IMFが緊縮策の過ちを認めた! | 岐路に立つ日本を考える

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 私は日本を世界に誇ることのできる素晴らしい国だと思っていますが、残念ながらこの思いはまだ多くの国民の共通の考えとはなっていないようです。
 日本の抱えている問題について自分なりの見解を表明しながら、この思いを広げていきたいと思っています。


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 ロイター通信の日本語版に「焦点:IMFが緊縮一辺倒の過ち認める、遅すぎた方向転換」との記事が出ました。厳しい財政緊縮策による経済への打撃が、IMFがもともと想定していた規模の3倍に及ぶ可能性があるとの調査報告書をまとめたのです。(なお国内主要紙では朝日新聞だけがこのロイターの記事を掲載しています。)

 このロイターの記事には様々な国の実例が列挙されています。

 まずはインドネシアです。

 インドネシアはアジア金融危機が勃発した1997年に100億ドルのIMF融資に調印し、財政支出削減、増税、銀行閉鎖、引き締め的な金融政策といった経済プログラムに着手した。IMFは、これらを実施すれば景気の悪化を抑制できると主張していた。インドネシア経済は結局、98年に13%ものマイナス成長に陥り、IMFの予想した3%のプラス成長とは程遠い結果になった。

 次に韓国です。

 韓国は1997年にIMFから210億ドルの融資枠を与えられ、成長率が97年の5.7%から98年には3%に減速することを前提とした改革プログラムに合意した。実際には韓国経済は98年に6%近くのマイナス成長に陥った。97年のIMFとの交渉で韓国代表団を率いた鄭徳亀氏は、IMFは通貨危機の診断を誤り、財政政策の問題だとして間違った改革案を処方したと指摘。「すっかり手遅れになってから消防団が到着したが、十分な水を積んでおらず火事の性質も正確に把握していなかったようなものだ。その結果、火事はますます大きくなった」と話した。

 そして、IMFの緊縮方針に背を向けた改革を実行したボリビアの例も引用します。

 ボリビアのアルセ経済・財務相は、IMFが他の国々で失敗を犯したのを見たため、ボリビア政府はIMFの勧告を無視することを決めたと説明。IMFの勧告と正反対の政策を実施したことにより、2005年に38%を超えていた貧困率を11年には24%強に抑え、一人当たり国内総生産(GDP)はこの間に倍増したと述べた。

 さて、インドネシアや韓国に対する融資は10年以上前のことです。IMFのプログラムの妥当性は、その当時にすでに明らかになっていたはずです。それなのに、こうしたプログラムに関する過ちに、どうしてIMFは最近まで気がつかなかったと言っているのでしょうか。

 この問題を考える際にヒントとなるのが、歴代のIMFの専務理事(IMFのトップ)の出身国です。正式な理事は初代専務理事から現在の第11代専務理事のラガルド女史まで、11人全員が欧州勢です。(欠員による代行で2~3ヶ月間だけ米国人がなっていることが2回ありますが、それを除けば全員欧州勢です。)実は世界銀行の総裁はアメリカが決め、IMFの専務理事は欧州が決めるという「棲み分け」が成立してきたのです。

 そして今、このIMFのお膝元である欧州でとてつもない事態が進行しているのは、皆さんご承知のところです。南欧の各国で緊縮策を求められているのは、欧州で最も経済力のあるドイツにとって利益があり、ドイツに逆らいにくい状態になっているという事情もありますが、 IMFとしても従来とのダブルスタンダードを指摘されないために、緊縮を求める方針を継続してきたのでしょう。ですが、この方針ではもはや欧州を守ることができなくなってきたので、過去の過ちを認める方針に転換したのではないかと思います。ノーベル平和賞にEUが選ばれたことも、欧州が現在の危機を軟着陸させるのに必死であることを示しているように感じられます。

 このIMFの方針転換は、レーガン・サッチャー時代から急激に進んできた新自由主義的な流れが、世界的に転換点に達したことを如実に物語るマイルストーンにもなっていると思います。(このあたりの詳細は次回に書きます。)

 ともあれ、IMFの方針転換は、緊縮一辺倒が当たり前とされてきた日本の経済政策を打開するのにも、好ましい影響を与えるものになりうると思います。このIMFの方針転換を、日本の経済政策を変える力にしたいと考えられる方は、クリックをお願いいたします。


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