やさぐれPRコンサルタントの広報・コミュニケーション日記

やさぐれPRコンサルタントの広報・コミュニケーション日記

2007年5月に「ココログ」でスタート、幾度かの長期中断を経て復活しました。今度こそ続けたい! 細く長く。。。

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 会社にはさまざまな「バショ」があり、そこにしかるべき「ヒト」がいる。

 

 僕がかつて勤めた会社の「全体会議」では、大テーブルの上座(奥)に社長、役員。下座(手前)に向かって部長、課長など。壁際に並ぶ椅子には係長その他。その位置が地位を表し、発言権の大きさと、その内容の重さを規定する。

 役職定年や定年・再雇用となり、組織上の権力は失ったのに、隠然たる影響力を維持する「オジサン」がいる。ひとまわり以上若い上司はストレスを溜め込む。オジサンが全身から放つ「オレは○○年、ここで仕事をしている。お前らの数倍、経験とノウハウがあるんだ」オーラを前に、言いたいことを言えない。本来は、テクノロジーの急流で溺れかけている彼らから若い世代へと、仕事を継承するのが管理職の仕事だが、それができない。

 

 オジサンが手放さないのは「居場所」だ。オレは○○年ここにいる。だからあと数年、ここにいる権利がある――。居住権みたいなものだ。

 コロナの影響で在宅勤務とビデオ会議が普及した。会社をめぐり多くが変わりつつあるが、もっとも分かりやすい現象が、これら「地理的優位」の消失だろう。

 

 PCのモニターに映る会議参加者の顔は、その大きさも並び順も自由に変えられる。上座も下座もない。かつて、そこに「いる」だけで一定の存在価値を誇示できたのが、会議中に意味と意義のある発言をしなければ、役員だろうが部長だろうが「あの人いたっけ?」扱いになる。

 

 パワポの企画書をこっそり若手に頼み、その代償としてたまに寿司屋でおごることで日々をしのいできたオジサンたちも、その手法が使えなくなった。在宅ではリアルに「何をしたか」が、しかも社長からヒラまで衆目環視下で見定められる。

 

 コロナ後、在宅勤務率が高まるのは当然だし、オフィスの立地も変わるだろう。東京の一等地にバカ高い家賃で広いオフィスを借り、そこにみんなが満員電車で往復するムダとリスクより、都心の本社は大幅縮小して横浜や千葉、大宮などに小さなサテライトオフィスを分散し、在宅をベースに必要に応じて近場のオフィスを活用する・・とか。

 バショの要素が劇的に希薄化したとき、カイシャという社会にどんな化学反応が起こるのか、これほど興味深いテーマはない。

 

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 就活もオンラインが主流になり、企業も学生も戸惑っているという。しかし、これは望ましい変化だ。有力企業が東京に集中する現状で地方の学生がどれほど不利益を被ってきたことか。

 

 多くの企業は面接だグルインだと何度も学生を呼びつけるが、その評価・選考の能力と基準はアマチュアレベルだ。人事部に割り振られた課長クラスが仕事の合間に「にわか面接官」を演じたりする。会社の「採用ポリシー」すら理解していない状態で。

 

 オンラインだと職場の雰囲気が分からない、とも聞く。何度か本社ビルに出向いたくらいで「職場の雰囲気」が分かるなら天才だ。3ヶ月も働いてようやく分かりかける、のが現実だろう。

 

 優秀で有益な人材を獲得したいなら、企業はそのための事業戦略を立てて実施し、レビューする必要がある。それを実施している企業ほど採用活動でのオンライン利用率が高く、今後ますます高めていくだろう。たかだか地理的要因から成功の可能性を捨てる愚を避けるのが合理的な選択だからだ。

 地方や海外で学ぶ学生と首都圏の学生。長く存在した圧倒的な不平等は、大きく改善されるだろう。

 

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 とにかく、僕らがこれまでの人生で拠り所、基準点としてきた物理的、概念的、精神的な「バショ」が希薄化するのは間違いなく、その影響はとてつもなく大きい。