妄想族ですが何か?
ちょっと古い記事ですが、私が愛読するHODINKEEで面白い記事がありました。Watch Collection Fantasy Draft 2019 という記事です。
何の話かっていうと、いい大人が理想の時計コレクションを妄想しているだけです。
他人からは冷ややかな目で見られる事うけあいですが、こんな安上がりで楽しい遊びはありません。やってみましょう。
HODINKEEではカテゴリ毎に一人あたり計6本の理想のラインナップを紹介していました。カテゴリは以下の通りです。
1. Modern Sports Watch
2. Modern Dress Watch
3. Vintage Sports Watch
4. Vintage Dress Watch
5. High Complication
6. Flex
モダンとヴィンテージの明確な線引きは示されていませんので、便宜的に25年(1994年)以上前のものをヴィンテージとしましょう。
Flexは自由型(制限なし)という事で良いと思います。
1. Modern Sports Watch
Aquanaut (Ref 5165A) / PATEK PHILIPPE
Ref:5165A-001
ケース径:38.0mmケース厚:8.50mm
重量:-
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:サファイア・クリスタル
ベルト素材:ラバー
バックル:バタフライ式Dバックル
防水性:120m
価格:1,640,000円(税抜 定価)
私が一番欲しいスポーツウォッチは正直これです。はい、メジャー過ぎてすみません。でもこれは結構レアなんですよ。
現行のRef 5167は40mm径ですが、このRef 5165は38mmというサイズのモデルです。やはりサイズとしてはこれくらいが心地良いです。
しかしこのモデルは短命に終わったため、非常にレアです。そこに近年の時計バブルも加わって、実勢価格は470万円などというた狂気の価格になっています。
数年前は中古品ならほぼ定価通りで売っていた事を考えると、いかに今のバブルが異常か分かるでしょう。
2. Modern Dress Watch
Crash Reissue / CARTIER
Ref:WGCH0006
ケース径:41.9 x 23.3mm
ケース径:41.9 x 23.3mm
ケース厚:-
重量:-
ケース素材:イエローゴールド
風防:-
裏蓋:イエローゴールド
ベルト素材:レザー
バックル:三つ折式Dバックル
防水性:-
価格:€27,000.-
やはりドレスウォッチならクラッシュです。2針の小さな手巻きの機械が入っているだけですが、そんな事は関係ありません。このデザインだけで十二分に価値がある時計です。
オリジナルの1967年モデルは見つける事さえ困難であり、真作の入手方法は本域のオークションしかないでしょう。
ですが実は今年から、ロンドンのボンド・ストリート店限定で、月一本の受注生産という形でクラッシュは復活しています。
価格は€27,000.- 高いと思うか安いと思うかは人によるでしょうけど、個人的には全然ありです。
3. Vintage Sports Watch
Reverso / JAEGER-LECOULTRE
Ref:-
ケース径:38.0 x 23.0mmケース厚:-
重量:-
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:プレキシガラス
裏蓋:ステンレス・スティール
ベルト素材:レザー
バックル:ピンバックル
防水性:-
価格:実勢30-100万円
スポーツウォッチ枠にレベルソを持って来る事に文句を言われる筋合いはありません。ポロ用に開発された時計なんですから、その出自は紛れもなくスポーツウォッチです。
手巻きの機械、控えめなサイズ、アール・デコ・デザインなど完璧なパッケージです
理想のラインナップからJLCやレベルソの名を外せる訳もありません。これは必修科目です。
4. Vintage Dress Watch
Golden Ellipse / PATEK PHILIPPE
Ref:3546
ケース径:34.7 x 26.9mmケース厚:6.1mm
重量:-
ケース素材:ホワイトゴールド
風防:ミネラルガラス
裏蓋:ホワイトゴールド
ベルト素材:アリゲーター・レザー
バックル:ピンバックル
防水性:非防水
価格:実勢100万円〜
悩んだ挙句ヴィンテージドレス枠もパテックになってしまいました。
いつかお話ししたと思いますが、私はゴールデンエリプスを時計界のモナリザだと評価しています。
天才レオナルド・ダ・ヴィンチが黄金比を駆使して描いた世界で最も有名な女性とゴールデンエリプスには共に、見れば見るほど惹き込まれる、奇妙なまでの引力があります。
歴史あるコレクションの中でも特に私は足付きと呼ばれるラグ付きのシルエットが非常に美しいと思います。
中でも1970年代に登場したRef 3546の美しさはまさに黄金比が見せる魔法です。
5. High Complication
Cintree Curvex Perpetual Calendar Minute Repeater (1994) / FRANCK MULLER
Ref:2851RMQP O4N
ケース径:45.0 x 30.0mm
ケース径:45.0 x 30.0mm
ケース厚:-
重量:-
ケース素材:シャンパンゴールド
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:サファイア・クリスタル
ベルト素材:シャンパンゴールド
バックル:バタフライ式Dバックル
防水性:非防水
価格:実勢20,000,000円程度
コンプリケーションと言われても選択肢がありすぎなんですが、他とのバランスを考えるとトノーケースは必要です。
となれば私の中では、自社製ムーブメントなら文句も出ないフランク・ミュラーしかありません。
今や隆盛を極める独立時計師ブランドですが、その草分け的存在であるフランク・ミュラーに対する時計マニアの評価が不当に低い気がしてなりません。
このモデルは最初期のフランク・ミュラー氏が作り上げた永久カレンダーとミニッツ・リピーター搭載のCal RM75を積んでいます。
しかも2851ケースと呼ばれる非常にコンパクトで美しいケースにこの複雑機構が収まっているのが素晴らしいです。
RM75は機械の仕上げも見事で、シースルーバックからその姿を鑑賞する事も出来、これぞフランク・ミュラーの真髄だと思える一本です。
値段高すぎるけど。。
6. Flex
叡智 / CREDOR
Ref:GBLR999
ケース径:35.0mmケース厚:9.70mm
重量:-
ケース素材:プラチナ
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:サファイア・クリスタル
ベルト素材:アリゲーター・レザー
バックル:ピンバックル
防水性:3気圧(30m)
価格:5,500,000円(税抜)
フィリップ・デュフォーのシンプリシティと迷いますが、やっぱり初代叡智は最高です。
35mmという適切なサイズのプラチナケース、ノリタケ製の磁器ダイアル、デュフォーも認めたCal 7R08の超絶仕上げ、非の打ち所がありません。
スプリングドライブは本来守備範囲外なのですが、それを差し引いても素晴らしい時計です。純粋な機械式じゃないので、この枠に。
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この5本を選ぶのは実は相当苦労して、今回の記事は何度も書き直しました。
5本しか選ばないのにパテック2本っていうのが忸怩(じくじ)たる思いなんですが、ゴールデンエリプスは外せませんし、現代のスポーツウォッチはやはり大きすぎます。
一方でケース形状を全て違う物に出来た点は満足しています。そのために妥協したというモデルも無いのでスッキリしました。
金銭的にこれを揃えるのは不可能ですし、雨の日に使えるのがアクアノートしか無いというあり得ないラインナップですけど、まあファンタジーですから笑
そう考えると1. Modern Sports Watch は素直にエクスプローラー(36mmのRef 114270)にすべきだったかなと思いつつ、それは流石にMinority’s Choice じゃないだろう、と思った次第です。
時計メディア業界の大物、広田雅将氏が以前ツイッターで、「5本のコレクションを見ればその人の人となりが大体わかる」みたいなことを仰っていましたが、この5本だと何を思われるのだろう。
皆さんも暇だったらこの5本考えてみてください。自分の嗜好があぶり出されてきてなかなか面白いですよ。