「宇宙気流」
アイザック・アシモフ、著。 1950年代。
(ハヤカワ文庫2000年版)
時折、古いSFが読みたくなります。
で、アシモフ。
SFです。 誰が何と言おうとこれはSF中のSF。
まあ、誰も何とも云いませんが・・・。
高価な特殊繊維カートを産出する人類宇宙唯一
の惑星フロリナ。 この驚異の繊維を入手すれば、
無尽蔵の富を所有することになる。 だが、その
フロリナが消滅する!?
驚くべき通信を残して消息を断った空間分析家の
謎の失踪は、カート貿易独占を死守せんとする
サ-ク人と、それに対抗して暗躍するトランター帝国
との対立を激化させ、ついに全銀河を震撼させる
大事件へと進展した!
(文庫裏表紙より引用)
アシモフの一大叙事詩「銀河帝国興亡史」に
連なる作品です。
遥かなる未来、人類は地球を源とする巨大な
銀河文明を築いていた。
地球は、人類の発祥の地でありながら、忘れられ
かけた伝説的存在になっている。
主人公のリックは、宇宙空間を観測・調査する
内に、驚くべき事実に気付くのだが、その事が公に
なることを良しとしない何ものかによって、記憶を
消され、惑星フロリナに放置される。
この惑星は、非常に特殊で高価な繊維を産出する
ことで有名なのだが、フロリナ人は「原住民」と呼ばれ
貴族であるサ-ク人によって支配されている。
と、実にらしい設定です。
しかし、「その危機とは何か?」、「リックの記憶を
消したのは誰か?」と言う二つの謎を巡る物語が
実に面白い。
支配者・貴族間の政治的駆け引きに、空間分析局
(国連的な位置付けと思って下さい)の担当者の思惑
や、「帝国」と対立する「共和国」側のエージェントの
暗躍が絡まって、実にスリリングな展開。
そして、「フロリナ消滅」の危機の実態と、そこから
派生する意外な事実。
さらに、リックの記憶を消した人物の意外さ!
まあ、細かな点で「時代性」は感じますが、それも
気にならないほど面白い物語です。
エンディングもジンと来ました。
アシモフ、恐るべし!