「芸術祭十月大歌舞伎【昼の部】」(下) | こだわりの館blog版
2005-10-10 00:58:32

「芸術祭十月大歌舞伎【昼の部】」(下)

テーマ:伝統芸能

芸術祭十月大歌舞伎

10/9 東銀座・歌舞伎座にて

尾上菊五郎と菊之助
親子として、また大先輩と花形としての火花散る名共演。


昨日の続き


『加賀見山旧錦絵』は、前回より今回鑑賞した方が断然おもしろく感じましたね。
それは、お初役に尾上菊之助という今上り調子の“花形”を起用した事と、
菊之助の父である人間国宝・尾上菊五郎が初役で局岩藤に挑戦した事、
この2点に尽きると思います。


尾上菊之助はこんなにうまい役者だったか、と久々に見てびっくりさせられました。
7月の蜷川幸雄演出の「十二夜」は未見でしたが、
この公演の主役をはって連日満員御礼にしたことで、すっかり役者として自信がついたのでしょう。
役者は襲名などある時を境に【化ける】と言いますが、
菊之助はまさに今【その時】なのかも知れません。

とにかく初役にもかかわらず怖いもの知らず
広い歌舞伎座の劇場に響き渡るかのような、よく通るその台詞まわしの数々は、
すっかりこの役を自分の役として手中に収めたといった感じです。
なにより菊之助の持つ【若さ】が、このお初という役にぴったりハマっております。
お初の役というと過去の演者を見てみても、どちらかというと花形というよりは、
それよりももうちょっと上の【中堅】あたりが演じているケースが多いんですね。
実際のお初の歳よりもずっと上の役者が演じていますから、
【芸】で【若さ】を見せていたというところでしょうか。
それに比べると菊之助のお初は、
もう【菊之助という役者】が体当たりで諸先輩たちにぶつかっています。
坂東玉三郎には役者としては女形の大先輩として、
また役柄では中老尾上に忠実に仕える召使として、
また父である尾上菊五郎には、役者として大看板に果敢に挑戦し、役柄としては憎っくき仇役として、
お初の背後に【役者・尾上菊之助】が見えてくるかのようなリアルで若々しい役作り、
そこが非常に見る者にはおもしろく、今までにない新鮮なお初に映りました。

対する父・尾上菊五郎も初役で岩藤に挑戦。
今まで1回くらいは岩藤役はやっているだろうと思いましたが、初役とは意外でした。
筋書きを読むと初役の岩藤役で自身が「手いっぱい」で、
とても息子の初役の指導まで「気が回らない」とおどけておりましたが、
その研究の成果(?)が充分に出た、今までにない岩藤でありました。

もともと岩藤役は立ち役の役者が演じることが多く、
これまた過去の演者を見てみても仁左衛門、吉右衛門、團十郎と、
もうこの顔ぶれを見ただけでも役柄が臭ってきそうなくらいですね。
しかしこれらの演者と菊五郎の決定的な違いは、
菊五郎がついこの間まで「お初を演じていた役者であった」という事です。
ついこの間まで菊五郎は「岩藤憎し」と思ってお初を演じていたのですから、
今回岩藤を演じるにあたっての役作りには、
過去の自分が抱いていた“岩藤像”を当てはめればよい訳です。
これは大きなプラスだと思いますね。
ですから菊五郎の岩藤には立ち役が憎々しさを前面に出した一本調子な演じ方とは異なり、
【憎々しさ】の中にどこか【愛嬌】の漂う岩藤なのであります。

「試合の場」で自身の奥女中がことごとくお初に敗れ、
「初、支度しや」と岩藤自身がお初と試合をする事となり、
危うくお初に負けそうになるところを、局という【地位】をふりかざして
お初が怯んだ隙に【反則勝ち】を収める。
明かにズルイ手段を使ったことに後ろめたい気持ちを持っているかと思いきや、
お初を「フンッ!」とばかりに冷笑して引っ込む。
その反省の色ゼロな「フンッ!」の何とも憎々しくて、しかもおかしいこと!
場内大ウケでありました。
芸達者な菊五郎だからこそ出来た、こういう岩藤役の造形なのでしょう。
しかし今までの【硬い岩藤】を見慣れている人たちには
きっと「クダケ過ぎてる」と批判の一つも聞こえてきそうですが、
私にとってはかえって、菊五郎が自分の経験を踏まえた上で作り出した
【新しい岩藤像】として非常におもしろく見る事ができました。

さて中老尾上役の坂東玉三郎についてちょっと触れておきますと、
尾上という役が先ほど書きました通りハラで見せる役どころですから、
今回は菊之助・菊五郎という初役のダブルの“攻撃”を
玉三郎は芸のうえでもひたすらハラで受けておりました。
いつもの華やかな活躍を求めると肩透かしをくいます。
玉三郎ファンとしてはさぞかし物足りなかった事と思いますが、
勝気の強いお初を中老として宥めすかすその姿には、
“役者・菊之助”を見守る女形の大先輩の姿がダブって見えてくるかのようで、
一回りスケールアップした玉三郎の姿を見させていただいた、といった感じですかね。

最後に、奥女中桐島役を見事に演じていた
音羽屋の大番頭・尾上菊十郎の好演を特筆しておきます。
一緒に行った親戚が「あの人うまいね~」と大絶賛しておりましたから!


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