「いらっしゃいませ。」
「あの・・コレ下さい・・・」
「525円です。」
「あ・・・・は・・はい・・・。」
「千円から良いですか?」
「は・・い・・あ・・・」
「ん?細かいのありますか?」
「いえ・・あ・・千円からで・・・」
「じゃあ千円お預かりします」
玲子はドキドキしていた。ソレはまるで中学の時に始めて男子に告白を受けたとき以上のものだった。
どうしよう・・・・。私告白なんかしたことないし。なんていえば・・・。
何よりミラクルさんが私のことを知ってるだなんて思えない。
確かに毎回ミラクルさんのシフトをここのバイトの友達の三咲に教えてもらって会いに来てたのはあるけどそんな自信はないわ。
でも・・今言わなくちゃ・・・・。
あの日、仕事先で失敗して落胆していたあの日同僚の幸一に誘われて飲みに出た。
大きな街に繰り出す気にもなれず、こんな田舎町に来たんだっけ。
幸一には
「あれは玲子ちゃんのせいじゃないよ。部長があんな卑怯な逃げかたして!普通部下のフォローするのが上司の役目だろ?それを反対に玲子ちゃんに押し付けるようにするなんて・・・」
本気で憤慨してくれた幸一に胸が苦しくなるものがあった。
「もしかして・・・」
そう感じはしたがそれどころではなかったんだ。
居酒屋によってコンビニが見えた。
ブルーの看板のおなじみのアレだ。全国何処にでもあって、何処も変わらない。
いやなことを忘れたかったのか、ピッチが早くなってたのでコンビニによる。
ウコンの力を飲んで明日に備えなきゃ。
でも・・・このまま帰るのかな・・?幸一はどう思ってるんだろう。
私から誘ったわけじゃないけど、確かに飲みにでも行きたい気持ちだったし。
それを見てくれてたんだって思うとやっぱり嬉しい。
なによりさっき本気で、自分のことのように怒ってくれてた孝一の顔がチラつく。
コンビニの玄関の前で孝一の背中を見つめながら玲子は考えていた。
店内に入るとカウンターの前に陳列してあってスグに見つけることが出来た。
孝一は雑誌を見たいらしく玄関入ってすぐ右に行く。
玲子は商品を手にとってカウンターに置く。
丁度商品が来たばかりなのか店員さん2人がせわしなく商品を棚に詰めている。
「すいません・・・」
力なく声店員にをかけた。
すぐに気付いたらしく向こうを向いて作業をしてた店員が玲子を方を向く。
はっとした。息を呑んだ。え?智久・・・・?まさか!そんなはずはない!
目を見開いて、いや、目だけじゃなく口だって開いてたかもしれない。
玲子の横を颯爽と駆け抜けカウンターに入りレジをするその店員をみてしばし立ちすくんだ・・・。
「・・です。」
「・・・せん?・・・ですけど?」
「あのーすいません?大丈夫ですか?」
どれくらいそうしていたんだろう。見惚れていた。はっと千円札を出す。
「すいません・・・幾らですか?」
「えっと200円ですけど・・・大丈夫ですか?」
「え?は、はい・・・なんでですか?」
「いや、だって泣いてるから。」
気付かなかった。玲子の目には涙がこぼれていた。
そんな一目見ただけで惚れる事もなかった玲子が涙を流すなんて。
丁度その時に孝一がレジにやってきた。
そして玲子を覗き込むようにして眺めると、とっさに
「どうしたの?大丈夫?」
先ほどの店員と同じセリフなのだが温度が違う。重みが違う。質が違う。
そういうことだったのか。
孝一にはあきらかに下心があったのだ。
そんなもの声を聞き比べればすぐに分かる。
いいや、普段の玲子ならそんなことしなくても分かっただろう。
でも今日は心がささくれててそれどころではなかったのだ。
そう思いながら
「ううん、この人が・・・」
そこまで口にすると気付かせてくれた店員さんに、同じセリフでも心のこもった暖かい言葉を掛けてくれたこのヒトに感謝の念がこみ上げてきて言葉に詰まった。
「なんだって?!てめこのやろ!玲子ちゃんに何したっていうんだ!?」
飲んだ勢いもあったのだろう。下心から良いところを見せようとも思ったんだろう。
店員に絡み始めた。
「違うのよ!」
「いいんだよ玲子ちゃん!コンビニの店員のくせに玲子ちゃんを泣かせたんだ!許せない!」
「いいのよ・・・違うのよ・・・」
まだ胸が一杯で言葉が上手く出てこない。
逆に孝一を助長するような言葉しか出てこない。
「なんですか?」
「なんですかじゃねーよ!謝れよ!!」
「謝るようなことはしてませんよ?」
「ふざけんなよ!」
「お客さんだいぶ酔ってますね?」
「なんだその態度は?それが客に対する態度かよ!?コンビニの店員のくせっ!!」
「お客さんはコンビニの店員だからって馬鹿にしてませんか?」
「なんだよ!てめふざけんなよ!?」
「やめてよ!違うんだって!すいません店員さん!もうお釣りはいいですから!」
そういってやっとのことで孝一を店外へ連れ出した。
うんざりだ。孝一にもさっきまでこんな孝一にすこしでも気を許そうとした自分にも。
ただ事態はそれだけではすまなかった。
孝一がそれから度々この店に来てあの店員さんに難癖をつけたりしてるらしい。
それが何処でどう間違ったかそれ責任があの店員さんにあるとあの店のオーナーに勘違いされたらしく近々辞めるらしいってことなのだ。
それを聞いて居ても経ってもいられずまずは夕方女の子が居る時間帯に行くようになり顔馴染みになり、咲子と友達になってあの店員さんがミラクルさんということ、このシフトだってことまで突き止めた。
それを謝らなくっちゃ。
いいや、本当はソレは自分にとって一番都合の良い「いいわけ」だった。
あの日以来ミラクルさんのことを考えない日はない。
伝えよう・・・・・。
「あの・・・お釣りですけど?」
「あ!すいません!あの・・・・・好きです!!」
「え!?・・・・」
ってな理由でバイトを辞めたどうも!僕です!!!
*夕べわざわざプリンスさんが俺の最後だからって顔出してくれました。
ありがとねん♪