隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)とは

隆起性皮膚線維肉腫(Dermatofibrosarcoma Protuberans: DFSP)は、皮膚の深層にある線維芽細胞から発生するまれな皮膚がんです。発症率は100万人に1~5人程度とされ、比較的若い世代に多く見られます。

特徴としては:
•     ゆっくり増殖するが局所浸潤性が強い
•     再発しやすいが転移はまれ
•     初期はケロイドやあざと間違えられることもある

診断には皮膚生検や画像検査、遺伝子検査が用いられ、治療は外科的切除が第一選択です。再発を防ぐため、腫瘍の周囲を広範囲に切除する必要があり、場合によっては皮膚移植も行われます。


私自身の経験
2020年5月、左足の内ももに謎のできものができました。かかりつけ医の整形外科から江戸川病院、そして日大板橋病院へと検査を進めた結果、隆起性皮膚線維肉腫であることが判明しました。
※MRIの画像 左側の黒い塊が隆起性皮膚繊維肉腫

同年9月に手術を受けました。通常は広範囲切除と皮膚移植が必要ですが、幸運にも縫合で対応でき、手術時間も大幅に短縮されました。あれから5年、先日最後の全身検査としてCTを受け、**12月18日の診察で異常がなければ「寛解」**となります。
診断当初は情報が少なく、不安な日々を過ごしましたが、なんとか乗り越えることができました。


入院中のできごと
私が入院していた病室には膀胱がんや腎臓がんの患者さんがいました。私のがんはいわゆる希少がんのため、担当医の数も7名にのぼり、連日、研修医さんなどが多く病室に来て診察をしていました。

同室の患者さんたちは「井口さんはいったい何の病気なんだろう…」と心配していたそうです。毎日楽しそうに会話をして、ご飯もたくさん食べてニコニコしている私が、実は複雑な治療方針の話をしていることを不思議に思っていたと聞きました。

希少がんであるがゆえに多くの医師が治療に参加しているということです。
皮膚科、形成外科、整形外科、麻酔科、転移に備えて乳腺分泌科まで関わり、手術室では看護師さん4名に対して医師だけで10名を超えていたそうです。

後でその話を聞いたとき、「それだけお医者さんが居ればなんとかなるだろうな」と、妙な安心感を覚えましたが・・・

希少がんとは
**希少がん(Rare Cancer)**とは、人口10万人あたり6例未満の発症率しかない「まれながん」の総称です。患者数が少ないため、診断や治療法の確立が難しく、情報不足や受療体制の課題が大きいとされています。

代表的な希少がんには:
•     脳・脊髄:神経膠腫、髄芽腫
•     眼:網膜芽細胞腫、脈絡膜悪性黒色腫
•     頭頸部:嗅神経芽細胞腫、腺様嚢胞がん
•     消化管:小腸がん、十二指腸がん、GIST(消化管間質腫瘍)
•     肝胆膵:胆道がん、膵神経内分泌腫瘍
•     泌尿器・生殖器:尿膜管がん、子宮肉腫
•     皮膚:悪性黒色腫、メルケル細胞がん、皮膚血管肉腫、そして隆起性皮膚線維肉腫
•     骨・軟部組織:骨肉腫、ユーイング肉腫、脂肪肉腫

今後に向けて
私は「隆起性皮膚線維肉腫」という希少がんを経験した元患者として、情報収集と啓発活動を続けていきたいと思います。診断当初、情報が少なく非常に不安でしたが、経験を共有することで同じように悩む人の支えになれると信じています。
希少がんに直面する人々が「孤立しない」ために、元患者として声を届け続けたい。医学的な知識と生活者の視点をつなぎ、地域や社会に向けて「情報の橋渡し」をすることが私の役割だと感じています。


まとめ
隆起性皮膚線維肉腫は非常にまれな皮膚がんですが、再発しやすい性質を持つため早期発見と適切な治療が重要です。私自身の経験からも、情報不足による不安を減らすための発信が必要だと痛感しました。

希少がんは「数が少ないからこそ声が届きにくい」課題を抱えています。だからこそ、患者や元患者が発信する言葉には大きな意味があります。私はこれからも、寛解を迎えた後も、地域や社会に向けて希少がんの理解を広げる活動を続けていきたいと思います。


私が加入してる団体やコミュニティサイト
一般社団法人日本希少がん患者会ネットワーク

希少がん患者コミュニティー「raccoon」ラクーン