花火
立原あゆみ
秋田書店 ヤングチャンピオンコミックス
全1巻
発行日 1992/7/15

女と酒を呑んでいて絡まれた天。あわや喧嘩に、という所で「その喧嘩、買ってやる。表へ出ろ」と現れた初老の男が、たった一人で組を張る日輪だった。


自分はヤクザ、相手は堅気。堅気に殴られるのもヤクザの役目と、「気がすむまで殴れ」という日輪に天は惚れる。


天はヤンチャな性格が災いして、その時、職を失っていた。幸い、新たに個人経営のパン屋の店員になることができたが、店主がうっかり知人の保証人になったために、阿漕な借金取り立てにあっていた。金がないなら店を寄越せと凄む連中に、天は日輪組の組員を名乗って守ろうとするが、逆にやられてしまう。


先日の呑み屋の一件を日輪親分も覚えていてとりなしてもらえたが、これらのことから天は日輪組の組員になる。


天の住む小さな漁業の町は、おりしも原発新設の候補地となっていた。安全性に不安を口にする者もいれば、補償金ほか様々な利権に目が眩む人もいる。そして、日輪の親分は、原発説明会を穏便に進めるための仕事をして欲しいと、町の有力者か、依頼を受けた。


簡単に言えば、説明会で騒ぎを起こそうとしている反対派の排除である。

「全ては住民のみなさんが決めること。我々は説明会を静かに聴いてもらうようお願いをするだけ」


親分の心は波静かに見受けられるが、様々な思惑がみんなの心の中には渦巻き始めていた。

 

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