私たちは“仮想現実の世界”に生きている!

9)現代における仮想の世界⑭:規制緩和の実態④

 

 ところが、そのような事実は見向きもしないで、『農協改革』が行われました。まずはデフレで需要不足、それに加えて輸入品の激増です。アメリカだけではなく、中国からの野菜の輸入なども激増しています。その結果、農家は儲からないので、人手不足が深刻化しました。そして、政府は農家の所得向上のため、即ち食糧生産能力を引き上げるため、あるいは生産性向上のためにお金を使うべきところですが、緊縮財政だからできないということになります。その代わりに、規制緩和、自由貿易だということで、農協改革が必要だということになるのです。具体的には、農協を解体して、全農を株式会社にし、金融部門も株式会社にして切り離して、準組合員は縮小するという話なるわけです。この目的は、別に日本国民のためでも日本の農家のためでもなく、米国の穀物メジャーカーギルが、例えば「全農を支配下に置きたい、金融部門を株式会社化して設けたい、準組合の共済の保険市場を取りたい、農協が今まで提供していたビジネスに参入して儲けたい。」ということなのです。基本的に『グローバリズムのトリニティー』というのは、だいたい“真の目的”というのは知らせないような形で進められるため、私たち一般国民には、本当のことがわからないうちにどんどん事が進んで行くこととなるのです。

 

 例えば、全農の株式会社化です。全農というのは、実は極めてグローバルな事業体で、アメリカに複数の子会社を所有し、毎年数百万と膨大な配合飼料や小麦、大豆などの穀物を輸入して、日本だけではなくて中国とか他の国々にも売っています。売り先が多いのは、その方が、仕入れる時の購買力が高まるからです。特にアメリカのメキシコ湾岸のニューオリンズに全農グレインという、単一の穀物エレベーターとしては世界最大の会社を保有しています。全農グレインはアメリカの穀物農家と契約して、IP ハンドル、これは遺伝子組み換えです、これは遺伝子組み換えではありませんというような管理をして、それで買って輸出しています。遺伝子組み換え穀物だけを売りたいカーギルのビジネスが全農グレインによって妨害されている。それで、この全農グレインが、カーギルにとって邪魔なんです。カーギルとしては、全農グレインを買収したいのですが、全農グレインの親会社の全農は、農業協同組合つまり農協が組合員の協同組合連合会で、株式を上場していないため買えないんです。そこで、全農の株式会社化ということを考えたわけです。日本の規制改革会議のメンバーが「全農もグローバルなビジネスが展開できるように、株式会社にするべきです」と言い出したのです。全農は既にグローバル事業体なんです。ところが、こういうような発言が報道機関でバーッと流れて、「そうだな。全農もグローバルに対応するために、株式会社にする必要があるよな」ということで、実際に2020 年以降は株式会社にできますよという形の農協改革が実施されました。                           

 

 もちろん、全農を株式会社化すると言っても、農協(農業協同組合法に基づく法人であり、事業内容等がこの法律によって制限・規定されている)をひっくり返さなくてはいけないから簡単ではないんですが、論理上できるようになってしまった。実際に全農を『株式会社』にして、『株式の譲渡制限』を外せば、その途端にカーギルが買うでしょう。ただ、カーギルとしては、全農を株式会社にするという道筋を作ったけれども、直ぐにはできないし、時間がかかる。それよりも、とにかく邪魔なのは全農グレインで、全農グレインが欲しい。全農ではないのです。そうなると、全農グレインを全農に売らせればいい、そのためには、全農の経営を悪化させればいいということになります。全農自体が猛烈な赤字の組合にしてしまえば、全農グレインを手放さざるを得なくなる、その時に買えばいいとなります。

 

 農家が使用する肥料の農協の割合がだいたい70%で、そのうちの全農のシェアが60%だから、42%ぐらいの肥料が全農から農家に提供されています。また、農家の使用する農薬については60%が農協で、農協のうちの40%が全農だから、24%ぐらい全農のシェアがあります。この点について、「全農は、農協や農家に対して独占的な立場を利用している」のが問題だと言われたんです。「全農は、生産資材を高く農協や農家に売りつけている」「全農の消費者機能、要は、配合飼料とか農薬を仕入れて農家や農協に販売する事業を禁止するべきだ」と言い出したのです。

 

 しかしながら、そもそも全農のシェアは、先に見た通り、肥料で42%、農薬で24%ほどで、全く独占事業体などではありません。独占状態でもないのに高く売ることは、農家がより安い他社から買うこととなるだけの話であって、それ自体問題にはなりえません。全農は高く売るということを問題視されて、消費者機能を廃止すべきだとされたのです。ただ、最終的には、これは通りませんでした。

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