土曜日。
直訴の土曜日。
割りばしに「直訴」と紙を挟んで
ドクターに差し出そうかしら。
退院前提で荷物も片づけ始める。
私はいつでも出られますアピール。
主治医の回診
いつもよりとびきりのスマイルで
体調良好アピール。
「じゃあ、退院は月曜日ね」
すかさず私、
「土曜日！」
とかぶせる。
「月曜日。何もないんだよ、ないんだけど、ごめん、様子みさせて」
と去っていった。
荒野を風が吹き抜けた。
カラカラと音を立て、空き缶が転がっていく
まさにその時の心象風景。
家族と会社にお詫びの電話。
ごめんなさい、土曜日退院できず直訴失敗、すみません！！
特に怒り心頭はこども。
この週末、退院した私と遊ぶのを楽しみに
この一週間我慢してくれた
「お母さんの嘘つき！」
「早く会いたい！」
とメッセージが次々と入る
ごめん、病院以外ではたいていのことお母さんは一人で決めてるけど
ここでは自分の思う通りにはいかないのよ。
許せ、こどもよ。
午後、知床遊覧船が行方不明になったとニュースを見る。
この時期、行く？
もし私のお客様が知床行きたいって相談にきても
他の季節を勧めるよ。
やはり、食べ物と一緒で、旅行にだって旬がある。
タダで行くわけではないのだから
コストに見合った旅をおすすめしたい。
そもそも出航させてしまった船舶会社の判断が疑問だけど
もし乗客の方が旅行会社経由で申し込んだ方がいるのであれば
どのようなアドバイスをしたのだろうかと思う。
いろいろなご事情があって乗船されているのだろうから
下手なことは言えないが、私はおすすめしない季節だったということ。
退院が決まれば、残された時間を満喫するのみ
頭切り替えて、残り少ない病院暮らしをたのしむとするか。