現在読んでいる、イーデン・フィルポッツの古典的本格ミステリ「赤毛のレドメイン家」のヒロインのジョニー・ペンディーンの初登場シーンに、『荒涼とした沼沢地に、突如、魔法の力で、南の国の大輪の花が咲き出たのか、羊歯(しだ)や、岩石の上に、その緋の色を濃くしつつある落陽が、最後の閃き(ひらめき)をかき立てて、この可憐な女性に化身したのであろうか。すらっとしたからだつきだが、背はかならずしも高くない。帽子をかぶっていないので、額の上に巻き上げられた鳶色の髪が、あたたかみを残した夕日の光にからみあって、頭をめぐる円光さながらに燃え上がっていた。』と非常に文学的修辞で語られている。
彼女は、祖父がイギリスからオーストラリアに渡り、牧羊業で成功した「赤毛のレドメイン家」と呼ばれる一族の最後の末裔で、彼女の現存する伯父たちも皆燃えるような赤毛の持ち主だが、彼女は赤毛ではなく鳶色の髪と表現されている。
ここで鳶色という色がよくわからなかったので調べたら、鳥の鳶(トンビ)の羽根の色で、暗い赤みを帯びた茶色のことであった。
この背景の色が鳶色です。
こんな髪の色の人がいたら日本人なら間違いなく赤毛と表現されることでしょう?
私はこの本を50年前の中学生の時に読んでいますが、その時には陰鬱なイメージだけでさほどの傑作とは思いませんでしたが、かつて日本では江戸川乱歩が激賞したこともあり、ベスト10級のミステリとしての評価がありましたが、現在ではほぼ忘れられた作品となっていますし、本国イギリスでも作者のフィルポッツが自身の娘への性的虐待が明らかになったことで評価を下げて、現在では見向きもされない作家に成り下がっています。
私は今回メルカリで50年前に読んだと同じ宇野利泰訳を入手しましたが、現在では同じ創元推理文庫から新訳で出版されています。
表紙にジョニー・ペンディーンのイラストが描かれています。
作品のレビューは後日に譲りますが、少年期に陰鬱だと感じた内容も、陰鬱な人生の老年期に入ってから読むと、どこかしみじみと味わいがあることに気付かされます❣️


