2010年03月23日

second scene135 ~Episode・Shinozuka5~

テーマ:黄昏はいつも優しくて2

 篠塚から見るかぎり瞬は沈着冷静で自己の感情をコントロールすることに長けた男だ。確かに脆い部分を持ちあわせてはいるが、おおよそ閨のなかで交わされる戯言に心を動かされるような人間だとはおもっていなかった。
「言葉にしなければ分からないほど、俺はおまえに冷たかったか」
 瞬が睫(まつげ)をふせ恥らうようにかぶりをふってくる。二十三歳の素顔をはじめてみた気がした。愛しいとおもった。
 言葉で心をつなぎとめられるのなら飽きるほど並べてやろう。欲しい言葉をいってくれと口にしたくなってくる。
「愛してる。朝から晩まで、おまえのことばかり考えてる。これ以上、求めるな。仕事まで手につかなくなる」
 瞬がこくりとうなずき、安堵したように寝息をたてだした。このまま夜が明けなければいい。そう思った。


 あの夜からだ、瞬を男としてみることができなくなったのは。だからといって他の女と同列にみているわけではない。
 見苦しい独占欲だ……。
 瞬は自分のものだと、誰にも渡せない存在なのだと遅まきながら感じた。それはすでに確固とした認識として心のなかに在ったのだろう。ヘッドハンティングしたあの日から、いや、ヘッドハンティングしようと決めた送別会の夜から自分でも気づかないうちに密かに育くまれてきたのかもしれない。だが、認めたくなかった。篠塚ほど奔放な男でさえ同性に惹かれるというタブーは無条件に受け入れられるものではなかったのだ。
 気がつくと引き返せないところまできていた……。
 自分にこんな恋ができるとはおもっていなかった。恋愛とは人生を豊かにするエッセンスのようなものだと、人生という空間にほのかにただようアロマのようなものだとおもっていた。それは決して互いの将来を懸念するものでもなければモラルの是非を問われるようなものでもない。
 シャンパンを冷やしている氷が崩れおち音をたてた。はっとして腕時計に視線をおとす。十一時。瞬からの連絡はなかった。
 ふられたのは初めてだ……。
 苦笑して窓際まで歩く。不思議と感情は動かなかった。存在が近すぎたのだ。ニューヨークの三ヶ月間、瞬のいない空間はなかった。つねにひっそりと寄り添い、振り返るときまっておだやかな微笑をむけてきた。失ったなど信じられない。信じたくなかった。


前のページへ | もくじ | 次のページへ



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
瞬のおねだりに投票
ブログ村・小説部門です。ポチいただけると嬉しいです(^▽^)

こちらもついでにポチっと(^▽^;)


アルファポリスWebコンテンツ「黄昏はいつも優しくて」に→投票

日本ブログ村 小説部門に→投票

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






AD
いいね!した人  |  リブログ(0)

早瀬ミサキさんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。