成功者の条件~自分の潜在能力を最大限に発揮するために~②

 

 先に、ウェイトリーの言う“成功”とは、生まれ持った才能や潜在能力を生かし伸ばすことだと言いました。そして、松下幸之助もまた「“人間としての成功”とは、人それぞれが、自らに与えられた天分を十分に生かして生きることである。」と述べており、『人間としての成功』についてウェイトリーと同じ定義をしていることに驚きを禁じえません。一代でパナソニックという世界的企業を築き、莫大な資産を得て、功成り名を遂げたと言える松下幸之助の考える“人間としての成功”は、名誉や財産を得ることではなかったのです。

 

 この点について、松下幸之助は、次の様に述べています。曰く、「人はそれぞれ、異なった持ち味、天分をもって生まれついている。昔から十人十色と言われるように、顔かたち、性格、素質、才能など全く同じという人は一人もいない。ということは、人はみな夫々の天分に従って異なった仕事をし、異なった生き方をするように運命づけられているということではないか。つまり、人はみなそれぞれに異なった使命が与えられ、異なった才能が備わっている。私は、“成功”というのは、この自分に与えられた天分をそのまま完全に生かしきることではないかと思います。それが“人間としての正しい生き方”であり、自分も満足すると同時に働きの成果も高まって、周囲の人々をも喜ばすことになるのではないか。これこそ、真の意味での成功ではないかと考えるのです。もとより成功の姿は、人によってみな異なるでしょう。しかし、社会的な地位や名誉や財産が成功の基準となるのではなくて、自分に与えられた天分に沿うか沿わないか、これを十分に生かすか生かさないかということが成功の基準となってくると言えましょう。」

 

1)積極的な自己認識

 ウェイトリーは、まず第一に『積極的な自己認識』ということを挙げています。

 

 具体的には、まず自分をよく知ること、そして、自分に対して誠実であることが大切だと言います。そのために、『自分を自分自身の目で客観的に見る』ことが重要だとして次のような方法を提案します。目の部分だけくり抜いた紙袋を頭からかぶり、全裸で、全身を映し出す鏡の前に立ってみることだ。そして、自分の姿をじっくり眺める。鏡の中の自分に向かって、今日の出来事を語りかける。顔を隠すことによって、あなたは裸の他人になる。毎日繰り返していくと、鏡の中の自分を見慣れてきて、自分の欠点を客観的に見つめることができるようになる、というのです。

 

 松下幸之助も、同様に日々の自分の行いを振り返る“自己反省”や「自分から一旦外に出て、自分自身を客観的に眺め、評価する“自己観照”を大変重視し、実践しました。そして、それは容易ではないことを認識しつつも、『自分の周囲にある物、いる人』すべてに映し出されていると言います。「身なりは鏡で正せるにしても、心の歪みまで映し出しはしない。だから人はとかく、自分の考えや振る舞いの誤りが自覚しにくい。しかし、求める心、謙虚な心さえあれば、心の鏡が随処にある。自分の周囲にある物、いる人、これすべて、わが心の反映である。・・・この謙虚な心、素直な心があれば、人も物もみなわが心の鏡として、自分の考え、自分の振る舞いの正邪が、そこにありのままに映し出されてくるだろう。」

 

 次に、ウェイトリーは、『真実を求め、真実から目をそむけないこと』を挙げ、真実を歪曲して手に入れる“偽りの成功”ではなく、たとえそれが苦難の道でも真実に基づいた可能性を探っていくことが“輝かしい成功”につながるとします。また、どんな状況に置かれても、広い視野を持ち、バランスの取れた目で物事をあらゆる角度から柔軟に考えて、自分にできる最高のことを速やかにすることができるということを挙げます。

 

 この点、松下幸之助は、人は、自分の利害や感情などの“私心”にとらわれたとき、物事の実相が見えなくなるとし、“とらわれない素直な心”が何よりも大切だとします。曰く、「人間は、心にとらわれがあると、物事をありのままに見ることができない。たとえて言えば、色がついたり、ゆがんだレンズを通して、何かを見るようなものである。かりに、赤い色のレンズで見れば、白い紙でも目には赤くうつる。ゆがんだレンズを通せば、まっすぐな棒でも曲がって見えるだろう。そういうことでは、物事の実相、真実の姿を正しくとらえることができない。だから、とらわれた心で物事に当たったのでは判断をまちがえて、行動をあやまつことになりやすい。」(「実践経営哲学」p.161)そして、「素直な心になれば、物事の実相が見える。それにもとづいて、何をなすべきか、何をなさざるべきかということもわかってくる。なすべきを行い、なすべからざるを行わない真実の勇気もそこから湧いてくる。」(「実践経営哲学」p.112)というのです。

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