前回のレポートからずいぶん間が空いてしまいましたが、翻訳祭のレポートの続きを書きたいと思います。

 

これまでの翻訳祭当日のレポートは、以下をご覧ください。

 

一連の翻訳祭レポートは、セッションで配布された資料と自分で取ったメモを元に、さらに自分の意見を織り交ぜながら書いています。

2017年の翻訳祭の方針と同じ感覚でかなり詳細な内容を書いてしまったのですが、もし差し支えがありました場合には、修正、削除を検討させていただきますので、お声をおかけいただけたらありがたいです。

 


 
セッション3は、いろいろな意味でいろいろと考えさせられたセッションでした。
そして、賛否両論、いろいろな意見が出てきそうな内容だなとは思っていたのですがやはりそうで、自分がレポートを書く前にそういった意見をいろいろ見てしまったため、なかなか書き進めることができなくなってしまったのでした。
(「いろいろ」多すぎあせるワザとです・・)
 
やはり、当日か翌日には勢いで一気にレポートを書いてしまうのが良いかもしれませんね。
 
まずは、ざっくり概要を書いていきます。

黄色い花 セッション3 黄色い花

14:20-15:50
【MT】 NMT+PE=医学翻訳の新たな潮流
 
このセッションも大盛況で、部屋に着いたときには後ろの席しか空いていませんでした。
 
セッションを担当されたのは、医療翻訳者の津山逸先生。
医療翻訳者さんのブログなどで津山先生のお名前は聞いたことがあったのですが、お姿を拝見するのは初めてでした。
翻訳一筋で30年以上やってこられたとは、それだけでもすごいこと。思わず姿勢を正してしまいました。
 
それにしても、ちょっと意外というか、ベテランの翻訳者の方は、どちらかというとMTから距離を置いている方が多い中(語弊があるかもしれませんが)、MT+PEを積極的に導入して推進されている方はわりと珍しいのではないかなと思いました。
 
MTの悪い点をきちんと把握しておくことも、MTを使わなくても自分で翻訳できる実力を養うことも大事なのは当然のことではありますが、MTを使わないという選択をするにしても、「使う側」の実際の現場を知ることは必要だと思います。

自分で翻訳できる実力を持っている方がMTをどのように使っているのか(=実際のMT+PE作業)を見られる機会なんてなかなかないと思います。
まずはそういう意味で、このセッションはものすごく画期的なものだったのではないかと思います。
津山先生はそのやり方で成功していらっしゃるわけですから、必見の価値ありかと。
 
さて、配布資料の冒頭に
A Trend in the Pharmaceutical Industry・・・とある通り、あくまでも「1つの選択肢」とおっしゃっていました。
 
津山先生のお話を箇条書きにすると、大体こんな感じでしょうか。
  • MTは翻訳ツールの1つであり、敵対するものではない
  • MT+PEで翻訳者の仕事の幅が広がり、新たな収入源が増える
  • MTエンジンの良し悪しは、コーパスの数と質で決まる
    これまでは機密保持の都合上難しかったが、「NICTがR&D Head Clubと共同で行った製薬業界向けのAIシステムの最適化」により、今後MT+PEの仕事が飛躍的に増えていくものと思われる
    今まで最大の制約は『時間』だったため、MT+PEによりその制約がなくなった以上、これまで翻訳できなかったような内部文書が翻訳されるようになる
    ⇒このルートで新たな仕事が出てくると思われる
    ⇒この流れ(MT+PEが飛躍的に増える)が避けられないのであれば、早いうちに慣れて備えておくのがよい
  • 「時間的な制約」と、「品質」の落としどころ
    ⇒人がやるのと同じくらいのレベルを目指すけど、ある程度割り切って行う。(品質絶対重視だと葛藤があるかもしれないが)
    ⇒100点を求める必要はなく、「ちょうどよい」レベルでよい(65点)。ただし、常に100点のものができる実力はつけておく必要がある
  • 駆け出しの人がPEをするのは無理
    語学力・語彙力があってこそPEができる・・と考えなければいけない。
    流暢さに惑わされて誤訳を見落としがち
    ⇒一見誤訳に見えても単に原文と違うように見えるだけで(コーパスが効いた「高度な意訳」の場合もある)、それを見分けられるのはそれなりの力がある人だけ
  • PEはMTの付加価値。「処理量が上がる」という利点を提供しているため、コストダウンの対象にすべきじゃない
  • 日英についてはかなりイケてる。
  • 翻訳経験年数が増えるほど、 PEの時間は減るが、修正は増える
セッション後半では、通常のMTエンジン(*注1)から出力された訳文(General)と製薬会社内のコーパスを加えたものから出力された訳文(Adaptive)を比較しました。
 
