選挙が始まる。

 

有権者それぞれにさまざまな基準があり、各候補を比較していただくことは、選挙の基本だ。

 

政党側、候補者側も、目指すべき社会の実現のため政策を掲げ、その実行能力も併せて皆様に訴えるわけだから、比較されるのは当たり前のこと。

 

かつては候補者が一堂に会した「立会演説会」が開催されていた、立会演説会は、同じ会場で同時刻に開催されるもので、戦後に導入され、国会議員選挙(参議院全国区、現在の比例区は除く)と知事選挙では義務化されている時期もあった。

 

容赦ないヤジや、これ対する当意即妙な返しなども見どころ聴きどころ。戦後の大政治家たちはここで鍛えられたという人も少なくなく、名演説やウイットに富んだ返しがいくつも生まれた。三木武吉の有名な妾話はこの立会演説会でのものだったという。

 

立会演説会は、それぞれの陣営が過熱してヤジも悪質になったり、代理者の演説が横行したりしたことなどにより、聴衆の参加率も低下し、1983年には廃止され、制度はなくなった。

 

私は廃止されたしばらくの後に政治記者と政治家になったので経験をしていないが、候補の資質や熱量を知るには良い機会だったのでないかと思う。

 

もちろん、だれしもむやみに批判されたり、やじられたりすることは望まないが、受け答えもう含めて有権者の比較判断の大きな材料になったことだろうし、政治家は相当に鍛えられたに違いない。(胆力のある政治家が少なくなったのはこのあたりのせいなのかはわからないが、)

いずれにせよ、候補を一堂に並べて聞くことは、政治と有権者の関係からも必要なことだと思う。

 

立会演説会がなくなったかわりと言っては何だが、各地の青年団体がルールも決めて「公開討論会」を企画してきた。往年の立会演説会に比べると物足りないかもしれないが、それでも大きな役割を果たしてきたと思う。

 

岩手でも続けられてきたが、今回は見送りとのこと。どのような背景か知る由もないが、大変残念だ。

 

政党に所属する身ではあるが、他党の政策や他候補の話を聞くというのは、とても勉強になる機会だし、新しい発想や新しい視点をもたらしてくれることも少なくない。切磋琢磨する良い機会だ。

 

選挙になれば、私たちも私たちの主張を訴えることになるわけだが、有権者の皆さんには、ぜひ、幅広く比較していただきたい。両方の街頭演説をお聞きすることも良い経験となるはず。

 

政治は政治家のものではなく、国民のもの。そして国民とは私たちひとりひとり。

 

より良い地域と日本のために、良き議論をして比較判断される材料を多く提供できる選挙にしていきたい。