31歳軟弱獣医師の考察 〜猫の慢性腎臓病に対する比較的新しいお薬〜 慢性腎臓病 | 獣医師の動物病院裏ブログ。犬猫さんがモノじゃなくなることを夢みて。

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こんにちは。
35歳、2014年卒、開業7年目の獣医です。
日々の徒然を無責任に綴ります。
あくまでも一つの意見としてお受け取りください。

猫さんで慢性腎臓病が多いのは周知のとおりです

 

特効薬というのはないのですが

 

4年前に「ラプロス」というお薬が出てきました

 

 

慢性腎臓病が徐々に悪化する一因に

 

尿細管間質(まあ上の図のネフロンだと思ってください)

 

が炎症→低酸素状態→線維化(元に戻らない)

 

→線維化すると他の残されたネフロンが頑張る

 

→頑張りすぎて炎症→低酸素→線維化

 

というどうしようもない状態に陥ります

 

 

そこでラプロスというお薬で上記図の1〜4にアクセスします

 

医学的にいうと

 

・ 毛細血管減少の抑制

・ 炎症による血管収縮の抑制

・ 血栓形成抑制

・ 抗炎症作用

・ 血流増加    

 

で尿細管間質の線維化に対抗します

 

発売時にこういうデータはあったわけです

 

 

当たり前ですが、6ヶ月での検討しかされてないんですよね

 

そこで4年使ってどうだったかという症例検討が

 

JBVP(この講義を配信している学会)の名誉会長から

 

発表された講義を聞いたわけです

 

前置きがちょー長くなりました

 

僕的な結論は

 

腎臓病はしっかりステージ分類してもらいましょう

 

ということにつきます

 

 

猫ちゃんが血液検査(しかも院内の)だけされて

 

慢性腎臓病と診断されて点滴されたり療法食使われたり薬出されたりしてたら

 

それ間違いですよ

 

1:Cre(院内でも可能だがわりとぶれる)

 

2:SDMA(血液検査の項目)

 

3:尿中にタンパクが出ているか(院内でもできるが正確にはやはり外注検査)

 

4:血圧(収縮期血圧)

 

ここまでが世界的に認められた診断基準です

 

これに画像検査が加わるとなおいいと思います

 

:::::::::::::::::

 

少しぶれました

 

結論としては

 

ラプロスは長期使用しても問題なく

 

従来の生存期間中央値をかなり伸ばすことのできる結果が発表されてました

 

気をつけたいのは

 

論文ベースではなく、発表なので

 

こういう言い方はあれですが恣意的に症例を選択できるわけです

 

それとIRIS2の症例と

 

IRIS3でも2に戻る症例が適応でやはりいい結果が出ていました

 

Creの値だけでラプロス始めるのはアウトでしょうね

 

筋肉量でだいぶ差が出てきますから

 

意外だったのは

 

ARB(タンパク尿を抑制するお薬)、ACEブロッカー(血管拡張薬)

 

ステロイド、チアマゾール(甲状腺機能亢進症のお薬)と併用されていても

 

そこまで問題ないとされていたことです

 

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ラプロスが非常に有効なお薬だということは確実です

 

慢性腎臓病の従来の生存期間中央値も引き伸ばされることでしょう

 

しかしながら、「適応」「不適応」が一番大事です

 

他のお薬を併用するのであれば尚更です

 

当院の院長はこういうのが得意で

 

最近は腎泌尿器学会の講義をずっと受けているので

 

よかったらご相談ください

 

(webやお電話では不可能です。診察のみです。)