1974年のアメリカ、ディープ・サウス。 アトランタ市
3ヶ月の間に4人の警官がひざまづいた処刑姿勢で殺された。叔父と兄も警官である女性警官マギーは、5人目の被害者は、兄の相棒(バディ)で、兄もその場にいたことを知り愕然とする。
その日から勤務についた新人のケイトを相棒に、マギーは独自の捜査を開始する。
アトランタ・シューターと呼称される犯人は誰か?差別と汚職と暴力が支配する街で2人はひたすらタフへの道を疾走し続ける。
ヴェトナム戦争、かたくなな人種差別、女性差別、同性愛差別、貧困、と、全米でもワーストの犯罪率の高さ。レイプ、セクハラ、パワハラ。
ありったけの社会病理が凝縮された街で、
タフガイとタフガール達の戦いがこれでもかとばかりに繰り広げられる。
主人公のマギーは、女性を認めない警察機構の中で、子羊ちゃんと初日からあだ名かつくケイトも、ブロンドの美貌と、ハイソサエティ市民としてさらにオランダ系ユダヤ人という出自ゆえに差別される側でもある。
女性作者による女性を主人公とする小説だが、先日読んだミネット・ウォルターズの「蛇の形」が暗い沼の底に引きずり込まれるような(河童か⁈)雰囲気を湛えているのに対し、アトランタのオンナたちはどこか明るい。そしてタフである。まさにスカーレット・オハラ(風と共に去りぬのヒロイン)を思わせる力強さだ!
これが日本を舞台にしていたら、タフガイたちも、皆、瀬川丑松(破戒の主人公)のようになってしまうだろう。
南部アメリカという土地柄がもたらす作用であろうか?
最初は悪意を持って描かれていたベテラン女性警官も、娼婦やポン引きといったサブキャラたちにも愛着を覚える。
しかし、時代は1974年である。私達も同時代を生きていた頃だ。
日本ではオイルショックはあったものの、それまで続いた高度成長の余韻に浸っており、特に北海道は、その2年前に札幌オリンピックを開催しており、高揚感のピークにあったといっていい。
遥か離れたアメリカの都市では、同じ時を共有してはいないことなんかまったく知りませんでした。
そのアトランタも、1996年にはオリンピック開催都市の栄誉に浴し、一気に国際化が進んたが、どこまでその社会意識が変化したかはわからない。
ともかく、令和になってから読んだ本ではダントツでベストであった。
K onstanzeさん、傑作でしたぜよ!