私たちは“仮想現実の世界”に生きている!

9)現代における仮想の世界⑬:規制緩和の実態③

 

 さらに、農協はさまざまなサービスを農家に対して提供しており、そのサービスへの参入を狙って農協そのものをつぶそうとします。農協は、これまで農林中金やJA 共済が黒字で、それらがあるから、農協全体ではその経済事業が赤字でも何とかやってこれているという仕組みになっていました。そこで、「農林中金とJA 共済は、これを切り離してそれぞれ株式会社にしてしまえ」と言い出します。すると、そこに投資した人はぼろ儲けする一方、農林中金やJA 共済の黒字がなくなって、農協はつぶれます。そこに、これまで農協が提供していたサービスに外資が新規参入していくというわけです。

 

 我が国は今、穀物自給率、食糧自給率が悲惨な状況になっています。2013 年の穀物自給率で言えば、日本は28%です。つまり、外国からの輸入が止まると、日本の穀物の7 割以上は供給されなくなるわけです。もちろん米は100%ですが、小麦とか大豆とかは来なくなる。醤油も味噌もパンも作れなくなるのです。これは、“食糧安全保障”という観点からみれば大きな問題だといわなければなりません。

 

 日本の農業のGDP、つまり農業の需要は、94 年は8 兆円ぐらいだったのが、今5 兆円前後で”拡大しておらず、横ばいです。つまり、今農業はデフレギャップで『需要が足りない』、ところが他方で穀物自給率は3 割を切っている、つまり『供給力不足』に見えているのです。ここに“歪み”があるのです。

 

 本来、穀物に対する需要はもっとあるのですが、小麦も大豆も「自由化」してしまうと、外国の、特にアメリカの小麦や大豆に日本の農家は勝てないから、みすみす市場を奪われて、穀物自給率が3 割切って供給力不足に見えている、ところが、農業全体では需要不足という、歪んだ状況になっているわけです。本来、日本の政府が国民のことと農家のことを考えるならば、諸外国がそうしているように、外国からの農産物の輸入は規制しなくてはなりません。せめて穀物だけでも。穀物自給率を100%満たすまでは、外国から穀物を入れないとすべきなのです。(WTO 違反の問題が生じますが、安全保障上の問題など理由をつけることが可能です。)外国からの穀物の輸入を禁止したら、総需要は拡大します。外国に頼っていた分を日本の農家が生産しなくてはいけなくなってしまう、つまり需要が拡大することになるのです。さらには、政府自ら、この農業の需要不足を埋める。外国からの輸入品を止めて、今、日本中に休耕地、耕作をやめてしまった耕作放棄地が多いから、そこで全部生産をさせる、余ったモノは全部政府が買い取って、援助で外国にあげる。それで、このデフレギャップを埋める。それで、農業や農家の生産能力が拡大していくから、日本の食糧安全保障は強化されます。そのために政府は農家にお金を使うべきなのです。

 

 ここで、「いや、日本の農家は保護されている」という反論がありますが、それは誤りです。実際、各国の農家の所得に占める補助金の割合を見ると、日本は、2013 年の数字で3 割ですが、アメリカ35.2%、スイスは100%を超えています。フランス94.7%、ドイツ69.7%、イギリス90.5%、他の国は政府がお金を使って、農業を保護しているのです。そうしないと食糧安全保障が問題になるとわかっているからです。

 

 アメリカは、補助金で見ると意外と低いように見えますが、農業の産出額(GDP) に占める農業予算の割合を見ると、日本は38.2%で主要国最低であるのに対して、アメリカは75.4%で、逆にトップです。実は、アメリカはGDP の7 割以上の予算を使ってWTO で禁止されている“輸出補助金”を、いろいろな理由をつけては出しているのです。“輸出品”にだけ補助金をつけるとWTO 違反になってしまうので、アメリカ国内の農家すべてに対して、生産価格を保証するという“大義名分”を立てて、予算を十分に使っており、その結果、アメリカの農家はダンピングして輸出しており、それ故国際競争力があるのです。それを日本が買って日本の農家がつぶれたということです。

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