梟ーフクロウー | akaneの鑑賞記録

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歌舞伎や演劇、映画、TVドラマなど鑑賞作品の覚書

 

 

 


17世紀・朝鮮王朝時代の記録物「仁祖実録」に記された“怪奇の死”にまつわる謎を題材に、盲目の目撃者が謎めいた死の真相を暴くため奔走する姿を予測不可能な展開で緊張感たっぷりに描き、韓国で大ヒットを記録したサスペンススリラー。

盲目の天才鍼医ギョンスは病の弟を救うため、誰にも言えない秘密を抱えながら宮廷で働いている。ある夜、ギョンスは王の子の死を“目撃”してしまったことで、おぞましい真実に直面する事態に。追われる身となった彼は、朝日が昇るまでという限られた時間のなか、謎を暴くため闇を駆けるが……。

2023年・第59回大鐘賞映画祭で新人監督賞・脚本賞・編集賞、第44回青龍映画賞で新人監督賞・撮影照明賞・編集賞を受賞するなど、同年の韓国国内映画賞で最多受賞を記録した。

 

 

 





朝鮮に戻った王の子は、ほどなくして病にかかり、命を落とした。
彼の全身は黒く変色し、目や耳、鼻や口など、

七つの穴から鮮血を流し、

さながら、薬物中毒死のようであった  

 

--- 朝鮮王朝実録より ---

 





これは面白かった!!


盲目の天才鍼医ギョンス(リュ・ジュンヨル)。

 

 

 

目は見えませんが、その他の感覚は非常に優れ、病状の見立ても、鍼の技術も超一流。
その腕を見込まれて、宮廷で働くことになります。

 

本当は、暗闇であればうっすらと見えるのですが、秘密の多い宮廷では「盲人」ということが有利に働くので(貴人の治療をしても見たことを口外できないので用心されない)、少し見えることは隠しています。
心臓病の幼い弟がいて、その薬代を工面しなくてはならず、なんとしても安定した収入が必要だからです。
 

 

 

 


第16代国王・仁祖(インジョ)の時代。

中国では明が滅び、清の時代となっていました。
長男である世子(王子)は中国で8年にわたる人質生活を送った後、ようやく朝鮮に戻ってきました。

 

清で西洋文化に触れ、新しい考え方の王子は、ギョンスとも分け隔てなく接し、改革を進めようとしますが、旧態依然とした宮廷内では、それを快く思わない者も多くいました。

ある日、「王子の容体が急変した」と王子の寝所に呼び出され、殿医長が施す治療を手伝っていた際、ふいに灯が消えて暗闇に。
そこで恐ろしい出来事を目撃してしまうのです!

 



この事実を誰に伝えれば良いのか?
盲目の存在で、どうやって見たことを証明する?
証拠の品は?
そしてこの暗殺の首謀者は??

 



後半は、この謎解きと、追われる身となったギョンスの攻防がスピーディに描かれ、一瞬も目を離せません。

 

 


まず、盲目のギョンスを演じたリュ・ジュンヨルさんの演技の素晴らしさ!!

 


全く目が見えていない時
うっすら見えている時
見えているけれど見えないふりをしている時



このそれぞれの目線や表情の演じ分けが完璧なんです。

 


毒戦 BELIEVER」でも、麻薬組織のアジトが襲撃され1人だけ生き残った下っ端の男が、警察のおとり捜査に協力させられるという難しい役で、そこでもほとんど話さず無表情な役を好演していました。

 

 

 


優しかった王子の無念をなんとしても晴らしたい。
同様に狙われる王子の若殿の命も救いたい。

でもこの官職を失ったら、弟を救うことはできなくなる
盲人で通している身分の低い自分の言葉など、誰が信じてくれるだろうか

 

 


様々な思いが駆け巡り、四面楚歌状態のギョンス。
目が見えるのは暗闇の中だけなので、陽が昇ると何もできなくなってしまうのです。



 

 

 

 


国王・仁祖役には、「コンフィデンシャル」シリーズでコミカルな警官を演じたユ・ヘジンさん。

 

 

 


そして事件解決のカギを握る宰相にはチョ・ソンハさん。

 

 

時代劇で宰相とか左議政とか、いわゆる「大臣」のトップといえば絶対この方!!
様々なドラマに登場していますが、決して王役じゃないんですよね。
とてもポーカーフェイスの演技で、いつも敵か味方か最後まで分からないので、そこもまた不安を掻き立てられるんです。
 

 


この映画では

「知らないふり、見えないふりを続けることはできない」
「目を閉じて生きる方が幸せなこともある」


という2つの生き方を示しています。

 

人は、見て見ぬふりをして生きる方が楽で幸せかもしれません。



でも大事なのは、「真実を見た人たちは、たとえそれが無駄だと分かっていても、その真実を口にし続けること。」
アン・テジン監督はそんな願いを込めて、この映画を作ったそうです。




暗闇なら少し見える、ということで、暗いシーンも多いので、良いスクリーンの映画館でないと少し見づらいかもしれませんが、各賞を総ナメにしたのも納得の面白さです!

 

 

 

 

おススメです!