その手にラグジュアリーを

<Overseas / Vacheron Constantin>

出典:www.vacheron-constantin.com


Affordable (手の届く)ラグスポって、そもそも表現自体が矛盾していますが、ラグスポっぽい何かを求める気持ちのある人は少なくないでしょう。

本題に入る前に、ラグジュアリー・スポーツとは何かをおさらいしておきましょう。

読んで字のごとく、ラグジュアリーなスポーツタイプの腕時計の事です。狭義にはホーリートリニティの、ノーチラス(パテック・フィリップ)、ロイヤルオーク(オーデマ・ピゲ)、オーバーシーズ(ヴァシュロン ・コンスタンタン)を指します。

広義には、これらに近しいハイブランドのスポーツモデルも含むでしょう。マリーン(ブレゲ)、ポロS(ピアジェ)、ロレアート(ジラール・ペルゴ)、セブンティーズ(グラスヒュッテ・オリジナル)などがその例でしょうか。

<Marine 5517TI/G2/TZO / BREGUET>

個人的にはエレガントな3針SSモデルがベースになるコレクションだと考えているので、高級機であっても明らかにダイバーズのフィフティ・ファゾムス(プランパン)や、レーシング・クロノグラフのデイトナ(ロレックス)とかはラグスポではないと思います。

価格も定価100万円以上というイメージです。3針SSモデルを100万円以上で売りに出せるというのはやはり一流ブランドにしか出来ませんし、それがラグジュアリーたる所以であるはずです。

別の言い方をすれば実用時計の頂点に位置するモデルという事だと思います。やはりSSモデルは使いやすいですし、ラグスポは多くが10気圧防水くらいの機能は備えており、幅広いシーンで活躍する高級機と言えるでしょう。

ではアフォーダブル・ラグスポとは何か?というと、上記において価格だけは抑えられているものという事になります。

要は、エレガンススポーティさを兼ね備えたデザインのSSモデルという事ですね。


AIKON Automatic 39mm / MAURICE LACROIX 


RefAI6007-SS002-430-1
ケース径:39.0mm
ケース厚:11.0mm
重量:-
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:サファイア・クリスタル
ベルト素材:ステンレス・スティール
バックル:バタフライ式Dバックル
防水性:200m
価格:195,000円(税抜)

#46でクロノグラフを取り上げましたが、アイコン3針の方が遥かに出来が良いです。昨年発売した42mmが人気を博すと、すかさず今年は39mmモデルを投入。

これは更なるヒットの予感です。特に日本人の体格を考えれば39mmのスポーツタイプはベストです。かつ11mmに抑えられた厚みも申し分ありません。

アイコンはケースの仕上げとダイアルのクル・ド・パリ装飾の出来が非常に良く、定価で20万円を切る事を考えると驚くべきバリューです。

ロイヤルオークそっくり疑惑については、10倍以上の価格差がある時点で、アイコンがロイヤルオークの代替にはなり得ないですし、客層も完全に違うはずですから、気にする事はありません。

それに良く見ればアイコンはより若々しいデザインで、今や昭和の香り漂うロイヤルオークとはかなりキャラクターが異なります。

しっかり筋目の入ったサテン仕上げのラグレスケースに、ポリッシュ仕上げの爪を6箇所に配したラウンドベゼルが特徴的なデザインで、よく見れば言うほどロイヤルオークっぽくもありません。

ダイアルもバー・インデックスバーハンズのシンプルな構成なので、余白の少ない39mmケースの方が締まって見えます。

<42mmモデルに搭載されるML115>
型番:ML115
ベース:セリタ SW200
巻上方式:自動巻
直径:25.6mm
厚さ:4.60mm
振動:28,800vph
石数:26石
機能:センター3針デイト
精度:-
PR:38時間

この価格ですから当然ムーブメントはエボーシュです。SW200であれば、 ラグジュアリーさは一切ありませんが、信頼性やメンテナンスに関して心配ありません。

外装に全力投球しているアイコンですから、機械については無難なチョイスで問題ないでしょう。

とは言えリューズの操作感などはしっかり味付けされており、手巻きの際の細かくクリック感のある調整は中々好みです。

SSケースにブレスレットで、200m防水まで備えていますから、使い勝手は非常によく、この出来で20万円という価格なら間違いなくバリューは高いといえるでしょう。

確かに最近スウォッチ、リシュモンは次々と低価格帯の高性能ムーブメントを投入しており、30万円以下のレンジの競争は激化しています。

しかしその中でも、ラグスポ風というキャラクターと外装の良さを武器にして十分ヒット作となる可能性を持つ良作であると思います。

若年層にも手に出やすいミドルクラスで勢いのある新作が登場するというのは業界の未来を占う上でも明るい材料ですから、このアイコン39でモーリス・ラクロアには一層の飛躍を期待しています。

出典:www.powerwatch.jp


Sports Classic Automatic / EBEL
出典:www.ebel.com

Ref:1216431A
ケース径:40.0mm
ケース厚:8.65mm
重量:-
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:サファイア・クリスタル
ベルト素材:ステンレス・スティール
バックル:バタフライ式Dバックル
防水性:5気圧(50m)
価格:$ 2,550.

