こんばんは。いつも応援をありがとうございます。

今日は、春の恵み「筍料理」をいただきに来ました🌕 春のお野菜、特にたけのこは、“新たな声”の始まりを感じさせてくれます。 春の命をいただいて、またひとつ、エネルギーをチャージしたいと思います✨

さて今日は、わたしのプロフィールの続きです。

音大時代──「好き」だけでは進めなかった日々。 わたしはいつも、自分に問いかけていました。

「わたしは何者なのか?」 「フルートを通して、何を表現したいのか?」 「本当に“フルート”でなければならないのか?」

 

ある春の日の夕方。 大学3年生だったわたしは、文化人類学の授業を担当されていた川村文雄先生のお姿を駅で見かけました。

思わず声をかけると、先生はにこやかに 「お〜いいよ。一緒に帰ろう」 と応じてくださり、わたしは新宿までの電車をご一緒させていただくことに。

その電車の中で、わたしは心の中に抱えていた悩みを、先生にお話しました。 先生は、最後まで静かに耳を傾けてくださいました。

そして、電車を降りる間際、こうおっしゃったのです。

「あのね、僕ね、ある劇団の演技指導を毎週土曜日にしているんだ。 君、参加してみる?」

わたしは、迷うことなく即答しました。

「はい!ぜひ参加させてください!」

その翌週から、わたしはその劇団のお稽古に混ぜていただくことになりました。

父が俳優だったこともあり、芝居の稽古の空気はとても自然に感じられましたが、 自分が実際に演じるのは、これが初めて。

脚本を手に、一人ずつ声を出して表現し、身体を使って動く。 3時間のすべてが、わたしにとって“新鮮”でした。

3か月間通わせていただいたある日。 約束の最後のレッスンを終えたとき、先生がこう言ってくださいました。

「君は、どんな道を選んでも大丈夫だよ。 自分という素材を、何を使って表現したいか──それを自由に選んでいい。

 自信をもって選択しなさい。」

 

その言葉に、わたしは胸がいっぱいになりました。

それから一層、「本当にフルート奏者を目指したいのか」という声が、自分の内側から明確に聞こえるようになりました。

その後の大学生活では、日々のレッスンに励みながら 「わたしにしかできないことは何か?」という問いかけに静かに向き合い続けました。

卒業試験では「今この瞬間、“フルートが好き”という気持ちを一番表現できる作品」──
そう思って、私はモーツァルトのコンチェルトを選びました。

そして無事、4年間で大学を卒業することができました。

 

卒業してすぐの春のある日。日本中の音大卒業生たちが集まる、毎年恒例の「デビューコンサート」が開催されました。
けれど、その舞台に、私の名前はありませんでした。

もちろん、ショックがなかったと言えば嘘になります。
けれど、なぜ自分だけが選ばれなかったのか──先生からの説明は、何もありませんでした。

そして、謝恩会の席で、こう言われたのです。

「波戸崎さんは、フルートをやめて早く結婚するといいよ。」

その瞬間、胸の奥から自分自身でも感じたことのないような大きなエネルギーが湧きあがったのを、今でもはっきりと覚えています。悔しさでも、怒りでもない。
もっと深い、「何かが始まる」予感のような熱──。

 

そのエネルギーを抱えたまま、数日後、ふと、ある言葉が心に浮かびました。

 

「どんな形でもいい。演奏を続けろ。」

私は、その言葉を信じ歩き出すことにしました。(続く)