3/18「日本の話芸」 柳家小三治「かんしゃく」
3/18に放送されたNHK教育「日本の話芸」を見る。
演目は柳家小三治「かんしゃく」。
「かんしゃく」は小三治師の十八番。
と、いうか現在の高座で小三治師以外で「かんしゃく」を聞いたことがないから、
今や小三治師以外「かんしゃく」を演じる人間はいないのではないだろうか。
少なくとも私はない。
誰か他の人が演じていたなら教えて欲しいくらい。
この全編、主人公がただひたすら怒りっぱなしの「かんしゃく」。
難しい演目だと思います。
だってひたすら怒っているのを観客は聞かなくちゃいけないんですよ。
気分が落ち込んでいたら余計ヘコみそうですもの!
主人公がひたすら怒っている姿を見て、小言を聞いて、
それで観客は笑わなくちゃいけないんだから
怒る“姿”“言動”にどこか愛嬌がなければ笑えないし、
怒りがストレートに出ようものならとても聞くに耐えない噺になってしまうでしょう。
やはり飄々としたフラが持ち味の小三治師だからこそ演じられる演目なんでしょうなぁ。
で、この「かんしゃく」を昔の名人たちが演じていたかというと、これもほとんどいない。
小三治の師匠、5代目柳家小さんはおろか志ん生、円生、正蔵みんな演じていない。
この噺を唯一十八番にしていたのが8代目桂文楽ただひとりであります。
あの寸分の狂いもない完璧な高座の桂文楽の十八番が「かんしゃく」。
対して現在の「かんしゃく」の演者は、
高座がマクラで終わってしまうほど日によって高座が変わる柳家小三治。
この2人を「かんしゃく」を通して隣に並べてみても一見共通点がすぐには見つからない。
しかしそれぞれの十八番を並べて見ると…
桂文楽 愛宕山→(幇間の噺)→鰻の幇間→(小言)→寝床→かんしゃく
柳家小三治 たらちね→(横丁のご隠居さん)→小言念仏→(小言)→寝床→かんしゃく
と【小言】というキーワードあたりから「寝床」を経由して「かんしゃく」に結びつくのであります。
つまり芸風こそ違えども両師とも【小言】をキーワードにした噺を得意としているのでありますね。
きっと高座を離れた場でも両師は【小言】が多い(多かった)のでしょう…って憶測ですが!
でも「小言が多い」っていうのを自分で自覚してなければ、
高座で小言を言ってもそれは【説教】に聞こえて嫌味な高座になってしまうことでしょう。
【小言】をいう姿に前述の通り【愛嬌】が見えて、
どこかに【微笑ましさ】すら見えなければ観客は笑えないのですから
「かんしゃく」でしっかりと観客を笑わすのは、
やはり立派な【芸】の持ち主じゃなければダメなんでしょうね。
しかし「かんしゃく」を十八番にしたら、きっと演じていて気持ちいいでしょうね。
思いっきり怒って、小言を言って、しっかりと観客は笑ってくれる。
こんな気分すっきりの演目って他にないんじゃないかなぁ。
「日本の話芸」での柳家小三治師のどこか溌剌とした表情が非常に印象的でした。
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