Minority’s Choice イチ推しのエベル。前回(#51参照)のウェーブよりさらにスポーツテイストが増した、スポーツ・クラシックです。

ベゼルに6角形を象るように5つのビスが打たれたデザイン(6つ目はリューズ位置なのでオミット)が大きな特徴です。

ウェーブと比較するとエディ・ショッフェル氏のオリジナルデザインにより忠実な形のヘキサゴナル・ケースを採用しています。

またブレスレットは蛇腹状の特徴的なリンクで、ケース形状と共に唯一無二の主張がある非常に美しい時計です。言うまでもなくMinority’s Choice はこの時計が大好き。

なぜ国内に全く存在しないのか不思議でなりません(エベルの取扱店舗自体は複数あるが、メンズの機械式の扱いはほぼなく、このモデルはいくら探しても国内在庫は出てこないです)。

<Cal 2892-A2 / ETA>


出典:www.eta.ch

型番:ETA 2892-A2
ベース:-
巻上方式:自動巻
直径:25.6mm
厚さ:3.60mm
振動:28,800vph
石数:21石
機能:センター3針デイト
精度:-
PR:42時間

スペックにもある通り、このスポーツ・クラシックウェーブの上位機種と呼べそうです。なにせ薄さが僅かに8.65mmというエレガントな佇まい。

これは自動巻のブレゲ・クラシック(8.8mm)より薄く、スポーティモデルとしては相当なスリムさです。これより薄いラグスポなんて、ノーチラス(8.3mm)ロイヤルオーク・エクストラシン(8.1mm)、オーバーシーズ・エクストラフラット(7.5mm、WG製)くらいですからね。

通常盤というべきロイヤルオーク・オートマティックオーバーシーズも10mm越えですから、いかにスポーツ・クラシックが薄く美しい時計かお分り頂けるでしょう。

それを可能にしているには、ETAが誇る3針上位機種2892-A2です。色んなキャリバーを見れば見るほど、この厚さ3.6mmのエボーシュの有能さを思い知らされます。

出典:www.ebel.com

日本未入荷で定価は$2,550(約28万円)、ウェーブ($2,400 → 30万円)との定価差を考えると、国内正規価格は32万円位でしょうか(もし入ってきたら)。

いや、全然アリでしょ。

確かにアイコンの方が安いですし、デザインも一般には受けるのかも知れませんが、Minority’s Choice としては断然エベル推しであります。

国内に(多分)全くないというのが、ますます所有欲を掻き立てますよね。

一度でいいから腕に乗せてみたいです。いや、清水の舞台から飛び降りるつもりで、ネット通販で注文する可能性すらゼロではないと思っています。

出典:www.ebel.com


Newport Automatic / MICHEL HERBELIN

Ref:1668/G14CB
ケース径:41.0mm
ケース厚:10.2mm
重量:-
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:サファイア・クリスタル
ベルト素材:ラバー
バックル:バタフライ式Dバックル
防水性:30気圧(300m)
価格:198,000円(税抜)

今日は最後にもう一つ。ミシェル・エルブランというフレンチ・メゾンからニューポートです。

ミシェル・エルブランはスイスと国境を接するフランスの街、シャルクモンで1947年に創業した比較的新しいメゾンです。

クォーツ、機械式共にラインナップし、その審美性の高いデザインが好評を博し、フランスでは800店舗を展開するほど有名なブランドです。

その彼らのメンズコレクションのフラッグシップがニューポート。まず目を惹くのはセンターラグを採用したエレガントなシルエットです。

レディースラインではよく見かけるセンターラグですがメンズラインでの採用は稀です。ラウンドシェイプが強調され、上品さが漂うスタイルですね。


系統的には現行のブレゲ・マリーンを彷彿とさせるデザインで、まさにラグジュアリー・スポーツの雰囲気を持っていると思います。

このモデルはニューポート誕生30周年記念モデルで、ケースはグレーアンスラサイトPVD加工によってガングレーメタリック風に仕上げ、ダイアルにはカーボンを使用するなど、通常盤よりスポーティなデザインとなっています。

バーインデックスとバーハンズは統一されたデザインとなっており、まるでヨットの舵のような意匠です。

サイズに関しては直径は41mmとやや大きめですが、厚さは10.2mmと抑えられており、取り回しにも優れています。


型番:ETA 2824-2
ベース:-
巻上方式:自動巻
直径:25.6mm
厚さ:4.60mm
振動:28,800vph
石数:25石
機能:センター3針デイト
精度:-
PR:42時間

ミシェル・エルブランは機械式に関してはエボーシュを使い、ニューポートにはETA 2824が積まれています。

特筆すべき性能はありませんが、信頼性の高いムーブメントですし、メンテナンスに困ることもないでしょう。

裏スケから覗くムーブメントはローターにブランド名が刻印されており、青ネジなども見えます。豪華絢爛な装飾ではありませんが、価格を考えれば妥当でしょう。

この出来栄えで20万円という価格は中々魅力的だと思います。特にセンターラグのスポーティ・ウォッチという個性はマリーン以外にそうそう無いですから、それだけでも価値があります。

このアニバーサリーモデルは500本限定で昨年発売されましたが、まだ国内にも在庫はありそうです。ラバーストラップの他にカーフレザーストラップも付属するのでお得感があります。



***
今回はエボーシュベースのラグジュアリー・スポーツ風モデルをご紹介しました。いずれもデザインに優れ、扱いやすいサイズと高い実用性を備えつつ、実売20万円前後の非常にバランスの良い時計です。

いずれも一般的なブランドの知名度は殆どないとは思いますが、その分巨額の広告宣伝費が価格に反映されているという事もありません。そういう意味では質の高い時計をリーズナブルに提供してくれる良心的なブランドと言えるでしょう。

アイコンはすでに結構有名かも知れませんが、スポーツ・クラシックニューポートなんてのは時計好きでないとそもそも存在を知りません。しかしその知る人ぞ知る感がまた良かったりしませんか?

この価格帯のブランドが元気になれば、それは機械式時計の裾野拡大を意味しますので、非常に重要な意味を持ちます。

タグホイヤーリンクなんかもこのカテゴリに入ってくると思いますけど、選択肢が増えて20-30代の若い機械式腕時計愛好家が増えることを望んでやみません。