私は2013年4月4日、用事があり東京へ出かけた。
この折り、昼食を食べたのが、池の端藪蕎麦である。
池之端藪蕎麦は、かんだやぶそば、並木藪蕎麦と並び、
「藪蕎麦御三家」
の一つと、言われていた。
日本全国には、藪系のそば屋さんがたくさんあるわけだが、知名度、存在感は、この三つの店が、抜けていた。
まさに、名店中の名店だ。
私が池の端藪蕎麦へ入ったのは、午前11時35分。
開店から、たった5分しかたっていないのに、テーブル席は満席。
店員さんに、小あがりの席を勧められた。
テーブル席のお客さんたちは、おそらく、行列を作り店が開くのを待っていた。
それで、開店と同時に、入ったのだろう。
店の外観も、昭和の時代を思い起こさせる雰囲気だったが、店内も同様だった。
木造の天井、提灯をつぶしたような形の照明器具も、昭和の頃をほうふつさせる古風な雰囲気。
この店は、昭和29年(1954年)創業との事だが、創業当時のイメージを、ずっと大切にしてきたのであろう。
(さて、何を食べようかな・・・)と、おしながきを見つつ考える。
この日は、暖かい陽気なので冷たい蕎麦が食べたくなった。
600円のざるそばを注文。
注文して、2分か3分すると蕎麦、そば汁が出てきた。
店員さんの客への応対もテキパキして早いし、蕎麦を出すのも早い。
このあたり、好感がもてる。
この蕎麦は、甘皮つきのそば粉を、とろろでつないでいるという。
そば粉は、北海道産、福島県奥会津産、茨城県金砂郷産を、ブレンドしたもので、一年通して、味にばらつきが出ぬよう注意しているとの事だ。
つなぎのとろろは、全体の5%ほど入っている。
そば汁は、驚くほど量が少ない。
これは、どうしてかというと、江戸そば特有の辛さがある汁だから。
辛いから、蕎麦に少しだけつけて食べなさい、という配慮である。
こういう伝統の江戸そばというのは、蕎麦の端に、少しだけそば汁をつけていただくのが、粋とされる。
私も、そんな感じで、食べていった。
蕎麦は、ツルツルしてこしが、ひじょうにある。
こしがあるから、細くても、食べごたえを感じる。
そば汁は、辛いけど、同時に他のそば屋のものより、しょっぱい感じがした。
グルメの本を読むと、この店のそば汁は、とかく「辛い」とばかり強調されている。
だから、このしょっぱさは意外だった。
だが、蕎麦とそば汁の相性はいい。
全体的に、かなり美味い蕎麦だ。さすが名店。期待していた通りの美味しさであった。