップインバーデイや、あれだけのロングパット・バーデイが次々と決まるのは脅威的ですらある。 競い合った選手は呆れんばかりの絶句しかあるまい。 ホントに恐れ入った。 これで日本人の12連勝。 実に清々しい! 余談であるが、稲見と2位の大里桃子、3位の古江彩佳のトップスリーがブリジストンの契約選手だったと言う。 狂喜する担当者の歓びようが目に見えるようだ。 ・・・男子プロ第6戦、三人のP・Oで南アフリカ人・39才が優勝、これで日本人の5勝1敗。 女子プロに比べて何か力が抜けるなァ。   

 

大相撲、我が町の十両・一山本は先場所に続いて10勝5敗の好成績、来場所は幕内を狙える番付になる、体も大きくなってきたし期待大である。 完全無欠だと思っていた照ノ富士が終盤になって2敗を喫し(・・・進藤が大活躍)、かつ、千秋楽で貴景勝に破れて優勝決定戦にもつれ込んだが、流石に本割に続く2連敗はしなかった。 来場所優勝して横綱を手にしたら、大怪我を克服した前代未聞の奇跡の復活、と大騒ぎになるだろう。 そんな気配が濃厚である。 

 

全米プロ選手権、三日目に+4と大崩れした松山が、最終日はevenと健闘したものの23位(104千ドル)に沈んだ。 優勝(216万ドル)はミケルソン、53年振りに最年長優勝48才を50才に塗り替えた。 これは凄い事だ。 優勝スコアが4日間で-6であり、如何に過酷なコースであるかが判る。 ミケルソンはこれで45勝(内、メジャー6勝)、この勢いならまだメジャー優勝が期待できるだろう。

(ここまで、5,300字超え)

 

   令和3年5月24日