その差は歴然!
Adaptiveの訳文は、日本語だけを読むと、ほとんど違和感がないものになっていて驚きました。
こんなレベルの訳文がMTで出せてしまうなら、負けてしまう翻訳者はたくさんいるだろう・・・と思ってしまいました。
 
*注1
このエンジンがどのレベルのどんなエンジンなのか聞き逃してしまいました
あせる
 
そして、その後、Adaptiveな文の不備を要領よく見つけて修正していく作業(PE)の実演がありました。
 
ここはもう、慣れと経験で要領よく進めていっていらっしゃる感じでした・・・。

 


 

「そもそもMT+PEを導入をするべきなのか」とか、「ちょうどよいレベルってどのくらいなのか」とか「65点でいいのか」とか、いろいろ追及のポイントがあるのかもしれませんが、今回そこは問題にするところではないと思います。

 

MT+PEの導入については、関わりたくない人は関わらないければいいことですし、「ちょうど良いレベル」については、つまりは「品質」ということで、「品質の良さ」なんて、人間の翻訳だってどの程度なのかなんて測れていないのは同じこと。(チェックのレベルも同様。)

「65点」だって、津山先生の65点は、駆け出しの翻訳者にとっては満点なのかもしれないし、中堅翻訳者にとっては90点なのかもしれないし、あくまでも感覚の問題かと思います。

そして、「感覚」については経験に基づいた作業によるもので、数値化できるものではないはず。それは人の翻訳についても同じこと。

このあたりにこだわってしまうと、そもそもの論点がずれてしまう気がします。

 

前提とでもおっしゃっていた通り、「あくまでも1つの選択肢」であり、明確に言葉にはされていませんでしたが、「高い翻訳力」と、長い経験で業界全体のレベルを把握してるからこその「判断力」あってのMT+PEなのではないかなと思います。

あ、あと、「レベルの高いMT」も大前提になりますね。

 

そういう条件がそろって初めて、「MT+PEで要領よく仕事をこなしていくこと可能」・・・という一例だと、私は受け止めました。

 

だから、ここで語られている話を、レベルの低いMTやレベルの高くない翻訳者に対して一般論として当てはめるのは、お話にもならないのではないかと思いました。

 


 

私は翻訳者としてはMTに頼るつもりは全くありませんが、MT+PEを「自分は絶対に関わらない」と言い切るつもりはありません。

 

何度か書いていますが、もともと編集や製作工程の効率化作業などに関わっていたこともあるため、テクノロジーとしてはMTは面白いと思いますし、興味があります。
また、企業の中にいるとMTに期待を寄せる人を目の当たりにすることも多く、いろいろと考えさせられることが多いです。

 

Google翻訳のようなMTに頼るのは論外ですが、最近台頭している大手のMTのようなものついてはこれからどんどんレベルも上がり、普及もしていくでしょうから、動向についてはやはり目が離せません。

また、何らかの形で関わることを迫られることになった時に、関わるのをやめるのか、関わるならどういうスタンスで関わるのか、はっきりと答えを出せるようにしておきたいと思います。

 

・・・なんて、いろいろ考えていたら、セッション3だけで長くなってしまいましたあせる

 


 

文章練習とSNSでの交流のために始めたブログですが、見てくださる方が多くなるにつれ、自分の意見を書くことがちょっと怖くなってきています。(的外れなことや、誰かの気分を害することを書いたらどうしようとか、いろいろ考えていると何も書けなくなってしまいます。)

 

もともと「自分の言葉で説明する」ことが苦手なので、あまり良い文も書けませんし、論理的にも破綻していることがあると思うのですが、ひとまず今回はなんとなく考えていることを書いてみました。

 

そうそう、良い文といえば、読むたびに、その論理力、構成力のすばらしさと文章の美しさに感心してしまうブログが2つあるのですが、100年かけてもあの域にはたどり着けない気がします汗

書く練習を続けることも必要かもしれませんが、センスの問題もあるのかも・・・と、弱気になったりしてあせる

 


 

そういうわけで、セッション4と交流パーティーについては次回以降の記事へ持ち越しとなりました。

 

いつまで続くんだ・・と思われるかと思いますが、もう少しお付き合いいただけたら嬉しいですキラキラ

 

 

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