藪蕎麦御三家の一つ「池の端藪蕎麦」(2016年に閉店) | 話のコレクション

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食べ歩き、旅行、散歩を中心に記事にします。が、それらに行けぬ時は、古今東西の興味深い話を記事にします。

 
 私は2013年4月4日、用事があり東京へ出かけた。
 この折り、昼食を食べたのが、池の端藪蕎麦である。
 
 池之端藪蕎麦は、かんだやぶそば、並木藪蕎麦と並び、
 
 「藪蕎麦御三家」
 
の一つと、言われていた。
 
 日本全国には、藪系のそば屋さんがたくさんあるわけだが、知名度、存在感は、この三つの店が、抜けていた。
 まさに、名店中の名店だ。
 
 
 
 
 私が池の端藪蕎麦へ入ったのは、午前11時35分。
 開店から、たった5分しかたっていないのに、テーブル席は満席。
 
 店員さんに、小あがりの席を勧められた。
 
 テーブル席のお客さんたちは、おそらく、行列を作り店が開くのを待っていた。
 それで、開店と同時に、入ったのだろう。
 
 
 
 
 店の外観も、昭和の時代を思い起こさせる雰囲気だったが、店内も同様だった。
 
 木造の天井、提灯をつぶしたような形の照明器具も、昭和の頃をほうふつさせる古風な雰囲気。
 
 この店は、昭和29年(1954年)創業との事だが、創業当時のイメージを、ずっと大切にしてきたのであろう。
 
 
 
 (さて、何を食べようかな・・・)と、おしながきを見つつ考える。
 
 この日は、暖かい陽気なので冷たい蕎麦が食べたくなった。
 600円のざるそばを注文。
 
 
 注文して、2分か3分すると蕎麦、そば汁が出てきた。
 
 店員さんの客への応対もテキパキして早いし、蕎麦を出すのも早い。
 このあたり、好感がもてる。
 
 
 この蕎麦は、甘皮つきのそば粉を、とろろでつないでいるという。
 
 そば粉は、北海道産、福島県奥会津産、茨城県金砂郷産を、ブレンドしたもので、一年通して、味にばらつきが出ぬよう注意しているとの事だ。
 
 つなぎのとろろは、全体の5%ほど入っている。
 
 
 そば汁は、驚くほど量が少ない。
 これは、どうしてかというと、江戸そば特有の辛さがある汁だから。
 
 辛いから、蕎麦に少しだけつけて食べなさい、という配慮である。
 
 
 こういう伝統の江戸そばというのは、蕎麦の端に、少しだけそば汁をつけていただくのが、粋とされる。
 
 私も、そんな感じで、食べていった。
 蕎麦は、ツルツルしてこしが、ひじょうにある。
 こしがあるから、細くても、食べごたえを感じる。
 
 そば汁は、辛いけど、同時に他のそば屋のものより、しょっぱい感じがした。
 グルメの本を読むと、この店のそば汁は、とかく「辛い」とばかり強調されている。
 
 だから、このしょっぱさは意外だった。
 だが、蕎麦とそば汁の相性はいい。
 
 全体的に、かなり美味い蕎麦だ。さすが名店。期待していた通りの美味しさであった。
 
 
 蕎麦をあと少しで、食べ終えそうな頃、店員さんがそば湯を持ってきた。
 そば湯入れは、古めかしい木箱のよう。
 これも、店の伝統や長い歴史を感じさせた。
 
 そば汁が濃い味だから、そば湯と上手くあう。そば汁にそば湯を入れると適度なしょっぱさ、辛さになり飲み心地がいい。
 
 この池之端藪蕎麦は、2016年に閉店した。二代目店主が、体調を崩し休業。
 このまま閉店した。後継者がいなかったのだろう。
 
 
 池の端藪蕎麦 (2016年に閉業)
 営業していた頃の住所 東京都文京区湯島3-44-7