福島の避難基準はチェルノブイリの4倍というデマ | 岐路に立つ日本を考える

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 私は日本を世界に誇ることのできる素晴らしい国だと思っていますが、残念ながらこの思いはまだ多くの国民の共通の考えとはなっていないようです。
 日本の抱えている問題について自分なりの見解を表明しながら、この思いを広げていきたいと思っています。


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 福島の避難地域の基準はチェルノブイリよりも4倍も甘く設定されているという話が広く流布しています。チェルノブイリの避難基準は年間5mSvであるのに対して、日本は20mSvになっているから、日本政府は国民の安全をまじめに考えていないという話です。


 常識的に考えてそんなわけはないだろうと思いながらも、この基準のことについてはずっと放置していたので、今回の「美味しんぼ」騒動を契機にして実際に調べてみることにしました。井戸川前双葉町長もこの話をよく持ち出すようで、ロシアの24時間英語チャンネルのRTに出演した際にも、この話を持出していました。(8分11秒あたりからです。この箇所については、日本語字幕は残念ながらありません。)


 調べてみてわかったのは、この年間5mSvというチェルノブイリの避難基準は事故後5年経過した後の基準でしかありません。チェルノブイリの事故1年目の避難基準は100mSv、2年目の基準は30mSv、3年目・4年目は20mSv、5年目で5mSvとなりました。日本の基準は1年目から20mSvですから、チェルノブイリより4倍甘かったのではなく、チェルノブイリより5倍厳しかったというのが実際というわけです。(以下の画像をクリックしてみてください。図が拡大してみやすくなります。)

チェルノブイリと福島の避難基準

 ついでに付け加えておくと、食品に関する規制についても、福島の方がチェルノブイリよりも遥かに厳しかったのが実際です。(以下の画像をクリックしてみてください。図が拡大してみやすくなります。)

食品規制

 そもそも放射線のリスクについて、非常に過大に評価されていると考えるべきです。国立がん研究センターが出している「わかりやすい放射線とがんのリスク」には、以下のような表が記載されています。(以下の画像をクリックしてみてください。図が拡大してみやすくなります。)

わかりやすい放射線とがんのリスク

 これを見れば、毎日2合の飲酒を行っている場合の発癌リスク上昇率と1000mSvから2000mSvの放射線を浴びた場合の発癌リスク上昇率が同程度であり、100mSvから200mSvの放射線を浴びた場合の発癌リスク上昇率にしても野菜不足の上昇率ほどしかないことがわかります。このようなことを見ていくと、いかに放射能に関する恐怖というものが誇張して広まっているかがわかります。

 こうした事実を見ていくと、福島県で実施されたあれほど広範囲の移住は果たして必要であったのかという疑いを持たずにはいられません。年間20mSvなど、もはや発癌の影響すらまったくわからないレベルの放射線量ですが、そうであるにも関わらず強制移住をさせられたのが実際だと知らされたら、住民の方々は逆に怒りに駆られるのではないでしょうか。

 実際、福島の事故後より遥かに緩かったチェルノブイリ事故後の避難基準に関しても、IAEAは「チェルノブイリ・プロジェクト」(1991年)の中で、以下のように記述しています。

 長期にわたって実施、若しくは計画された防護措置は、善意に基づくものではあったが、一般に、放射線防護の観点から考えると厳密に必要であったであろうと考えられる範囲を超えている。移住と食料制限は範囲をもっと小さくする必要があった。

 世界銀行の「ベラルーシ:チェルノブイリ事故レビュー」(2002年)においても、「人々は移転により、慣れ親しんだ村の生活環境から新しい都市の生活環境に適応せざるを得なかった。これにより、社会的緊張が生じ、人々のストレスも増加した。その結果、多くの人々がふるさとへの帰還を希望したことは当然のことであった。」と記されています。

 ウクライナ大統領直轄戦略研究所のナスヴィット首席専門官は、日・ウクライナ原発事故後協力合同委員会(2012年)において、「チェルノブイリの経験からいえば、モニタリングの結果として一番不幸と感じている方々は、「何かを強制的にさせられた人たち」である。そのため、自分の家の外に強制的に住まわせることが最も負の影を与える点を強調したい。」と述べています。

 そしてこの過大な恐怖感をベースにして、国内の原発が全て停止され、電力料金が大幅に上昇するとともに、年間で4兆円程度の貿易収支の悪化要因となっているというのは、まじめに考えればばかばかしすぎる話ではないかと思います。

 メディアの歪んだ報道に問題の根源があるのは言うまでもありません。ですが、こうした事実ベースの話をしっかりと国民に語って聞かせて正しい方向に国民を導くのが政府の役割であるはずなのに、日本国政府はそれを怠って「空気」に流された政治を行ってきたといえないでしょうか。波風を立てずに「無難」にやりすごすというやり方が、南京大虐殺にせよ従軍慰安婦にせよこの原発の問題にせよ、常に国益を損なう方向に国を導いてきたという事実に、いい加減正面から向き合うことを日本政府には求めたいところです。

 なお上記記載事実については、経済産業省の以下のページをご覧下さい。
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/130314_01a.pdf#search='チェルノブイリ+経済産業省+シーベルト



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