私たちは“仮想現実の世界”に生きている!

9)現代における仮想の世界⑰:規制緩和の実態⑦

 

 ということで、ここまで見ていただいたように、日本のグローバリズムのトリニティーの相当部分が、グローバル資本、あるいはグローバル投資家、あるいはアメリカ、あるいは日本のグローバル投資家たちの欲望によって進んでいるというのが、おわかりいただけると思います。

 

 それでは、日本政府はなぜ断らないのでしょう。特にアメリカのモンサントとかカーギルは、明らかに農協改革や種子法の廃止を要求してきていますが、日本の政治家が、断ればいいのです。ところが、それができない状況になっているのです。

 

 それは、『日本はアメリカの属国である』などと言われることがありますが、そのことと関係しています。私たちは、日本という国は、第二次世界大戦後1950年のサンフランシスコ講和条約によって、独立を果たしたと理解しています。形式的にはその通りなのですが、実は、同時に締結された日米安全保障条約及び日米地位協定に基づく日米同盟は、当時の冷戦期におけるソ連の封じ込めだけでなく、日本を封じ込める『瓶のフタ』として機能していたと言われています。(“二重の封じ込め”)即ち、日本が再び軍事大国化してアメリカの脅威とならないように、在日米軍基地を置いて、アメリカが支配する安全保障と経済の枠組みの中に封じ込めようとするものだったのです。当初はソ連との冷戦もあり、また、軍事面が重視される一方、むしろ日本を経済発展させて“反共の防波堤”にしようというアメリカの政策は、1991年にソ連の崩壊により冷戦が終結すると、今度は日本の経済大国化の封じ込めへと重点が移って行ったのです。それは、アメリカの核の傘の下で、軍事的に保護された日本は1980年代に大きく経済発展し、アメリカの対日貿易赤字が拡大していたからです。

 

 そのようなアメリカの政策の変更の現れは、1989年から90年にかけての日米構造協議(SII)や1993年からの包括経済協議などです。ここでは日本市場の開放に向けた構造改革や自由化、民営化、グローバル化が強く求められました。例えば、独占禁止法の運用を強化し、米国企業の参入を阻害しているとされた日本の“排他的商慣行”を排除することなど、日本側がほとんど一方的にアメリカの要請を呑まされることが多かったのです。

 

 安倍内閣の3本目の矢『成長戦略』の名の下に大変なスピードで進められている構造改革ですが、その内実は『日本企業の成長』というよりも、むしろアメリカなどの外国資本の要請を受けて、その日本への直接投資を増やすことを目指しているのです。例えば、TPP の交渉に参加するという交渉を行っていた時に、日本とアメリカの間で2 カ国間協議が行われ、そこで日本政府は、アメリカ政府との間で次のような合意を行っているのです。「TPP 交渉参加国との間で作成する文書」の「保険等の非関税措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の書簡」、「3. 規制改革。日本国政府は2020 年までに外国からの対内直接投資残高を少なくとも倍増させることを目指す、日本国政府の成長戦略に沿って」「外国からの直接投資を促進し、ならびに日本国の規制の枠組みの実効性および透明性を高めることを目的とし」

 

 実効性とか透明性という抽象表現を使っていますが、これは別に目的があって、それは日本国政府が「外国投資家その他利害関係者から意見および提言を求める」ということなのです。なぜ外国投資家なのでしょうか。「意見および提言は、その実現可能性に関する関係省庁からの回答とともに検討し、および可能な場合には行動をとるため」要は、閣議決定して国会で法律を変えるということです。「定期的に規制改革会議に付託する。日本国政府は規制改革会議の提言に従って必要な措置を執る。」農協改革も種子法の改正も、このプロセスで行われました。

 

 驚くべきことです。まるで日本国政府の上に規制改革会議があって、その上に外国投資家があるようです。これが今の日本なのです。既に民主主義は機能不全に陥ってしまいました。この書簡は現在まだ有効です。

 

 日本政府と私たち日本国民は、このような2008年のリーマンショックとそれに続く金融危機によって、既に世界が気づいて軌道修正しつつあるグローバル金融資本やグローバル企業による新自由主義にもとづくグローバリズムの問題に未だ気づかず、周回遅れで依然としてグローバル化や構造改革、自由化、民営化に邁進しているというのが、大変残念なことに今の日本の現状です。その意味でも、私たちは、グローバル化は良いことだという虚構の世界の中に住んでいると言わざるをえません。

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